芸能界の父であり母であり…自らは面倒見のいい「寮母さん」と語る“ピー”さん

あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした新連載『語っていいとも!』

前回ゲストの阿川佐和子さんからご紹介いただいたのは多才な活躍をされているピーターこと池畑慎之介さん。妖艶な魅力の裏に実はこんな素の一面を?と明かしていただいた、すっぴんな私生活までとは…。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

―今日はまず、ピーターさんと池畑さん、どちらでお呼びすべきかと…。

ピーター 役者の仕事の時だけ池畑慎之介だし。ま、自分のプライベートの時もね、それが本名ですから。ピーターっていうのは、いわゆるあだ名なんですよ。だからそれに“さん”つけられちゃうと、すごく気持ち悪いよね。

―なるほど。どうしても初対面だと、ピーターさんになってしまうんですけども。

ピーター ピーターさんっていうよりもピーさん?(笑) 友達もみんな、ほとんどピーって言ってますから。それに“さん”つける人もいるけど。ピーターさんっていうのが、なんか一番イヤかな。

―では、ピーさんで(笑)。ブログでも、自分のことを「ピーは…」って書かれてますもんね。ちなみにそのブログのプロフィールでは、性別=相手次第?って(笑)。

ピーター そうそう。いや、それは向こう次第よね。どういうお付き合いでくるのかによって。

―なんか、ドキドキしますが(笑)。えっと、それで阿川さんからの御紹介なんですけどもメッセージをいただいてまして。「ピーターさんは後輩の面倒見がよく、情に厚く、料理はとてつもなく上手で手際もよく、誰もが知る芸能界の父というか、母というか(笑)」とのことです。

ピーター ありがとうございます(笑)。面倒見がいいのはそうなんですけど、寮母さんって呼ばれてますからね。高輪会っていうパーティーをうちでずっとやってるんだけど、みんな飢えた球児たちが「おばさん、腹減ったよ!」って帰ってくるみたいな感じで来てたくさん食べていくんです。

―なんか、熱海の別宅でよく開催されているというお話もネットに…。

ピーター いや、熱海では一回もやったことないです。集まりはもう全部、高輪の家ですから。熱海の家はとっくにないし。そんなとこまで呼んで来るバカいないですよ(苦笑)。

―じゃあ、完璧にウィキペディアなんかも嘘情報なんですね!?

ピーター ウソ! あのへんの見ちゃダメですよ。ネットとかもうグチャグチャ。ウソウソ。露天風呂とかみんなで入ってるとかって…。入るわけないじゃない~、そんなの~。

―あれも全部ガセですか?

ピーター もう全部ガセですよ。あいつら自分たちの頭の中で勝手に想像してね、いちいち反論もしないけど。もう、すごい不愉快です。みんな裸でつき合ってるとかって書いてあるからバカじゃないの? そんなやつ誰もいないよって。

芸能界の風吹かせるやつは大っ嫌い

―酒池肉林のなんかみたいなイメージで(笑)。

ピーター 全然。もうやめてください。うちみたいにこんな健康的なご飯食べるのないですから。だから芸能界の風吹かせるやつも来させませんよ。そういうの大っ嫌いだから。

ほんとにもう、夕方の7時から朝の3時くらいまで、ただただ私がごはんを作って、定食屋の女将(おかみ)のように大皿15枚くらい並べて、みんなの好きなものをビュッフェ形式でね。皿が空いたらまた作り、うどんっていわれたらうどんを作り…。飢えたタレントさんたちの寮母さんってだけの話だから。

―そこのところはここでハッキリさせておかないと!と。

ピーター 別にいいんですよ、どうだって。相手にもしたくないんだけど。ただ、その感覚がね、ちょっと恥ずかしいと思う。ネットで書いてる人達って自分の顔も名前も出さないでしょ? そういうのが世の中で一番嫌いなんですよ。

―恐ろしいですよね、ほんとに。匿名だからってやたらと強気になったり悪口並べたり…。

ピーター ほんとビックリしますよね。だから、そういうことは置いといて、ただただ、私はそうやって人が喜ぶことが好きなんで。だから先輩風吹かせたりとか、売れっ子風吹かせる人は来なくなる、っていうか呼ばなくなるし。

