広島市民が熱狂している。日米通算182勝、名門ヤンキースのエースにまで上り詰めた黒田博樹投手(40歳)が、8年ぶりに古巣のカープに復帰したからだ。

広島市内で、野球用ユニフォームを制作販売する「プレイボーヤ」店主の加藤勝義さんがこう話す。

「黒田はメジャーに挑戦する時、『日本に戻ってくるなら、またカープに』というセリフを残して渡米しました。それから7年。年俸21億円超のオファーを蹴り、4億円しか提示できなかったカープに約束通り、戻ってきてくれた。その黒田の“男気(おとこぎ)”に市民は皆、感動しているんです」

ならば、その熱狂ぶりを実感しようと、黒田の入団会見が行なわれた2月16日の翌日、広島に行ってみた。

JR広島駅を降りて、まず目に入ったのが地元デパート「福屋」の正面に掲げられた巨大な垂れ幕。そこには「おかえりなさい!黒田投手」という太文字が躍っていた。

駅構内の売店には、前日の入団会見の模様を報じるスポーツ紙が山積みに。売店のおばちゃんが笑って言う。

「1面はどれも黒田の巨大写真がデカデカと載っとるじゃろ。こんな大きな扱いは見たことがない。切り抜けば、そのまま黒田のお面ができる」

続いて、駅から本拠マツダスタジアムに続く長さ約800mの通り、通称“カープロード”へと移動し、界隈(かいわい)の店を訪ねる。

その一軒、お好み焼き店「KOUBOUICHIスタジアム広島」の越田城全プロデューサーが、黒田フィーバーの現状を説明してくれた。

「年明け早々、開幕第3戦(対ヤクルト)の日に予約したいという電話が入りました。カープファンの間では、黒田の初登板は開幕第3戦になっているようです(笑)」

そんな越田さんのお店自体も前のめりで、店内のモニター横に設置された巨大スコアボードには「黒田復帰初戦」とあり、1-0という試合結果まで書き込まれている。すでに広島では、黒田がヤクルト相手の復帰戦で完封勝利を飾っているのだ(笑)。

カープの優勝はもう決まっている?

だが、そんな驚きも序の口。ラーメン店「呉麺(ごめん)屋」の村上文人営業主任はこう語る。

「メジャーに行くと思っていたマエケン(前田健太)が残留し、阪神から新井(貴浩)が出戻ってきた。そこに黒田の復帰です。『これで優勝せんで、いつ優勝するんじゃ?』と、誰もが言うとります。もう優勝ですよ。うちもラーメン1杯100円で優勝セールをやります!」

なんと、広島市では黒田の初勝利日どころか、球団の優勝も決まっていた!(笑)

エスカレートする一方の黒田フィーバーに、2月3日に開店したバー「ベースボールバーC」のオーナー、梶川高志さんは悲鳴を上げる。

「ウチはオープンしたてなのに、日に日に客が増えて、満席になることも。お客さんの口から飛び出るのは『優勝』の二文字ばかりです。シーズン前でこの騒ぎなのに、開幕したらどうなってしまうのか。スタッフも増やさないといけないし、今の黒田フィーバーは怖いくらいです」

カープが最後にリーグ制覇したのは1991年のこと。黒田効果で24年ぶりの優勝はなるのか。本当に楽しみだ。

(取材/ボールルーム)