欧州チャンピオンズリーグ(CL)もいよいよ決勝(日本時間6月7日)を残すのみ。今季は、いい意味で予想を裏切る顔合わせになったね。

バルセロナ(スペイン)はともかく、まさかユベントス(イタリア)が準決勝でレアル・マドリード(スペイン)を倒して勝ち上がってくるとは思わなかった。バルサとレアルの対戦はいつも白熱して面白いんだけど、スペインリーグで必ず見られるわけだし、やっぱりCLの舞台では違う国同士の対決を見たい。そういう意味で、決勝でのスペインとイタリアの対決は97-98シーズンのレアルvsユベントス以来となるから新鮮な感じがする。

ユベントスは2006年に八百長問題でセリエBに降格したものの、その後は着実に力を取り戻している。今季もセリエAで圧倒的な勝ち点差をつけて4連覇を果たした。名門が完全復活したという印象だ。

FWテベスは今季も好調で、ベテランMFピルロも健在。イタリア代表の不動のGKブッフォンを中心にした守備も堅い。そして、強烈なのはフランス代表のMFポグバ。長身で運動量があって身体能力も高くて、なんでもできる。まだ22歳と若いけど、スケールが大きく、今後が楽しみな選手だ。

ユベントスはグループリーグ2位通過で、決勝トーナメントも、ドルトムント(ドイツ)、モナコ(フランス)と準々決勝までは組み合わせに恵まれた。それでも攻守のバランスに優れたいいチームであることは間違いない。

一方のバルサはなんといっても“MSN”と称されるメッシ、スアレス、ネイマールの3トップだね。昨季はメッシ頼みのサッカーが分析されて、CL準決勝でバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)に大敗。正直、ひとつの時代が終わったと僕も思った。

ユベントスにも勝機は十分

でも、スアレスの加入が大きかったね。ドリブルができて、パスも出せて、スピードがあって、決定力がある。彼の加入でメッシがずいぶんラクになった。今季は3人で公式戦100点以上決めている。対戦相手はどうやって守ればいいのかわからないだろう。はっきり言って反則だよ。

バルサはMSNの存在によって、サッカーの内容も変わった。昨季までは90分間細かくボールをつなぐサッカーだったけど、今季はリードすれば、パスをつなぐことにこだわらず、前の3人だけでショートカウンターを狙うようになった。サイドバックの攻撃参加も減り、守備に人数を割くようになった。それもMSNの3人がいるからこそ可能な戦い方だね。

決勝は誰もがバルサが有利だと思っているはず。ユベントスの選手も、バルサ有利を理解しているし、バルサの選手もレアルじゃなくてユベントスが勝ち上がってきてよかったと思っているだろう。でも、決勝は一発勝負。守備力ならユベントスは負けていない。少ないチャンスをゴールに結びつける勝負強さもある。

バルサの強力な3トップを、どこまで止めることができるか。イタリアらしい手堅い試合運びでバルサの焦りを誘えれば面白い。ブラジルW杯でスアレスに噛みつかれたDFキエッリーニは、またスアレスを挑発するだろうし、バルサの選手をイライラさせればユベントスにも勝機は十分にある。

もっとも、今年のクラブW杯は日本開催。どちらのチームを生で見たいかと聞かれたら、やっぱりバルサかな。

(構成/渡辺達也)