今年も自動車業界の主力として活躍が期待される軽。その行方を占う初売り商戦はどうだったのか? 年々、熱くなる一方の初売り商戦だが、年末に各社とも新型車を投入、鼻息は荒い。

お正月の各販売店を足で回った自動車ジャーナリストの遠藤徹(とおる)氏に教えてもらった。

「ダイハツは売れ筋のムーヴ発売直後とあって年初から活発ですね。ウェイクも試乗会を通して販売促進を図っています。

首都圏の正規店だと、1月いっぱいの年始セールとして5.4万円のオプション部品サービス、またサービスパック(車検や定期点検の割引パック商品)利用者は1.5万円程度の値引きをしているようです。車両本体の値引きは3万円程度ですが、下取り車があれば、こちらの買い取り額の上乗せが約5万円期待できそうです。

さらに、新型ムーヴに試乗してアンケートに答えると、抽選でアウトドア用品、高圧洗浄機、エアリーシェイプスタイルフィット、ライトエアーイオンフロー…など豪華景品のプレゼントもあります。

対するスズキも、新型アルトで増販攻勢をかけている印象です。実際にはダイハツ以上に活気づいている印象で、私が訪れた販売店では商談用テーブルが満杯。奥の喫茶室に通されて、営業マンが空くまで20分ほど待たされました。営業マンは全員がユニフォームの赤いハンテンを身にまとって、大きな声で“いらっしゃいませ”と対応していました。

首都圏では、アルトの場合は3月末までに購入契約すると5.3万円の付属品サービス、車両本体価格の値引きは2万円、下取り車があれば5万円程度の買い取り額上乗せ…という感じです。

ホンダのN-BOXスラッシュはまだ本格的に周知徹底されていない状況で、ユーザーの動きは鈍い印象ですね。とある営業マンは、“メーカーのホンダは3月末までに全国で2万台の受注確保を目指しているようだが、達成は難しいかもしれない”とちょっと冷めていました。

スラッシュも登録台数ランキングではN-BOXシリーズにカウントされますから、ホンダはスラッシュを使って、N-BOXをタントやワゴンRを抜く軽トップブランドに復帰させようとしていますが難しいかもしれないですね。

そのせいか、ホンダはスラッシュだけでなくNシリーズ全体の増販に力を入れていて、スラッシュは本体、オプション、付属品値引きを合わせて7万円程度が目安ですが、N-BOXを成約すると3.3万円分の購入クーポンプレゼント、さらにN-BOXとNワゴンを成約すると12万円強相当のナビプレゼントを実施しています」(遠藤氏)

勝ち組といえる買いは?

遠藤氏によれば、昨年末発売のニューモデルに加えて、今はスズキ・ハスラー、ダイハツ・タント、三菱eKワゴンあたりも狙い目だという。

「今年のスズキは新型アルトに加えて、“2015RJCカー オブ ザ イヤー”を受賞したハスラーを押しています。人気車種なので値引きは小さめ(9万~11万円)ですが、年初に受賞記念特別仕様車を発表して盛り上げを図っています」(遠藤氏)

また、昨年の年間販売台数(23万4456台)で見事に軽トップとなったタントだが、昨今の競争激化でも上位を死守しようと、値引きが13万~14万円まで拡大中。さらに三菱のeKワゴンは現行軽乗用車では最も値引き幅が大きい(13万~16万円)と、遠藤氏は指摘する。

というわけで、今年の初売り商戦を総合すると「ダイハツの新型ムーヴが、クルマそのもののデキの良さと、ニューモデルとしては値引き幅が大きいので滑り出しの売れ行きは最も好調です」と遠藤氏。

あとは、軽トップを狙って増販を仕掛けているホンダN-BOX(スラッシュを含む)、2014年にブランド全体の販売台数で軽トップの座をダイハツから奪還したスズキが押せ押せで売ろうとしている新型アルト、そしてハスラー…あたりが初売りの勝ち組といえるか。

(取材・文/佐野弘宗)