スズキ「スイフトスポーツ」  【価格】172万8000円(MT)179万8200円(CVT) 【燃費】14.8km/L(MT)15.6km/L(CVT) ヒット作となった先代スイフトスポーツの正常進化版。専用チューンのエンジンや小気味いい6MTのデキを考えると、この価格は割安

コンパクトなFFをベースに、ちょっとヤンチャな要素をトッピングして…というホットハッチ。かつてはバブル時代にもてはやされたように、古今東西を問わず「財布の軽い若者のファーストカー」、もしくは「オッサンの自分専用セカンドカー」という需要にドンピシャのジャンルだった。

そんな「プチクルマ好き」の定番商品であるはずのホットハッチも、軽自動車では背の低いハッチバックが絶滅寸前まで減少して、ホンダのシビックや日産ティーダが日本で売られなくなったことからもわかるように、かつてホットハッチの中心だったクラス(Cセグメント)においても日本ではすっかり下火になった。

そんな中で、ホットハッチ需要に応えてきたのがコンパクトカークラスである。一時はこのクラスのホットハッチも絶滅しかけたのだが、先代スイフトスポーツがプチヒットしたおかげで、各社とも再びホットハッチに乗り出して現在に至っている。

例えば、ホンダ・フィットRSはスイフトスポーツに追いつけ追い越せで開発された。排気量小さめの1.5リッターだが、専用チューンの鋭い吹け上がりはさすがのひと言。

しかし、各社のなかで最もバランスがいいのは、やはりスイフトスポーツか。このクラス随一の知名度だけあり、乗り心地とスポーツ性のサジ加減は「クラスの定番」といえる安定感で、エンジンや内外装の専用度を考えると価格も安めだ。

【燃費】22.2km/L(NISMO)*NISMO Sのカタログ燃費公開値なし 日産「ノート NISMO」
【価格】195万2640円(NISMO)224万4240円(NISMO S)

Sなしの「NISMO」はともに1.2L+CVTで、「NISMO S」はノートが1.6L、マーチが1.5L(両車5MT)。どことなく改造車然とした味わいが、マニアには逆に刺さるかも 日産「マーチ NISMO」
【価格】158万4360円(NISMO)182万880円(NISMO S)*カタログ燃費公開値なし

しかし最近、グイグイと伸ばしてきたのが日産だ。他社があくまで量産カタログモデル扱いなのに対して、日産は「ニスモ」という別枠ブランド化にしたことで開発も専用チームが行なう。そのため内外装の仕立てや乗り心地も思い切りがいい。静粛性や乗り心地は割り切った感じで、トータルバランスではスイフトスポーツやフィットRSに譲るが、マニアの琴線をくすぐる専用感は他社を上回る。

これらコンパクトカーのホットハッチはそろって「本体価格150万~200万円、諸経費込み200万~250万円」で、これより安くするのは難しいらしい。まあ、若者のファーストカー/オッサンのセカンドカーとしてギリギリの価格帯だが、それでも手が届かない(!)という人もいるだろう。

「狭くてアツい」世界の勢力図を変えうる!

ヴィッツに、ひとクラス上のカローラなどと共通の1.5Lエンジンを積んだRS。ある意味で安易な内容だが、普通に乗るにはいい トヨタ「ヴィッツRS」
【価格】183万1091円(MT)191万4545円(CVT)
【燃費】17.2km/L(MT)21.2km/L(CVT“SMARTSTOPパッケージ”)

スイフトスポーツに追いつけ追い越せで開発された。排気量小さめの1.5Lだが、専用チューンの鋭い吹け上がりはさすがホンダ ホンダ「フィットRS」
【価格】190万6000円
【燃費】19.0km/L(MT)21.4km/L(CVT)

そこに登場してきたのが、軽自動車のアルト ターボRS。昭和末期から平成初期に大ブームを起こした「軽ホットハッチ」の草分け的存在である、アルト ワークスの再来と言われるスズキの自信作だ。

その最大の特徴は走り。同クラスのコペンやS660の車重は800kg台半ばだが、ターボRSは驚異の670kg(2WD)。つまり、ターボRSはコペンやS660より150kg前後も軽くなるわけで、カッ飛び度は軽自動車でもかなりのものになる。

ターボRSは絶対的な安定感や高級感はコンパクトカーに譲るものの、とにかく圧倒的な軽さで新しい走りの魅力を備えている。本体価格は130万円と圧倒的に安く、軽なので諸経費込みでも150万円と、総合的なコスパはコンパクトクラスと比べればさらに差が開く。

国産ホットハッチ市場は「狭くてアツい」世界だが、この爆安ターボRSの登場で、今の勢力図が一気に変わる可能性はある。

(取材・文/佐野弘宗)