「来た人の反応が見てみたい」と会期中、イベントに訪れるかもしれないという作者の岸本斉史先生

先月25日から始まり、このGW中は数時間待ちと長蛇の列が並んだ「連載完結記念 岸本斉史 NARUTO-ナルト-展(以下:NARUTO展)。

今回の展示会は、週刊少年ジャンプで1999年から2014年まで連載された漫画『NARUTO-ナルト-』(以下:NARUTO)の15年間の軌跡を辿(たど)ったもの。150点以上の原画が展示され、来場者からは「感動した!」など絶賛の声が相次いでいる。

そこで、「週プレNEWS」は今回監修も務めた作者の岸本斉史氏に独占取材! NARUTO展、そしてNARUTOの話を伺った。

―まずは開催おめでとうございます!

岸本 ありがとうございます。今回の展示会は要所要所でポイントをきっちり押さえて、15年とすごく長いNARUTOという作品の中にどういうモノが入っているのかというテーマや、見るべき所が見やすくピックアップされていて満足のいく感じでできたと思います。

―元々、展示会をやろうとは思っていたんですか?

岸本 やりたいなとは思ってたんですけど、昨年春くらいに、たまたまお話をいただいてですね。コミックをあまり読まなくてもNARUTO展に来ればNARUTOってこういう話なんだってわかるようになっているんです。師匠と弟子の繋がりやライバルとして、親子としての繋がりなどそういうものを書いてあることが今回、テーマやキャラクターごとに表現できていて良かったです。

―1年も前から!? それって連載中ってことですよね?

岸本 もちろんです。最後は特に忙しかったですね。でも僕は監修という立場で企画に口を出したりしますが、実働していた担当編集者は本当に大変そうでしたよ。打ち合わせをしていて気を抜くと寝落ちするんじゃないかなというくらい(笑)。

―なるほど。岸本先生は、監修以外には?

岸本 僕はポスターとかを描いていたりしていました。ポスターは、最初はちょっと怖いかなと思ったんですけど、実際刷りあがってみると九喇嘛(クラマ=ナルトに封印されている魔獣)がガッと勢いがあってNARUTOらしさがあったり、NARUTO展に対しての想いと共に集大成でもあるから気持ちも乗っているし、いろいろ描いた絵の中でも特に気に入ってます。ちゃんとやんなきゃという想いが絵に出てますね。

最終回は最終回じゃなかった?

岸本先生もお気に入りのイベントポスター。主要メンバー勢揃(ぞろ)いで読者にも好評だ!

―ほんと迫力あってカッコいいですよね! 展示自体は実際に出来上がってみていかがでしたか?

初めは小さな模型で見ていたので、やっと形になったんだなと感慨深かったです。それとテーマ毎に見せていく全体の流れは模型でも「あぁ良いなぁ」と思っていたんですけど、火影岩や終末の谷などビジュアル面の大きさとかは、実物を見た時にすごい迫力だなとビックリしました。

―今回の展示会は15年の連載というものがあって実現したものですけど、最終話を描き上げた時はどんなお気持ちでした?

岸本 最終回って、オールカラーの最終話とその前の話と2話掲載だったんですよ。実はカラーページはスケジュールが早いので、ホントは先に描き上がってたんですよ。だからその前の話が実質は最終回という気持ちでした(笑)。

―最後に渾身のカラーページを描いていたと思ってたんですが、違ったんですね…。

岸本 そうです、そうです。しかも、2話で時間もなく、完全に締切も過ぎていたので、もう間に合わないんじゃないかと思って「ヤバイヤバイ」と言いながら描いてました。そこら辺は感動的なものではなく、ただ本当にすいませんという感じで(笑)。

―いえ、面白くて、感動的な話でした!

岸本 すいません。ありがとうございます。

憧れの鳥山先生になれないからこそ…

―では、この長期連載を終えて今、改めて振り返ってもらってもいいでしょうか。

岸本 僕はこれまで人に認められる機会が少なく、劣等感ばかりだったんですよ。NARUTOはそのコンプレックスを解消するために描いていたんです。漫画を描くことでコンプレックスがどんどん埋まっていくので、漫画が認められるにつれて僕のコンプレックスも解消されていきましたね。でも、それによってハングリーさが無くなっていく、それは作品に対しては良くないのではないかという不安もありつつでしたけど。

―ナルト自身も劣等感の強い主人公でしたよね。ご自身で憧れの漫画家として鳥山明先生を挙げていましたが、単刀直入に言って近づいたと思われますか?

岸本 いやいやいや! そんな、何言ってんですか、恐れ多いですよ(汗)! でも、みんな鳥山先生みたいになりたいと思うんですけれど、鳥山先生のようにはなれないと途中で気付くんですよ。目標の人や憧れの人がいるのはすごくいいことです。でも「そのもの自体にはなれない、自分はどうすればいいのか」を考えることが大切なのかなと思いましたね。それはある意味、ナルトで気付けたなとは思いますね。

―自分の道を行く、それを見つけることが大事なんですね。現在、ナルトの息子・ボルトが主人公の短期連載『NARUTO-ナルト-外伝「七代目火影と緋色(あかいろ)の花つ月(はなつづき)」』も始まっていますが、ボルトはどんな道を見つけるんでしょうか。

岸本 ネタバレになるのであまり言えませんが、ナルトは繋がりというものをテーマに描いていたので、今度は具体的なDNAのような要素として繋がっているものと気持ちが繋がっているもの、同じ繋がっているものでもどういうものなのかを描きたいなと思っています。DNAの繋がりに対して何がどう受け継がれていくのかを描いてみようかなと。

―ありがとうございました!

■連載完結記念 岸本斉史 NARUTO-ナルト-展 http://naruto-ten.com/

【東京会場】 開催期間:~6月28日(日) 会場:森アーツセンターギャラリー(東京・六本木)

【大阪会場】 開催期間:7月18日(土)~9月27日(日) 会場:大阪文化館・天保山

(取材・文・撮影/週プレNEWS編集部)