1・4東京ドームではケニー・オメガにIWGPジュニア王座を奪われたが、2月11日の大阪大会でリマッチに挑む田口選手

昨年、長期欠場から復帰を果たし新日ジュニアの要として活躍している“ファンキー・ウェポン”田口隆祐。彼の戦場はリングだけではない…四角い将棋盤の上で、自らを将棋の駒になぞらえると!?

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将棋は子供の頃からやってます。小学校低学年の頃に何もわからないまま親父の相手をさせられたのが最初で、その後、小6のときに地元(宮城県)岩沼市の新春将棋大会の小学生の部で優勝したんですよ。勝ったら嬉しくなって、それからドップリはまりましたね。中学では全国大会にも出場しました。

大学に入ってからは中断してたんですが、レスラーになってメキシコにいる間にまた始めました。海外遠征中は練習に行って宿に帰ると意外とやることがないんですよ。でも、宿ではインターネットができたので、そこで対局を始めて再燃しました。今は日本将棋連盟公認の「将棋ウォーズ」というスマホのアプリを利用して楽しんでます。

「将棋ウォーズ」にログインして自分のデータを入れると、同じくらいの実力の対戦相手を紹介してくれるんです。スマホだったら巡業中でもできるので、オフの時間も知らない人と対局をしたり。ケガをして入院してたとき、お見舞いに来てくれた人たちが「退屈で大変でしょう?」って心配してくれたんですけど、いやいや、将棋で忙しかったですよ(笑)。

憧れの棋士は永世名人の資格を持つ谷川浩司さん。僕がテレビで将棋を観始めたときは、羽生(善治)・谷川時代の真っ最中でした。谷川さんの対局中のたたずまいに憧れましたね。背筋がピンとしていてカッコいいんです!

今の僕の実力はアマチュア将棋の6段くらいですかね。将棋連盟に申請すると6段がもらえるはずですが、その申請料が26万円もかかるんですよ…。まだ申請してなくて、手にしている免状はアマ4段です。

そして、自分を将棋の駒にたとえると?

将棋の面白さは、やっぱり手の読み合いだと思います。相手の手を読み、考える。名人クラスになると数千手、数万手先まで読んでいるそうで、そこまでいくと訳がわからない! いざ実戦となると本を読んで勉強した通りには進みません。その辺はプロレスにも繋がる気がします。プロレスも道場でみっちり練習した基礎があってこそいろんなパフォーマンスが可能になるけど、リングの上では何が起こるかわかりませんから。

僕の得意な戦法は、専門的な話になりますが、「四間穴熊(しけんあなぐま)」というものです。これは「王」を「香車」の下に潜らせて「銀」や「金」で固めて“冬眠”させます。こうして防御を固くした分、相手を派手に攻めていっても王様は大丈夫という戦法なんです。

将棋の駒を新日本プロレスになぞらえると…まず、チャンピオンはもちろん「王将」ですよね。闘いの始まりは「歩」がぶつかり合いますから、ここは若手の仕事。「歩」は前にしか進めません。

「桂馬」は動きに特徴があって、目の前に他の駒があっても唯一飛び越えて前に行けますから注目株や伸び盛りの選手のことかな。「飛車角」はスター選手、大会で言えばセミファイナルの感じですかね。そして「王将」はデンと詰めて控えています。「金」「銀」などのしっかり者が、その脇を固めているわけです。

僕自身は、駒の中では独特な動きができる「桂馬」になりたい。「将棋の強い人は桂馬の使い方が巧い」とよく言われます。つまり、闘いの中での重要度が高い。

隙あらば王も取れる力を持っているけど、「桂馬の高飛び歩の餌食」という言葉があるくらいで、反対に歩に取られる可能性もあるという、長所も短所もある働き者なんですね(笑)。プロレスの世界でも、僕はそんな風に注目を集めるレスラーでありたいですね。

新日マットの「桂馬」となって、「王」の奪還を果たせるか?

■田口隆祐(たぐち・りゅうすけ)1979年生まれ、宮城県出身。IWGPジュニア、同タッグ王座を獲得した新日ジュニアの要。2012年には『ベスト・ザ・オブ・スーパー・ジュニア』優勝を果たした

(取材・文/長谷川博一 撮影/平工幸雄)

■『燃えろ!新日本プロレス』vol.59(2014年1月16日号)に掲載http://weekly.shueisha.co.jp/moero/main.html

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