いよいよ交流戦も始まり、DeNAの快進撃やルーキー、若手の活躍など新鮮な話題で盛り上がるプロ野球。

ところで、CS・フジテレビONEのスポーツ番組『プロ野球ニュース』の中に「今日のホームラン」というコーナーがある。文字通り、その日の試合で出た全ホームランの映像を流すのだが、今年はセ・リーグがやけに少ない。キャスターの女子アナが「今日は少ないですねぇ~」と嘆く場面が目立つほどだ。

チームごとの数字を見ても、この傾向は明らかだ。リーグ最多のDeNAでさえ、1試合1本ペースに遠く及ばない(44試合で33本)。最少の阪神に至っては、42試合でわずか17本と2試合に1本も出ていない。一体、何が起きているんだ?(数字はすべて5月20日現在)

もう少しデータを調べてみると、減っているのはホームランだけではなかった。今年のセ・リーグの平均打率は2割4分6厘と、昨季の2割6分4厘から大きく下がっている――つまり、ホームランどころかヒットも出にくくなっているということだ。セ・リーグの打者たちが今年、何かに苦しんでいることは間違いない。

もしや、またひそかに「飛ばないボール」が使われているのか? そんな“陰謀論”も一部のコアな野球ファンの間ではささやかれているが、セ・リーグ某球団のスコアラーはこう語る。

「今年に入って、球審がストライクゾーンを両サイドに広く取るようになったんです。まだそれに多くの打者が対応できておらず、ホームランはもちろんヒットも出にくくなっているというわけ。NPB(日本野球機構)は公式には認めていませんが、現場ではこれが暗黙の共通見解になっていますよ」

典型的な例が、ヤクルトの山田だろうか。昨年は右打者のシーズン最多記録となる193安打を放ち、打率3割2分4厘を残したが、今年はここまで2割6分5厘。

「山田は『今までの感覚で際どい球を見逃すと、特に外角はストライクを取られる』と漏らしています。見逃し三振が怖いから、ついボール球にもバットを出して内野ゴロになってしまうようです」(ヤクルト関係者)

なぜ急にストライクゾーンが広がった?

それでも、最近になって調子を上げ始めた山田はさすがだが、これで調子を崩しっぱなしになってしまったのが巨人の右打者勢だ。

「特に村田はファンから“併殺製造機(ゲッツーマシン)”とヤジられるほど内野ゴロの山を築いている。本人は言いませんが、外角を意識しすぎてスイングを狂わせているのは間違いないでしょうね。打率2割2分と絶不調の坂本も同様でしょう」(前出・スコアラー)

しかし、なぜ急にストライクゾーンが広がったのだろうか? スポーツ紙デスクはこう解説する。

「背景にあるのは、今年の開幕前に熊崎コミッショナーが“時間短縮”を打ち出したこと。昨年は平均3時間17分だった試合時間を3時間以下にしたいと宣言したんですが、それを受けて審判がゾーンを広げることにしたようです。結果、ここまでの平均試合時間は3時間9分まで短縮されました。

ゾーンを広げたといっても、正確には『これまで狭すぎたものを規則通りに取るようになった』にすぎないのですが、やっかいなのは球審によってストライク、ボールの基準がまちまちなこと。広がった上にジャッジがバラバラでは…と、選手は困惑しているわけです」

ただ、ここでひとつの疑問がわく。同じくゾーンが広がったのにパ・リーグは平均打率も本塁打数も昨年とあまり変わっていないのだ。

「確かに、パ・リーグでは各打者がそれなりに対応しています。はっきり言えば、やはりセ・リーグの打者たちの技術不足かなと(苦笑)」(前出・スコアラー)

ということは…これがそのまま交流戦にあてはまったなら、パ・リーグだけが打って圧勝? 結局、今年もパの優位は動かない…のか!

(取材・文/和田哲也&本誌野球班)

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