80年代パ・リーグ。それは百鬼夜行の天外魔境。現代では考えられない反科学的かつ超人的な苦行に耐え抜き、走・攻・守すべてはそろわずとも、他を圧倒する一芸を習得すべく、命をかけて修練を積んできた彼らこそ、この時代のグラウンドの華。

還暦を過ぎても140キロ近い球を投げる村田兆治に三冠王の落合博満、樽体形に鉄砲玉、乱闘、後ろ髪、一匹狼などなど…。現在の野球界では「絶滅危惧種」となった“キャラが濃すぎる鬼”だけでベストナインを本誌が選定してみた!

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■ファースト「川崎特殊神主打法」ロッテ 落合博満鬼神がごときバットコントロールで史上最多の三冠王を3回獲得した打撃の鬼。神主打法と呼ばれる修祓を操り選手・監督で球界に君臨。たびたび予言めいたことを言う現中日GM

■セカンド 「阪急組の鉄砲玉」阪急 岩本好広 “乱闘要員”“鉄砲玉”とあだ名される乱闘の鬼。味方が当てられたら、誰よりも早くベンチを飛び出し戦場を制圧する一番槍。引退後は大治町町長に当選するも飲酒運転で辞任

■ショート 「後ろ髪なびかせ隊」ロッテ 水上善雄パンチ全盛の球界にあって、個性を主張した後ろ髪の鬼。周囲の諫言も聞かず颯爽と髪をなびかせショートを守る姿は川崎名物に。引退後、日ハム二軍監督となり中田翔を指導

■サード 「反骨の一匹狼」阪急 松永浩美史上最強のスイッチヒッターと呼ばれる一匹狼。練習生として阪急に入団した経緯もあり、ほかの選手とは群れずひとり牙を磨いた。阪神に移籍した際の背番号が02(鬼)

鬼の中の鬼から、鬼を統べる鬼まで!

■レフト 「狂気のフルスイング」南海 門田博光アキレス腱を断裂で守備走塁が落ちる分、打撃でカバーするために鉄球を打ち返すなどの狂気的な練習に身を置いたフルスイングの鬼。40歳で44本塁打を放ち本塁打王を獲得

■センター「世界を駆ける大阪のおっさん」阪急 福本豊世界記録も樹立した盗塁の鬼。投手のクセを盗む目、走塁技術にスピードを備えつつ、208本塁打を放つ長打力も。世界に誇るレジェンドでありながら気取らない大阪のオッサン(前回お送りした『名言・珍言』特集参照 http://stg.wpb.cloudlook.jp/2014/12/21/37103/

■ライト 野球界のキングカズ」南海 山本和範難聴やクビに負けず土壇場で数々の奇跡を起こす鬼。ドラキュラ似から“ドラ”というあだ名が定着も「子供がいじめられる」との理由でJリーグブームの最中に「カズ山本」を襲名

■キャッチャー「130㎏のベビーフェイス」南海 香川伸行プロ入り以来100㎏を切ったことがない食欲の鬼。タニマチからの毎晩の誘いを断れず見る見る巨大化。130㎏を超えると日ハムに商品としてトレードされろとヤジが飛んだ(本年急死、直前のラストインタビューはこちら http://stg.wpb.cloudlook.jp/2014/09/28/36440/

■ピッチャー 「昭和生まれの明治男」ロッテ 村田兆治マサカリ投法から繰り出すノーサインの剛速球とフォークボールで殺した袴田は数知れず。美学の先発完投が叶わぬとあっさり引退するも、64歳の今も132キロを投げる鬼の中の鬼

■監督 「玄米志向の肉食獣」西武 広岡達朗鬼を統(す)べるは鬼監督。巨人を追放され復讐の鬼と化した名将。玄米食推進など徹底した管理野球で黄金時代の礎を築くも、自身は痛風に。ケンカで辞めるクセあり。やはり本来は肉食か

いや、監督は大沢親分!、代打の高井も…など異論反論百出のはずだが、年末年始の宴会シーズンに上司や旧友、親戚のおっさんらと大いに盛り上がってみては?

(取材・文/パシフィック・リーグ1980研究会)