ついに日本にも対岸の火事ではなく飛び火し、惨劇を生んだテロリスト勢力の蛮行。

アメリカはじめ同盟国は徹底的に殲滅する意志を表明する中、『シャルリー・エブド』紙へのテロ事件をきっかけに「イスラム過激派との戦争」を宣言したフランス。一体、どのようにアルカイダやイスラム国と戦おうとしているのか?

フランス在住の元外人部隊兵士がこう語る。

「フランスがまず国内でできることは、軍人を投入しての要所警備の恒常化、そして情報機関を活用してのテロリストの早期発見と対処でしょう。一方、海外のイスラム国に対しては、1隻しかない空母を中東近辺に派遣し、海軍戦闘機と空軍戦闘爆撃機でイスラム国を爆撃するくらいです。フランスはお金がないですから…」

1月14日、フランスのオランド大統領が、仏海軍の原子力空母シャルル・ド・ゴールにヘリで着艦、新年の挨拶の中でイスラム国への空爆に同空母を参加させると表明した。

世界の空軍を取材した経験のあるフォトジャーナリストの柿谷哲也氏が、こう説明する。

「現在、フランス空軍は、UAEとヨルダンに計15機の戦闘機を派遣してイスラム国を爆撃しています。さらに増派できるのは15機が限度でしょう。これに空母搭載の30機を加えた計60機が最大派遣空爆戦力となります」

フランスは昨年9月からイスラム国に向けて十数回の空爆を実行している。1週間に1回くらいの頻度だが、ここに増派と空母搭載機が加われば、出撃数は10倍に増やせる。ただ、それでも1日に1回空爆できるくらいということで、圧倒的な空爆とは程遠い。

さらに、2度アフガンに出征し、フランス国内の重要観光地で対テロ警備任務にも就いた元フランス外人部隊スナイパーの反町五里伍長がこう付け加える。

「対イスラム国の戦争は、空爆だけでは効果が上がらない。やはり地上兵力を入れないといけません」

フランスが地上兵力を投入した場合

では、イスラム国占領地に地上兵力を入れた場合、そこではどんな戦闘が繰り広げられるのか?

「自分は2回目のアフガン派遣で市街戦を経験しましたが、家、建物、ビルに一軒ずつ突入して、検索して、敵を潰して確保する。地道で危険な戦闘が続きます」(反町伍長)

これが残虐性の強いイスラム国が相手となれば、あまりに過酷な市街戦となりそうだ。

「正直、あまりやりたくないですね。敵は麻薬も使って恐怖心をなくしていて、自動小銃を撃ちまくってくるでしょう。普通なら逃げるような状況でも特攻で向かってくる。考えるだけでぞっとします」(反町伍長)

イスラム国の戦闘員は総計20万人、うち外国人義勇兵が5万人といわれる。しかも、ネットを通じて全世界から補充要員が来る。対する仏軍は、軍事筋によると、

「陸は総兵力12万ですが、海外派兵できるのは最大4万人。外人部隊を5000名投入しても4万5000人です。この兵力では、イスラム国を包囲・殲滅(せんめつ)するには足りません。相当な戦死者が出ます」

フランスだけではイスラム国の殲滅は不可能だ。となると、主導するアメリカはもちろん、各国も出撃するしかない。イスラム過激派との戦争は、もはや1国の軍事力だけで解決できる問題ではないのだ。

(取材/小峯隆生)