突然決まった解散・総選挙。果たして、安倍首相を中心とした与党・自民党が引き続き大勝することができるのか。それとも、元気のない野党に反撃の目はあるのかーー。識者の方々に、各党の議席数を予想してもらった。

まずは約40年にわたり永田町の政治家を取材し続けてきたベテラン政治評論家の浅川博忠氏。意外にも、自民党は議席数を減らすと予想する。

「自民は前回勝ちすぎました。小選挙区は揺り戻しが起きやすい制度。前回の294議席から1割ほど減らすとみています。262議席前後でしょうか。安倍は勝敗ラインが自公で過半数などと言っていたが、250議席を割り込めば責任問題に発展するのは必至です。北海道、愛知、東京、沖縄で波乱が起これば12議席程度はすぐに変わる。

対する野党ですが、民主は倍増する勢いです。現有の54議席から105議席くらいまであり得ます。うまくいかなければ85議席前後で止まるかもしれません。維新は横ばいの42議席前後。共産は比例票を伸ばして2議席程度増やし10議席に。生活は小沢ひとりになる可能性も。次世代は平沼、園田が小選挙区で勝ち、石原が比例で。藤井ともうひとりくらいが比例復活で合計5議席くらいでしょうか」

テレビ朝日コメンテーターで報道番組ディレクターなどを歴任した川村晃司氏は、「自民有利」の情勢は変わらないものの決して楽観視できるわけではないと語る。

「自民が279議席。公明は31議席。民主が93議席で維新は35議席程度。次世代は8~9議席くらいで、共産は13議席。生活が4~5議席。社民は2~3議席と予想します。

着目すべきは、前回の選挙で大勝利した安倍自民が、実はそれほど支持されていないという点です。民主が大勝利した2009年の選挙で自民が119議席に終わったときでも自民の比例票は1880万票あった。しかし295議席獲得した2012年の選挙では1660万票だったのです。小選挙区制特有の現象で勝利しただけなんですね。

だから野党が協力すれば大チャンスなのですが、野党同士がガチンコ勝負する選挙区が多いし、候補者の擁立さえできていない野党空白区(共産党以外)も約50もある。

自民党は1年生議員が119人もいて、通常なら、このうち半分が落選してもおかしくない状況だが、空白区が50もあったのでは25人前後の落選で済んでしまう。野党はみすみす安倍自民に勝てる機会を逃しているのです」

安倍長期政権化と二大政党制の終焉?

そして、元農林水産大臣で故・松岡利勝氏の秘書を16年間務めた池田和隆氏。選挙の表と裏を知り尽くしたプロ中のプロは、安倍自民の“強気”をある選挙区の動静からこう読み取る。

「私が注目するのは、安倍首相が衆院解散後に初めて地方遊説で入った場所が岩手1区だったことです。自民は負けそうな選挙区に決して総理総裁を投入しません。

この選挙区の前回の得票結果を見てみると、民主の階猛(ひしなたけし)が5万5909票であったのに対し、自民の高橋比奈子が4万4002票でした。実に2割もの差があった。この差が埋まっているとの確信があったからこそ、自民は安倍を岩手入りさせたはずです。

確信の根拠は、NHKによる情勢調査を提供してもらったものだと思います。NHKの調査結果は非常に正確です。ということは、岩手に限らず全国各地でも自民が思ったよりも負けないのではないかと感じます。自民が280議席前後。野党は、民主と維新が微増か横ばい。共産は多少伸ばすでしょう。生活は減らし、次世代や社民はさほど変わらない感じでしょうか」

また池田氏は、今回の総選挙の結果が「安倍人気」によるものではなく「野党の不人気」に大きく左右されると指摘。

「今回の総選挙は、安倍長期政権化と二大政党制の終焉(しゅうえん)を意味しています。もし野党が結集していれば自民を倒せたでしょう。しかし、本当の意味で野党勢力を結集しようと行動したのは小沢一郎だけだった。民主政権を実現させてくれた小沢を追い出し、多少の政策の違いや好き嫌いなどで小沢を排除した時点で、日本における二大政党制の終わりが始まっていたのです。

その後、橋下維新が失速し、今回の総選挙でも野党間で十分な選挙協力ができなかった。選挙の結果、自民は議席を減らしながらも勝つでしょう。しかし、それは自民への信任ではなく、自滅した野党への不信なのです」

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(取材/菅沼 慶)

■週刊プレイボーイ50号「おもしろ選挙区33徹底解説」より