第1回のゲストには作家の北方謙三氏。まさかの延長戦でさらに“北方節”が冴える!

国民的“お昼のバラエティ”番組『笑っていいとも!』が終了して早1年余ーー。

32年続iいた「テレフォンショッキング」という名物コーナーの精神を勝手に受け継ぎ、“友達の輪”を繋げたい! そう考えた「週プレNEWS」が始めた、新連載企画『語っていいとも!』

リレーインタビューのメモリアルな第1回にゲストとしてご登場いただいたのは、作家の北方謙三氏。

先週日曜のお昼12時に配信した第1回では、かつて16年続いた名物「人生相談」を彷彿(ほうふつ)させる“北方節”が本領発揮。なんと予定の取材時間をオーバーし御本人から延長OKの続行許可が!(前回記事→ http://wpb.shueisha.co.jp/2015/04/26/46536/

初回からサプライズなハプニング!?で「いいとも!」なスタートとなったがーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

―いや、ほんと本家のテレフォンショッキングっぽい展開となりました。

北方 テレフォンショッキングっていうのは、確かにね、タモリさんの話術っていうのはすごかった。あの引き出し方がすごかったよ。で、それが変なところに引っ掛かるんだよな。俺がさっき「釣り針に紙を付けて」って言ってたじゃん。大体それでウケるんだけど、そこを「釣り針ってどういうの?」ってとこからくるからね。「どういう釣り針? 必要?」とか。そういう感じだったよ。

―急に突飛なところを振られた時にまたどういう返しがくるかっていう、違う化学反応が起こるんでしょうね。本連載では、おこがましいながらも私が司会役を務めてるんですけれども…。ひとつお聞きしたかったのが、人生相談を長いことやられて、ご自分が人生相談することっていうのは?

北方 俺か? 俺、すぐ女のコにはしてるわ。

―そこですか(笑)。

北方 「おじさんはね、もう、セックスというのはね、ひとりの作業ではなくなったんだ。押さえつけてバババッとやってもダメなんだ。たぶん、できないと思う。共同作業なんだ。共同作業するにはどうしたらいいんだろう?」とね。

―それ、人生相談っていうより懇願じゃないですか(笑)。

北方 うん、懇願。人生相談って懇願してるだろ、大体が。切なる願いが言葉だけで叶えられるところがいいんだから。今の若い女のコは「共同作業なんだからね」って言い聞かせると「何をすればいいの?」って。「じゃあ、具体的に教えてあげるから」って、いろいろ教えてあげるわけだよ。

―問答形式で誘導してます?(笑)

北方 あのね、今さら生き方を変えられないからな。だから、相談する必要ないんだよ。そうじゃん? 俺の口説き方するしかないんだからさ。

インターネットなんて信用するなよ

―では、誰かにあえて何かを聞くこともない? もう、ご自分が神であり仏のような存在でありって境地ですか。

北方 そうだな。俺がそうだから。大体、俺パソコン扱えないんだけどさ、ずーっと昔にインターネットっつーのをやったんだよ。あれをね、みんな信用してるでしょ。嘘だよ、あれ。調べものしてたら、18禁のなんとかっていうのが出てきて、そこをパチっとやったら変な画像が出てきてな。

―それ、完全にヤバい系です(苦笑)。

北方 変な画像が出てきて動いてるし、「あ、いいな」と思って見てたらさ、あんまりにも恥ずかしいからパチっとクリックすると、また違う女のコが出てきて。また「これはいいな」と思って見続けててだ…はっと気がついて「これはこうやって見てていいんだろうか…」「絶対これをただで見れるのおかしいな」と。

―ハマりましたか(笑)。

北方 それで、早く抜けようと思ったら、今度抜けられないんだよ。で、回線をぶち抜いてだな。そしたら翌日さ、俺の秘書が書斎にきて「昨日、変なもの見ましたか?」って。それは、見る見ないを別として、おまえがなんで知ってんだ?って言ったら「セーシェル諸島に電話が繋がって、何万円か請求がきてます」って。