だから、阿川さんは何回も来てますよ。ゴルフも一緒に行って。それこそ、彼女とは一緒にお風呂入りましたよ。葉山の家で。阿川さんと私と、一緒に回ったおぎやはぎの矢作と。なんでこの3人でジャグジーに入ってるんだろうって思ったけど(笑)。

―ええっ!? それはスゴいシチュエーションですね。

ピーター みんなで屋上のジャグジー入ろうよって言って。いいよ、いいよって。私がいるとなんか潤滑剤っていうか、クッションになるっていうかね。そういう性的なものも全くなくなっちゃうみたいで。

―田舎とか、それこそどこにでも昔あった共同浴場の風景みたいな?

ピーター そうそう。ふと、それもみんなの歳考えたらね。そんなおっさん、おばさんならいいんじゃない?っていう感覚でしたね(笑)。

―(笑)。で、ゴルフもご一緒されて。阿川さんの『聞く力』を読むと、ベストスコア出した後にものすごい大叩きをして、イライラしてたのを一緒に回った奥様にものすごくたしなめられたというエピソードもありましたが。

ピーター ゴルフって面白いのよ。麻雀と同じでね、その人の性格もよくわかるし。それから自分との戦いだから、麻雀と違うのは自己反省をしなきゃいけないんですよ、毎回。それでね、キレたほうが負けだっていうのあるじゃないですか。

全くジャンルや年齢の違う人とも回れるスポーツというかゲームだし。あと歩けるしね。ものすごいナイスショットの時は他人でも褒めてあげられるし(笑)。

自分の人生の演出家でありたい

―ゴルフで人間力が養われたりコミュニケーション手段としてももってこいと。

ピーター でも最近はね、初心者が打ちっ放しもいかないでわりとすぐコース出ちゃうとか。昔は絶対許してくれなかったから。結構この頃、安いゴルフ場もごろごろあって、グリーンの上でキャーとか言ってる女のコとかいっぱいいるからね。こら、こらって思うんだけど(苦笑)。

まずマナーの本読ませてからのほうがいいなって思ったりはしますよ。私は青木さんに一緒に回った時に言われたのが「コンペとか出るんだったら相手の数も全部覚えとけよ」って。

―青木功プロですか?

ピーター うん。後は教え方なんていうのは、スライスどうしても直んないですって言ったら、そんなの左向けって(笑)。右にボールいっちゃったら左向けって(笑)。「それだけだよ、おまえ」って言われて「スタンスとか細かいことどんだけ言ったってプロになるわけじゃないんだからな。楽しくやれ」って。確かにそうなんですよね。

―そういう達人クラスのプロの方って細かいこと素人に言わないですよね。ひと言だけワンポイントでこれ!って。

ピーター そうそう。教え下手の人はね、細かいことウワァーって言ってワケわかんないことになるから。そういうのでぐちゃぐちゃにされちゃうんだよね。…なんかゴルフの話ばっかりになっちゃいましたけど、すみません。

―いえいえ、語っていいとも!ですから。そういうのも含めて忌憚(きたん)なくお話いただければと。

ピーター 私はね、なんにでも手を出してつっこむのもダメだって言われましたけど。でも自分の人生なんだから、別に自分の興味あることやったっていいんじゃないのって。だから洋服のデザイン描きたかったら描くし、着物も、ジュエリーも自分がつけたいからね。こういうのあったらいいなって思うモノを経験を踏まえて作るとか。そういうこと考えてたりするの好きですね。

―本当に多芸多才というか。

ピーター ただ、どっちかっていうとね、スタッフサイドの人間だって言われました。裏方指向。だから、自分の人生の演出家として、こうしたいなって思うことをずっと考えてるんですよ。ディナーショーでもコンサートやっても、演出の立場でちゃんと自分や全体を見ることが好きですね。

―人生の演出家ですか。それはやはり上方舞の家元の生まれで、人間国宝までになられたお父様の影響などもやはり大きい?

