プロ入り2年目の昨年は日本球界史上初、「ふた桁勝利(11勝)&ふた桁本塁打(10本)」を記録した日本ハムの大谷翔平。

メジャーリーグでもベーブ・ルース以来という大記録の達成、ここまでの成果を残したのだから、さらに「20勝&30本塁打」という偉業も視野に入れてほしいところ。今回はそのために必要な条件を、野手としての側面から探ってみた。(前編・投手での可能性はこちら→http://wpb.shueisha.co.jp/2015/03/16/45131/

もともと大谷は打球を遠くへ飛ばす能力に天性のものがあり、今年のキャンプではさらスケールアップしていた。パ・リーグ某球団のスコアラーが語る。

「スイングがややコンパクトというか、シャープになった。『強く叩く』というヤツですね。キャンプでの打撃練習を見たら、主砲の中田翔より飛距離が出ていました。当然、今年は本塁打も増えると思います」

昨年までロッテの捕手として活躍し、大谷と直接対決した経験のある里崎智也氏も打者・大谷の能力をこう評する。

「純粋に打者として見れば、間違いなく30本塁打はクリアするポテンシャルがある。昨年の段階でも、打者一本でフル出場していたら30本は可能だったと思います」

昨年の大谷は10本塁打。だが、ここでは単純な本数ではなく、1本打つのにどれだけの打数を必要としたかを示す「本塁打率」に着目したい。

昨年の大谷の本塁打率は21.20。本塁打王のメヒアや中村らには負けるが、同じ日本ハムの4番・中田翔(19.67)とさして変わらない数字だ。もし中田と同じ打数だったと仮定した場合、単純計算すれば25本打っていたことになる。

実は、日本ハムの栗山監督はこんなことを言っている。

「大谷は、たった10本ですごいと思われるような選手じゃない。300打席くらいあるとして、10回に1回が本塁打なら30本打てるわけです」

里崎&石毛が指摘するポイント

では、限られた打席数で、さらに効率よく本塁打を量産するには何が必要か。黄金時代の西武をリーダーとして牽引した石毛宏典氏はこう指摘する。

「技術的なことをいえば、打つポイントをもう少し前(投手寄り)にすることです。今の大谷はやや捕手寄り、つまりボールを引きつけて打とうという意識があり、それでレフト方向にも打てている。でも、それでは飛距離を最大にすることはできません」

昨年の10本の内訳は、ライト方向に引っ張ったのが4本、センター1本、レフト5本。「レフトにもスタンドインできるパワーは要警戒」(前出・パ・リーグ某球団スコアラー)という見方もあるが、石毛氏の発想は逆だ。

「レフトにもっていけるのは、彼のセンスとパワーの証。しかし、本物の長距離打者というのは、外角の球もライトに引っ張るくらいの意識が必要です。打率も稼ぐ巧打者を目指すなら今のままでもいいですが、もし本塁打を量産したいなら、考え方を変えたほうがいいと僕は思う」

また、開幕から順調に打ち続けた場合、避けては通れないのが内角攻めだ。前出の里崎氏はこう言う。

「僕が捕手なら、徹底して内角を攻めます。ぶつけてはいけないけれど、こっちも生活がかかっていますから。際どい内角を攻め、外角の変化球で打ち取る。あるいはスイングを狂わせていく。定石といえば定石ですが、彼がそれに対応できるかですね」

ただ、実は内角のベルトより上は大谷の得意コースでもある。ここを打ち続け、「内角には投げづらい」と思わせることができるか。そこに「30本塁打」実現のカギがある。

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