間もなく小売業界はボーナス商戦、そして年末商戦という一年の書き入れ時を迎えるが、この冬の傾向はいかに? 業界の「中の人」たちに、洗いざらい語ってもらった!

【出席者】●A……大手家電量販店販売部門部長最近、業界最大手のチェーンからライバル社へヘッドハントされた辣腕部長

●B…大手家電メーカー開発部門主任予算の縮小と社内政治に悩みながらも、会社のために頑張るマジメな理系開発者

●C…大阪・日本橋の家電現金卸問屋専務家電業界の表も裏も知る生き字引的存在。メーカーも量販店も頭が上がらない

■“実弾”をめぐる奪い合いがすでに発生!?

―目前に迫った商戦は、かつてない盛り上がりになりそうと聞きました。まずは業界最大手の家電量販店からライバル量販店にヘッドハンティングされたA部長…ここまで紹介すると、業界的には正体がバレちゃう気もしますが。

 構いませんよ。ケンカする気がなけりゃ、ライバル社に移籍しません(笑)。会社より顧客が大切。顧客を大事にする会社に移りたいと思うのは当然です。

―ガチすぎるコメント、ありがとうございます。なぜ、この年末商戦は盛り上がりそうなんでしょう。

 世界的なエボラ出血熱パニックで、年末年始の海外旅行が減りそうとの観測があります。さらに、ここにきて消費増税の延期が決定。年末年始の休みを国内で過ごす皆さんの消費意欲が、どうやら高まりそうだとの期待があります。

―注目ジャンルは?

 やはり季節家電。特に、これまでは基本性能だけを求められていたベーシックモデルに、デザインや便利機能などがプラスされた製品が大量投入されます。中小のジェネリック家電メーカーが「増税前の需要に乗り遅れるな!」と頑張った結果です。見慣れないメーカーでも、バイヤーはしっかり性能を見極めて仕入れていますので、安心して買っていただきたい!

―なるほど。大手家電メーカー開発部門のBさん、メーカーサイドとしては、実際どの方向を目指しているんでしょう?

 確かに、今ある製品にプラスワンというのが主流。景気的にも、大型の新製品開発に全力を注げるほど安定した状況ではありません。注目ジャンルは調理家電。この分野はサイフのヒモを握る奥さま方を引きつけやすいので、新製品ラッシュは当分続くと思います。ウチも過去のヒット製品を進化させた○○付きの△△△を準備中です。

メーカーが目指す方向は?

―不用意な発言、ありがとうございます(苦笑)。Bさんがクビになってしまうので自主規制します。続いて、大阪・日本橋(にっぽんばし)から家電現金卸問屋(おろしどんや)専務のCさん、この冬の商戦はいかがでしょう?

 今年は久々に動きそう…というより、もう動いてるで。某大手家電量販店の仕入れ部長も直接、大阪まで来よったな。チラシ用のド派手な“実弾”がないと出遅れるから、品数確保に必死や。あいつらアホやから、先にチラシ作ってから慌てて商品を集め出す。

しかもライバル社のチラシ情報を見ると、急に価格や商品を差し替えるから、どうしても準備が後手になるんや。チラシ見て朝イチで量販店に並んだのに商品がもうなかったとかいうのは、たいていこのパターンで品数をそろえられなかったからやな。

―目玉になるようなチラシ用商品って、例えば?

 今年なら、某社の32型液晶テレビ。特定の製造ロットに不良が多発して全品回収したリファービッシュ品(メーカーによる再生品)や。ウチはクズ値で丸ごと引き取ったから激安で卸せる。量販店の売り場では、1万9800円…いや、1万8500円あたりが攻防ラインになるやろ。

―た、楽しみです! ほかにはどうでしょう?

 調理家電も不人気品がぎょうさんダブついとる。値段さえ落とせば瞬時に売れるんやけど、メーカーは自社でそれができんからウチ経由でやることになるわけやな。例えば、某社のホームベーカリーとか。

 あぁぁ、それウチの製品です。それを言われるとツラいなぁ……。

―Bさん、再び不用意な発言ありがとうございます。本誌発売後、社内で袋だたきにされないことを心からお祈りいたしております(苦笑)。

 さあ、間もなく商戦! 戦いだ、戦争だっ!!

―お、落ち着いてください。とにかくメーカー、販売店、卸問屋、どの視点から見ても面白くなりそうな今年の年末商戦。お買い得商品をお見逃しなく!

(取材・文・撮影/近兼拓史)

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