宗教人類学者・植島啓司氏による、人生を豊かにする キスのススメとは?

多くの日本人はいつからキスを“セックスに至るプロセスのひとつ”と捉えるようになってしまったのか?  

結婚やパートナーの有無を問わず、もっと気軽にキスやフラート(恋の戯れ)を楽しむべきではないかーー。

そこで、「愛人論」で話題となった宗教人類学者・植島啓司氏に話を伺ってみると、今またキスの概念が変わるかもしれない。

―植島さんは著書などでたびたび、「男女間で交わされる最も魅力的な行為はキス」「セックスに対抗するにはキスしかない」とおっしゃっていますが、どういった意味なんでしょうか?

植島  僕は何もセックスとキスを対立させようと思ってるわけではないんです(笑)。ただ最近の男女の関係において、あまりにセックスばかりが問題にされていて、 キスはそこに至る単なる通過点のように思われていますよね。あれ、キスっていつからそんなにつまらないものになってしまったのかなと思ったんですね。僕は 人生を豊かにするのはセックスではなく、むしろキスだと考えているんですよ。

―キスが人生をより豊かにする、というのは?

植島  男女の関係でいうと、例えば、あるパーティで偶然、魅力的な異性と目が合うとします。しばらくして、また目が合うと「あ、あの人、またこっち見ていたん だ」と少し胸がときめくでしょ。さらにその人とテーブルの下で膝が触れ合ったり、こっそりふたりで連絡先を交換してデートの約束をしてはドキドキを募らせ、最初のデートでは手を握っただけで幸福感を味わい、キスをしては心が震えることと思います。

恋愛の最も喜ばしい果実を味わっていない?

―恋愛で一番楽しい時期ですよね。

植島 そして、その後のセックスでテンションはピークに達するのですが、残念なことに一度セックスをした相手とは、もはやキスではドキドキすることはできなくなる。肌が触れ合ったり、キスをしただけで得られた感動や胸のときめきがすべて過去のものになってしまうんですね。

―わ、わかります!

植島 つまり恋愛を長いレンジで見ると、最も豊かで幸せなのは、キスをするかしないか…の時期ではないかと思うんです。そもそも男女の間で交わされる最も魅力的な行為はキスだと思ってます。それはセックスを予感させるからではなく、キスそのものにセックスよりもはるかに豊かで精神的な要素が含まれているからです。

最近の男女は出会って相手に好意を持つと、比較的すぐにセックスに至るといわれます。でもそれだと恋愛の最も喜ばしい経験をすっとばして、その果実を味わうことなく、ただ付き合ったり別れたりを繰り返すことになる。それはちょっともったいないなぁと思うんです。

●彼氏彼女だけがすべてではない? 植島氏の“フラート(恋の戯れ)”論については発売中の『週刊プレイボーイ』にて続きをお読みいただけます!

(取材・文/鈴木えみ 撮影/矢西誠二)

●植島啓司(うえしま・けいじ)京都造形芸術大学教授。1947年生まれ、東京都出身。東京大学大学院博士課程修了後、シカゴ大学大学院に留学。専門の比較宗教学のほか、男女の性愛に関する著作多数。近著に『きみと地球を幸せにする方法』

■週刊プレイボーイ18号(4月20日発売)「総力特集12P セックスよりもはるかに奥深い! “絶食時代”のキスの作法」より(本誌では、OL100人による大アンケートやキスしたい有名人ランクなどキスを大研究!)