苦手な上司にこそ、報告はこまめに。何度も接しているうちに「単純接触効果」で精神的プレッシャーが軽減する!

日照時間が意外に少なく、就職、異動など環境変化が多い春は“ストレスの季節”。この時期にストレスをためすぎると、5月病の原因になってしまうことも。

そこで、今回の「美メンズ変身講座」では、ストレスをためずに前向きに仕事するためのコツを、産業カウンセラーの大野萌子氏にうかがった。

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―“ストレスのない人はいない”とのことですが、負けないためにはどうすれば?

「ストレスの原因は、ほぼ人間関係です。例えば、仕事が忙しいとか、内容に不満があったとしても人間関係さえ良ければ大きな問題にはなりません。苦手な人とは会わないのが一番いいですが、仕事関係だとなかなかそうもいきませんよね。

そこで、ストレスを跳ね返す方法として効果的なのが、不満や悩みを話せる相手を持つこと。日本では平成9年に自殺者が年間3万人を超え、その人数は横ばいに推移していますが、男女比では約7割が男性です。その大きな原因として考えられるのは、男性のほうが話す機会が少ないことなんです。

愚痴ったり、不満を話すことはメンタル不全の解消に効果的。話しても悩みがなくなるわけではありませんが、心という形のないものを言葉に変換し、声に出して誰かに伝える。この一連の流れが、気持ちの整理につながります。整理されて気持ちが安定すると、『もっとこういう考え方ができる』『こうやってみよう』など視野が広がります。

だから、一杯飲みながら『あの先輩ムカつく』…っていうのがやっぱりストレス解消には最適。もちろん、職場の人に限らず、友達でも家族でも誰でもいい。ぜひ、話せる相手を持ってほしいですね」

苦手だからと接触を避けるのは逆効果

―ただの愚痴やおしゃべりにそんな効果があるとは知りませんでした。

「それから、職場などの場合、苦手だからと接触を避けるのは逆効果。例えば、3つ報告すべきことがあった時、関係性が良ければその都度報告しますが、関係性が悪いと3つまとめて報告しますよね。そうすると、タイミングを逃してしまいトラブルにつながる可能性が高く、余計に関係悪化を招いてしまうことがあります。

『単純接触効果』といって、例えばアイドルでも何度も見ているうちにかわいく見えてくるもの。苦手な相手とも10回20回と接触するうちに1、2回でも相手がニコッとすれば、苦手意識が払拭(ふっしょく)され精神的プレッシャーも感じにくくなるでしょう。もちろん、明らかなハラスメントの場合は、上司やコンプライアンスルームなど、しかるべき所に訴えることが必要ですが」

―苦手な上司と積極的に話す…最初は大変そうですが頑張ってみたいと思います。

「あとは、言いたいことはなるべく言うこと。例えば、上司や同僚とのやり方が合わない時、我慢していると当然ストレスがたまります。とはいえ、目上の人に意見するのはハードルが高いですよね。

そこでまずは、『言える人に、言えることを言う』ことからトレーニングしてみましょう。『ちょっとしたことだし、ま、いっか』と飲み込んでしまうと、いつまでたっても『言いにくい人に言いたいことを言う』にはたどりつけません。

この時、気をつけたいのは肯定的な言い方をすること。例えば、『この書類、こんなふうに書かないでください』ではなく、『こう書いてください』ですね。また、気を遣うあまり回りくどい言い方をせず、なるべく具体的でシンプルに伝えることを心がけましょう」

複数の顔を持つと精神が安定する

―プライベートの過ごし方などは? やっぱりスポーツやアウトドアでしょうか。

「趣味に没頭することは、もちろん効果的です。でも、アウトドアでないとストレス解消にならないわけではなく、その人にとって好きなこと、精神的に解放されることならなんでもいい。ゲームでもゴロゴロしてテレビを見るだけでも、リラックスできて幸せな気分になれるならOKです。ただ、フットサルとか複数でやるものは、そこでまた人間関係が面倒になることも。ひとりでできる趣味と複数でやるものと両方あるといいですね。

もし時間に余裕があるなら、なるべくいろんなことに首をつっこんでみるのがオススメです。会社での顔、友達との顔、趣味のサークルの顔…といろんな顔を持つことですね。そうすれば、もし会社で否定されても他の場所で肯定されることで救われる。心理学でペルソナ(仮面)といいますが、いろんな所にいろんな顔があるほど精神が安定するという効果が知られています」

―休みの日は思いっきり遊べということですね? アドバイスを参考に、ストレスの春を軽やかにかけぬけたいと思います!

(取材・文/週プレNEWS編集部)

●大野萌子(おおの・もえこ)Office MOEKO代表。防衛省、文部科学省などの官公庁、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行なう。日本産業カウンセラー協会において、産業カウンセラー及びキャリアコンサルタント養成指導歴15年。産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。著書に『「かまってちゃん」社員の上手なかまい方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など