流行語を見れば時代がわかる! では、海外では今年どんな言葉が注目されていたのか? その背景は? 実はハーバード大卒のお笑い芸人、パックンと一緒に世界の一年を振り返ってみた!

■世界の流行語は社会問題が背景にある

「集団的自衛権」「ダメよ~ダメダメ」が新語・流行語大賞を受賞した2014年の日本だが、世界ではこの一年にどんな言葉が流行っていたのか?

イギリスのオックスフォード大学出版局・辞典部門が選んだ“今年の言葉”は“vape(ヴェープ)”だった…でも、ヴェープってどういう意味?

ハーバード大学出身のお笑い芸人、パックンに今年の世界の流行語の意味や背景について聞いてみた。

「“vape”は“電子タバコを吸う”という意味です。欧米では電子タバコが流行っていて、『ちょっとヴェープしない?』みたいな感じで使われています。

タバコを吸うことは「Smoke Tobacco」というけど、電子タバコは“煙”じゃなくて“蒸気”が出るので、smoke(煙)という言葉は適さない。そこで“vapour(蒸気)”や“vaporize(蒸発する)”という言葉を略して、vapeと言っているんです。

ちなみに、vapeは“マリフアナを吸う”という意味としても使われています。アメリカではワシントン州とコロラド州で嗜好(しこう)用マリフアナの使用が合法化されました。そこで、マリフアナのイメージを改善するためにネガティブなイメージのついていないvapeという言葉を使い始めたんです。

同じように、マリフアナを示す『pot(ポット)』も『cannabis(カナビス)』という医学用語を使うようになりました。マリフアナの合法化と同時に洗練された品のいい言葉が使われ始めているんです」

社会運動にオンライン署名するだけの人は?

欧米圏では大賞は逃したものの、ノミネートされていた他の言葉はどうだろう。まずは“budtender(バッドテンダー)”

「これはマリフアナ調剤師という意味。“bud(芽)”はマリフアナのことで、カクテルを作るバーテンダーにかけています。これもマリフアナの合法化に伴って一般的になった職業です」

では“normcore(ノームコア)”は?

「ごくふつーの服、おじいちゃんが着ているような服をあえて着るという意味です。2年前にマックルモアーというラッパーが『スリフトショップ』という曲を出したんですが、サビで『僕はキミのおじいちゃんの服を着るよ』と楽しそうに歌っている。おじいちゃんやおじさんが着ているようなダサい服をカッコいい服、センスがいい服としてわざと着ることが流行っているんです。

ちなみに、スリフトショップとは、みんなが捨てるような服をもらって安く売って、その売り上げをホームレスの炊き出しなどのお金に充てるボランティア的なお店のことですね」

“slacktivism(スラクティビズム)”

「activism(社会運動)に対してできた言葉です。slackは“なまける”“動かない”という意味で“社会運動に参加している気分になっている”ことを表しています。例えば、社会運動にオンライン署名するだけの人。本当に問題を解決したいのなら、デモに参加するなど行動を起こさなければいけないのに、署名するだけで逃げてしまっているわけです。そういう人はスラッカーとして批判されることもあります」

“bae(ベイ)”

「これは恋人を指す言葉。『baby(ベイビー・恋人)』が『babe』になって『bae』と短くなった。ラッパーたちがよく使います。あと、彼氏を指す言葉を“boo(ブー)”といいます。beau(彼氏)やboyfriend(ボーイフレンド)の略ですね」

韓国では女性芸人の“アンデヨ~(ダメよ~)”

“indyref(インディレフ)”

「independence(独立)referendum(国民投票)の略です。スコットランド独立の国民投票があったために多く使われました」

“contactless(コンタクトレス)”

「非接触という意味で、日本の『Suica』のようにICチップ入りのカードなどをかざすことで料金の支払いができること。ガソリンスタンドやマックやサブウェイなどのファストフード店などで使えます。日本よりだいぶ遅いんですが、欧米もやっとこうした技術が普及してきました」

ちなみに、アメリカの言語研究所『グローバル・ランゲージモニター』は“エボラ出血熱”“Hands up’Don’t Shoot(手を上げている、撃つな)”などを流行語として選んでいる。

“手を上げている、撃つな”は、米ミズーリ州で白人警官が黒人少年を射殺したことに抗議するデモのスローガンとして使われている言葉だ。

また、オーストリアの新聞『ザルツブルガー・ナハリヒテン』では、“Selfie(自撮り)”“Snappen(スナップチャットを使うこと)”などがノミネートされている。スナップチャットは、送信した画像を相手が見ると10秒以内に消えてしまうスマホアプリ。

ところで、お隣の韓国では女性芸人の言う“アンデヨ~(ダメよ~)”というセリフが流行っているらしいが、偶然か!?

そこで、世界に負けじと週プレも“エロワード大賞”をつくってみた。ノミネート作は“いやらして(おのののか)”〝神の乳(安齋らら)”“ちなは、えっちな女のコ(松岡ちな)”“アラサー処女”“童貞コン”“「童貞狩り」女子”“パイチン”“他人棒”“孫バレ”“お尻くらまんじゅう”の10作品。週プレNEWSで検索すると、今年の社会風俗が丸わかり!

どうだ、世界よ、日本は平和だ(…と思いたい)。

(取材/村上隆保)

●パックン(パックン)米ハーバード大学比較宗教学部卒業。毎月第1水曜日の22時から、英語で日本のことを伝える『パックンマックンの日本案内所』をニコ生で配信中