「この1年、死んでも悔いのない生き方しようって。口先だけじゃなく、本気で思ってるんでだよ、ハシ(橋本)ならわかると思うけどさ」

本誌インタビューで自らの就任に「ファンにお詫びしたいくらい」と心情を吐露したデーブ大久保・楽天新監督。(http://wpb.shueisha.co.jp/2014/12/08/40288/)。

秋季キャンプでも、とかく練習法から話題になって注目の的だが「俺がやると波風たつじゃない?」と、その騒動っぷりは本人が一番自覚していた? 

だが、「どんだけ非難を浴びても、恩返しのために命と体だけはいくらでも張れる」との覚悟を、かつての同僚である野球評論家・橋本清氏に激白。その思いの丈を晒(さら)して本音を語った第2回!

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■号泣した日々を思えば、覚悟して楽しむだけ

橋本 でもデーブは昔から怒るにしても相手の性格見て接し方変えたりしてましたよ。俺にオラーってきても、石毛(博史)とか木田(優夫)さんにはしないとか。

デーブ あそこらへんはシュンとなるからな。

橋本 よく見てるなというか。だから教えられたこと多いし。解説者のときの話でも僕が最初の頃、暑い日に油断してグラウンドでネクタイ外してたら、いきなり怒られて。「バカ野郎、どんだけ安くても着けとけ、失礼だろ」って。で、その後に「俺は取材終わったからこのネクタイやるわ」と。

デーブ あった、あった。クールビズない頃だもん(笑)。

橋本 そういうとこきちっとしてるし。人にできないことを勉強してたりするんやなと。驚いたのが、ラジオの解説をひととおり聴いて、掛布(雅之)さんの癖はこう、江川(卓)さん、水野(雄仁)さんのしゃべりはこうって自分でテープ起こしして研究してたでしょ。

デーブ あれは大変だった。けどさ、それで自分がこの人たちと何か違うことやらなきゃ仕事にならないだろって。例えば、みんな結論を言わないなと。なら「これは抑えます!」「ここはフォーク!」とか先にはっきり言うようにしようとか。

橋本 だから今度のキャンプの練習でも僕は納得できるんですよ。マニュアルどおりじゃなく斬新というか。ただ、そこにはデータや研究もあるんやろなと。

奇をてらった?練習には意味がある

デーブ 例えば、8人でやらせるとかファームではずっとやってたのよ。いつも人数足りないとこで紅白戦やったりしてるから。そこでカバーリングとか違った経験で学べるわけ。

選手に順番つけるのも、逆につけなきゃおかしいでしょ? 自分がポジション争ってるなかで何番目にいるのかわかんないほうが不安なんだから。それは伝えて、あとは会話して納得させて。

休日に朝起きて倉敷のゴミ拾いやったのだって、すぐパフォーマンスだとか目立ちたがってとかなるけど、それも練習日と同じ朝から起きて、交感神経働かせて動いたほうが一日寝てるよりいいからって。選手にも相談して社会奉仕にしたんだし。

橋本 ほんま、すぐ奇をてらってみたいに取られるけど。

デーブ まぁ実際それで選手が一番よくやってくれてるよね。現役時代の俺なら一番ブーブー言ってるもん。なんでそれやらなきゃいけないの?って。

ただ、自分がそうだったから「いいからやれ!」「はい!」しかない昔と同じことはやっちゃいけないと。しっかり会話するし、選手たちに感謝の言葉も伝えますよ。

橋本 まぁご時世もありますが、われわれの頃とは時代もね。

デーブ 自分もマジメじゃなかったしさ、いろいろヤンチャもあったけど、時代が変わってるわけで。監督が殴れば重大な過失になってくるし、それやって自分の手も心も痛いんだけど、今は口でちゃんと伝えなきゃってのがやっぱり正しいわけよ。

だから、最近はカッとなっても第三者的に分別して、一回自分で客観的に「ダメよ、ダメダメ」って言ってみるようにしてるの。ハシもやるといいよ。

橋本 昔も座右の銘に“我慢”とか書いてましたけどね。どこがやねん!みたいな(笑)。でもいろいろ苦労されて……。

思わず泣けた暑い夏の日々

 

バッテリーを組み、引退後に野球解説者の先輩としてもデーブさんに学んだという橋本氏

デーブ やっぱり辞めたとき、犯罪者扱いされて、どうやって食ってくの?ってとこから、子供たちのベースボールアカデミーやるためにあちこちから金借りて、チラシを1万枚くらい街歩いて自分たちでポストに配ってさ。

真夏でスゴい暑いんだけど、子供の自転車が輝いて見えたり、そこで食ったかき氷が忘れらんないくらいうまかったり。で、夜中の最終前の駅でなぜか泣けてきて号泣したりね。

絶対、精一杯悔いのないよう生きてやるって。失敗しても繰り返さなきゃいいことだし。

橋本 その極地に追い込まれて、また強さを出すメンタリティがスゴいなと。

デーブ でも帽子かぶってランニングしながらチラシ配って、いつ普通に顔出して走れるんだ? 見とけよ、絶対に負けねぇぞ!とかさ。そんときに聴いてた韓流ドラマのサントラで泣けて、今でもカラオケ行ったら思い出して号泣するわ(笑)。

橋本 それ前に聞いて、同じドラマ見ました(笑)。しかし、そんだけのことがあって逆にまた、よくこの雑音やバッシングのなか、引き受けたなと。

デーブ ネガティプキャンペーンあったよね。でもさ、覚悟決めて受けたんだし、まずは今を楽しめなきゃ10年後も楽しめないしってね。逆に、俺ってすげぇな、悪口でも騒いでくれるってことは人気あんの?って思って(笑)。あとは、野球を全力でやる、ミーティングやるのも酒飲むのも全力で出し惜しみしない、それだけですよ。

●この続きは、明日配信予定!

(撮影/五十嵐和博)

●大久保 博元(おおくぼ・ひろもと)1967年生まれ、茨城県出身。水戸商業から84年にドラフト1位で西武入団。92年、巨人に移籍、ケガにより95年に引退。解説者、タレントとして活躍後、08年に打撃コーチとして西武復帰。12 年より楽天で打撃コーチ、二軍監督

●橋本 清(はしもと・きよし)1969年生まれ、大阪府出身。PL学園時に甲子園優勝。87年、ドラフト1位で巨人に入団。セットアッパーとして活躍するもホークス移籍後にケガで引退。現在、評論などで活躍