―アハハハハ(爆笑)。セーシェルですか? ケイマンとかでもなく…。

北方 セーシェル諸島。完璧に引っかかってた。だって、その時さインターネットっていうのをよく知らなくて、パソコン買ったばっかでさ。今だってブラインドで打てるんだけど、文章書くのは手じゃないとダメなんだ。でも、一応インターネットは便利だからって調べてたんだよな。

―それで、信用ならんと。

北方 うん。だから、インターネットでみんな調べるのはダメ。あのね、正解に行き着くまでに、若いヤツと喋ってるとすぐにスマホでピッパッポッとかやるわけだよ。それで、「〇〇です」とか言うわけだけど、スマホ閉じたらもう忘れちゃうんだ。やっぱ知識というのはね、文献で調べていくとその間にいろんな発見があるし、手間かけたところの知識っていうのは、少しは身になるよ。

―確かにそういうプロセスが大事ですよね。セーシェルから、また深いお話をいただきました(笑)。

北方 だから、若いヤツらはスマホ人生でさ、なんにも知らないんだ。俺に言わせると、なんにも知らない。俺もスマホ持ってるけどな、「スマホ使ってるんですね」って言われたくて持ってるだけ。

青春の愚かさが違うところに出てきてる

―車でマニュアル乗らなくなって、オートマで簡単に運転できちゃえる感じにも近いですかね。

北方 それよりも自動車ゲームに近いね。画面があってブーンと走る、それに近い。実際に車動かしてみたら全然違うから。

―なるほど。車を運転してるのでもないっていう。

北方 そう。それで若いヤツらの文化はもうダメになってる。だから絶食がいっぱい出てくるんだよ。もう少しさ、いろんなものにぐーっと食い込むようになってくると、自分を食い込んで見つめるから絶食なんかならないよ。

―それこそ今はバーチャルで理想の女がネット上にいっぱいいますし。リアルではそういう女性と自分はどうせ付き合えない、その過程も面倒くさいし怖い…だったら、その理想の中で自分で処理してたほうが楽ってのが多いみたいです。

北方 あのさ、『ラースと、その彼女』っていう、どこのだっけな、面白い映画があって。

―あれ、面白かったですね。リアルドールを彼女にしちゃって、町の人にも認知させていくっていう。

北方 ああいうもんじゃんねーのか。映画の方がマシなのかね?

―全然マシなんじゃないですか。空気人形でさえも結局、生身で。触れたり会話したりする感覚がある分、ネット見て処理してるより手触りがあるのでは。

北方 そうか。でもダッチワイフだぞ?

―そうですけど、一緒にベッドで寝たりもしますから。業田良家さんの漫画でやはり映画化された『空気人形』もそうでしたけど。

北方 昔、若いヤツからの相談でもあったよ。ダッチワイフを買ってヤッてて、もう1コ欲しくなって買ったら、こっちが嫉妬してるけどどうしようって。俺は「死ね!」って言ったけどね。「即座に死ね!」って。

―今はそれでも良く見えちゃいますね。そうやってそばに置いて人格を持たせている分、ネットの画像を見て相手してるよりも。

北方 まぁ、およそさ、青春の愚かさが違うところに出てきてるね。昔の無鉄砲なのじゃなくてさ、非常に非生産的な、自分を見つけられない青春の愚かさが出てきてる。

昔は何か成し遂げるとかじゃなくても、どんだけバカになれたか、一途になれたかが青春だったんだよ。今は一途にもならない、バカにもならない。ひとりっきりで出すもの出したら、後は外に行って絶食系の顔してるっていうさ、つまんねーな。

俺をまず選んだところで破壊してるよ

―バカやって恥をかくとか、恥ずかしくても自分が背伸びして、失敗するんでも経験値増やしてっていう。それを一切拒絶するような…。

北方 うーん…はぁ…(深いため息)。

―なんか、第1回のテーマみたいな感じになりましたが…。このシリーズの大きなテーマもそこにあるような気がしてきました。

北方 いや、大体俺を第1回に選んだところで、もうすごくね、企画を破壊してるよ(苦笑)。

―いや、それはもう望むところではあるんで(笑)。

北方 そうだよな? そんなもん、計画通りにやっちゃダメなんだよ、雑誌ってのは。雑誌なんだからさ。

―最初は『いいとも!』もそういうノリで始まったようですし。

北方 『ホットドッグプレス』で人生相談やってる時にだな、俺の写真が2カット載るんだよ。その時に読者からカメラマン募集して撮らせたんだから。それぐらいのことできたんだよ、あの頃の雑誌は。素人だよ。素人が来てさ、で、俺が(松田)優作と飲んでたら、来てカメラ向けるもんだから、優作にボカンと殴られてさ(笑)。

