1980年代から90年代、黄金時代の西武をリーダーとして牽引した石毛宏典氏は、現在20歳の日本ハム・大谷翔平をこう評する。

「戦後、日本のプロ野球は長嶋茂雄さん、王貞治さんたちが引っ張ってきたわけですが、もしかしたらそれ以来の大きな話題、注目すべき素質を兼ね備えたスター選手ですよね」

二刀流を非難する声もまだあるが、昨年は「ふた桁勝利(11勝)&ふた桁本塁打(10本)」を記録し、もはや日本人離れしたそのポテンシャルは誰しもが認めるところ。3年目の今シーズン、どこまで成績を伸ばすのか期待は膨らむ。たとえ、不可能と思われる「20勝&30本塁打」の可能性でさえ、ありえないとはいえない何かを感じさせるのが彼の想像を超えた魅力だ。

前回までの記事では、投手としての20勝の条件(こちらを参照→http://wpb.shueisha.co.jp/2015/03/16/45131/)、打者としての30本塁打の条件(こちらを参照→http://wpb.shueisha.co.jp/2015/03/17/45135/)を探ってきたが、今回はそのカギを握る究極の提言“火曜ローテ”を検証してみたい。

まず本塁打を量産するためには、単純に打席数を増やすことがもっとも効率が良い。大谷は、投手として登板する日の前後は野手として出場しないというのが基本線。昨年までロッテの捕手として活躍し、直接対決した経験のある里崎智也氏が、それを前提として、こう提案する。

「20勝&30本のカギは、本人以上に起用する監督や首脳陣が握っていると思います。機会さえ増やしてあげれば、結果を出すのが大谷という選手の才能だと思う。月曜日は基本的に移動日で試合がないので、野手出場を増やすには日曜日か火曜日に登板すればいい。興行的には日曜日がベターでしょうが、個人的には毎週火曜日に先発することを勧めます」

登板前日に試合がないのは、気分的に楽。登板後は1日休んで、木曜日から4試合に野手出場と決まっていれば、肉体的なリズムも安定して好結果につながるーーというわけだ。

「それと、野手出場は必ず指名打者と決めるべきでしょう。昨年は交流戦以外でも何試合か外野手で出場していましたが、そこは徹底したほうがいい。リズムも安定しますし、守備のない指名打者は楽ですから(笑)、疲労も最小限に抑えられるはずです」(里崎氏)

この“火曜ローテ”なら、単純計算で野手として100試合近くに出場でき、打席数も400あたりまで伸ばせる(昨年は234打席)。こうなれば、30本も決して夢の数字ではない。昨季セ・リーグ本塁打王のエルドレッド(広島)は7月末までの88試合、373打席で33本打っているのだ。

“火曜ローテ”の恩恵

さらに、“火曜ローテ”は投手・大谷にも恩恵がある。

3月27日(金)の開幕戦の先発が内定している大谷だが、2戦目以降は火曜日の登板となれば、相手のエースと投げ合う機会が少なくなるのだ。

実は、2013年の田中もそうだった。この年、WBCに出場した田中は開幕投手を回避し、シーズン序盤は相手のエースと当たらなかった。そして連戦連勝が続くと、今度は相手チームのほうが田中には勝てるチャンスが少ないと割り切り、エース対決を避けるようになったのだ。

こうして見ていくと、条件さえそろえば20勝&30本もそこまでムチャな発想ではない。おそらく、誰よりも大谷自身が「オレはそれくらいやれるよ」と思っているんじゃないだろうか?

「いかに自ら望んでトライしているとはいえ、二刀流は肉体的、精神的に相当つらいと思う。でも、大谷はそれも楽しんでいる感じがする。あのポジティブさこそが、規格外のことをやり切ってしまえる秘訣なんだと思います」

かつて大洋・横浜のエースとして活躍した野村弘樹氏も、このように評する。

二刀流3年目、夢の数字にどこまで迫れるか? 見ているこちらも、大谷に負けずポジティブに楽しみたい。