今季に入ってJリーグ最年長ゴールを2度更新するなど再び輝きを放っているカズ

今季に入ってJリーグ最年長ゴールを2度更新するなど、48歳になった今、再び輝きを放っているカズ(J2・横浜FC)。

物議を醸した野球評論家・張本勲氏による“引退勧告”も記憶に新しいが、実際のところ何歳までプレーできそうなのか!?

■今季の2得点を生んだ“モデルチェンジ”

カズこと三浦知良が、Jリーグ最年長得点記録を次々に塗り替えている。

4月5日の磐田戦で得点を決め、自身の持っていたJリーグ記録を48歳1ヵ月10日に更新すると4月19日の長崎戦でも再びゴール。同記録を48歳1ヵ月24日に伸ばしたのである。

昨年はシーズン前の故障もあって公式戦出場2試合にとどまり、総出場時間はわずか4分。一部では限界説もささやかれていたアラフィフ男のカズが、今年は逆に若返ったかのような結果を出しているのだ。もはやKINGに自然界の常識は通用しないのか!?

と思ったら、4月26日の徳島戦で右太もも裏を痛めて途中交代。KINGもやはり人の子だった。幸い症状は軽く、現在は復帰を目指して治療に専念している。

しかし、負傷するまでのカズの快進撃は決して偶然やまぐれの類いではない。それを裏づけるきちんとした理由があるのだ。今季のカズの2得点をいずれも現場で目撃しているサッカージャーナリストの後藤健生(たけお)氏が言う。

「1点目はゴール前までの長い距離を走り、右からのクロスにドンピシャのタイミングでジャンプして放ったヘディングシュート。2点目はフリーキックから味方選手が折り返したボールをやはり頭で合わせたゴール。彼が頭で決めるのはかなり珍しいことです」

それが2度も続くのは、ある“モデルチェンジ”の影響だという。

「昔のように90分間走り続けることはできないし、一歩、二歩のダッシュの速さでも若い選手には太刀打ちできない。でも、それを補うため動き出しのタイミングやゴール前へ走るコース取りを工夫し、相手選手より一瞬先に体を入れてボールに触ろうという意識を今年の彼には強く感じます。だからこそ、慣れないヘディングでも敵のマークを外してシュートを決められるのです。特に今季1点目は弧を描くように走り込み、完璧なタイミングで高速クロスをとらえたもので、『48歳にしては』という言葉など無用の掛け値なしで美しいゴールでした」(後藤氏)

その今季初ゴール後には、野球評論家の張本勲氏がテレビ番組内で「もうお辞めなさい」「若い選手に席を譲ってやらないと」とカズに“引退勧告”をし、物議を醸した。

「クラブが単なる客寄せパンダとしてカズと契約し続けているのならサッカーに対する冒涜(ぼうとく)だし、若い選手のためにもよくない。でも、ゴールというFWに課せられた最大のミッションを果たしているし、彼より格段上の得点感覚を持っていそうな若手もチーム内に見当たらない。今季のカズは、横浜FCの紛れもない戦力です。私は一昨年、去年より今年のカズのほうがいいと思いますよ」(前出・後藤氏)

指導者や解説者には興味がない

好調ぶりを支えるベースになっているのが、長く続けているストイックな生活だ。スポーツ紙のベテランサッカー記者A氏が語る。

「トレーニングで厳しく自分を追い込むのはもちろん、例えば食事に関しては、脂質の量やカロリーにとても気を配っています。初めての店で外食するような時、彼はひとつひとつのメニューを写メで専属の栄養士に送り、『この料理の鶏肉の皮は食べてはダメ』『パンにバターは塗らないで』といった指示を仰いでいるほどです」

そこまで厳しく自らを律しながら、カズが現役に強いこだわりを見せるのはなぜなのだろう。

「純粋にサッカーをするのが好きだからですよ。彼は指導者や解説者といった、選手以外の道にまったく興味がない。だから必要としてくれるクラブがある限り、プレーを続けているのです」(A氏)

くう、シビれる! 今のケガをしっかり治し、戦線復帰したあかつきには、J最年長記録のさらなる更新を期待したいところだ。

「再び大きな故障をしない限り、今季さらに点を取れる可能性は高いでしょうね」(後藤氏)

ただ、上には上がいる。世界に目を向ければ現在の史上最年長ゴールは、1924年のFA杯でウェールズ代表のビリー・メイデスという選手が記録した49歳208日。そして、サッカー選手として初めてナイトの称号「サー」を授かった伝説的なイングランド代表FW、スタンリー・マシューズが現役を引退したのは50歳となっていた65年だった。我らがカズは果たして、そんな大記録を破れるだろうか。

「横浜FCのメインスポンサーであるLEOC(レオック)グループの社長は、カズの大ファン。そして、クラブがカズに支払っている年俸もかつてほど高額ではありません。だから契約してくれるクラブがなくなる心配は、あと数年はしなくていいでしょう。そしてカズ自身は『一生現役でやる』と言っています(笑)」(A氏)

「運動量が少なく、1対1での勝負が主だった時代につくられた記録と現代サッカーの記録を比べることも、イングランド1部リーグの記録とJ2の記録を比べることもさほど意味があるとは思えませんが、せっかくだからカズには世界記録を樹立してもらいましょう。本人の気力さえ衰えなければ、J2レベルならまだしばらくやれるのでは? 48歳までできたのだから49歳、50歳になって急にゴールを決められなくなる、プレーができなくなるとは考えづらいですね」(後藤氏)

とはいえ、やはり年齢が年齢。カズ本人にやる気があっても、いつ何時、不測の事態で現役生活に終止符が打たれないとも限らない。まずは今季のうちにスタジアムへ足を運び、“動くレジェンド”カズの雄姿をその目に焼きつけておくべし!

(撮影/ヤナガワゴーッ!)