―だいぶアナーキーですよね(苦笑)。

北方 雑誌がな。でも、写真ってのはさ、誰でも撮れるじゃん。しかもシャッター切る時に非常に緊張するから直接的に自分が出るんだ、大体が自己表現なんだよ。その彼だって、シャッター切った瞬間に自分撮ってるのと同じだからな。

それでね、10人ぐらいやったよ。で、ふたりぐらいね、プロのカメラマンになった。そういうもんなんだよ。それから大変だったと思うけどな、プロになっていくまで大変な道のりだったと思うけどね。

―それだけ時代も面白く、猥雑(わいざつ)な魅力があって…。

北方 面白かったしさ、アナーキーというよりも秩序がなかったよな。混沌からいろんなものがね、生まれてきた。そのエネルギーが今ない時代になったな。

北方氏にご紹介いただくお友達は?

―なので、少しでもこういう仕掛けというか、行き当たりばったりな遊びの企画をやらせていただければと。

北方 あと、俺は知らないよ。

―いや、もう初っぱなに出ていただいた以上、共同責任で(笑)。

北方 関係ないよ、何言ってんだ。それはね、次に渡したら終わりだよ。

―では、肝心なお友達を紹介していただけますか。

北方 どういうのがいいんだよ?

―いやもう、それこそガチで「俺の友達の中の友達」という方を。

北方 一番の仲良しの友達……大沢在昌。

―それは、ものすごいドストレートな直球じゃないですか(笑)。

北方 だからドストレートだよ。そこをちゃんとプレイボーイの責任で、お願いしますっていくんだよ。変化球でも紹介できるけどさ、でもハッキリ言って、最初にものを作っていくなら、基盤を作っておくっていう意味ではね、大沢がやっぱりいいだろ。

つまり、この路線を作んなきゃいけないわけだよ。俺のハチャメチャ路線を「謙ちゃん、何言ってんだよ」って感じで大沢に繋がせてさ。それで次に誰を言うか知らないけど、最初に3つぐらい揃えると、一応基本的なものが方向性もできてくじゃない。

―ディレクションまで指南していただくとは! 仰る通り、地盤を整えてからじゃないと冒険もできないですよね。

北方 だったら、やっぱり大沢やっといてな。それは貝山だってさ、ある程度胸襟(きょうきん)を開けるだろうから。「お願いしますよ」って言ったら、あいつだって喋るだろうしな。

―いや、本当にそこまで考えていただいて感激です。では、大沢さんに伝えておくメッセージを最後に何か?

北方 なんにもないな。もう今さら会いたくない。会いたくないけど、俺、会うんじゃねーかな、いつかな…明日だよ。明日、どっかで対談するんだった。

―切っても切れないというか、仲良すぎです(笑)!

●第2回は5月10日(日)配信予定! ゲストは作家の大沢在昌氏です。◆北方謙三(きたかたけんぞう)1947年佐賀県生まれ。中央大学法学部在学中の70年にデビュー、“ハードボイルド小説の旗手”として一躍人気作 家に。『逃れの街』『友よ、静かに瞑れ』『黒いドレスの女』など多くが映画化される。その後、歴史小説を手がけ『三国志』『水滸伝』など壮大な大長編を執 筆。柴田錬三郎賞、司馬遼太郎賞など受賞多数。86年から02年まで『ホットドッグ・プレス』にて人生相談「試みの地平線」を長期に渡って連載。97年か ら01年には日本推理作家協会理事長を務める。現在、アンソロジー『冒険の森へ 傑作小説大全』(集英社)の編集委員でもある

(撮影/佐賀章広)