ピーター そうなんですよね。でも逆に、線路引かれちゃうとまずそこに乗りたくないっていう、ちょっと天の邪鬼(あまのじゃく)なところがあって。特に父親の元へ走って行くだけっていうのは私はすごく嫌だったの。自分の人生ないなぁ~って。ましてや途中で離婚したりとか揉め事があって、御本人のイイ話を聞いてないから(笑)。

寂しがりやだけど、ひとり上手

―常に幼少の頃からそういう出自に囚(とら)われ、逃れようと…。

ピーター もう全てがそうです。この人の元で舞は習いたいけど、跡は継ぎたくないっていう。もちろん勉強したかったし、舞は今も好きですけど、あの人が作ったものをそのまま引き継いで何かやるってことはイヤだった。名門の学校(鹿児島ラ・サール)に頑張って入れたのに、きちっきちに東大いくための線路引かれちゃって、そんなのも勘弁してって。逃げたくなっちゃうんですよね。

だから、今もそうですよ。で、どんどん断捨離して、65歳くらいからまたなんか別のことしたいなっていろんなこと考えてるんですけど。なんか12年周期でそういうのくるんです、引っ越したりとか。…16で家出したでしょ、で、28で父親と一緒に住んでた家から出てマンション借りて…40歳で熱海でしょ。で、52で葉山の家建てたから…次、64なの。来年なんですよね。今もぞもぞしてるってことはなんかしたいんですよ。

―なるほど。次の脱皮というか羽化というか。

ピーター そうそう。だから、他のいらないもの断捨離してるんだろうなって。突然、どっかへ移住したくなる人なんで。ちょっとボヘミアンなんだけど、でもそんな遊牧民ではないです。ゆる~く囲ってもらうのはいいんだけど、タイトに抱きしめないでって(笑)。それでね、ひとりか大勢がいいんですよ。ふたりが一番苦手。デートしたりするのも。

―えっ、それは意外な…! 失礼ながら、そちらも手練(てだ)れなのかと(笑)。

ピーター いえいえ、何を話していいのかわかんないし(笑)。すっごく嫌いなの。誰かデートしよってなっても他の友達呼んじゃうんですよ。知ってる人のお店に行くとかね。三角なり、五角になってほしいんですね。ふたりでこうってなっちゃうと、ちょっとどうしたらいいかわかんない!

―なんですか、そのシャイっぷりは?(笑)

ピーター ほんと、パニクっちゃって(笑)。こういう取材でもカメラマンがいたりとか編集者がいたりとかしてくれると全然平気なんだけど。これがふたりっきりで個室で喋るってなると、たぶんイヤ。苦手ですね。無理だと思う~(笑)。

―あははは(笑)。でもボヘミアンでも遊牧民でも共同体があって依存し合う場所はやっぱり必要なんですね。

ピーター う~ん。でも私、寂しがりやだけど、ひとり上手なんですよね。ひとり好きだし。葉山でもずっとほんとひとりでいて、2日間、3日間とか声出さないで、声出んのかな?って思う時もあるんだけど。電話も出ない時があるっていうか、別にかかってこないし。ほとんどLINEとかで用は足りるじゃないですか。そうすると、「あ、声出してない」って気づくことがあって。お風呂場ですごい声出したりするんですけどね(笑)。

人に迷惑をかけないように生きたい

―それ、通りかかったらアブない人ですけど。隠しカメラで見てみたい気が…(笑)。

ピーター これからそういう人いっぱい増えると思いますよ、たぶん(笑)。でも、ひとりっきりだと自分で喋る人もいるわけじゃないですか? 朝起きて「あ~起きようかな~」とか「ごはん作ろうかな~」とか。私、ずっーと黙ってますから。本読んだり、TV観たりして。TVにツッコむ人とかもいるでしょ? そういうこともしたことがないんですよ。

そう、だから犬を飼えば喋るよって言われたんだけど、そうするとほとんど人との付き合いなくなっちゃうんじゃないかなって。犬飼ったら終わりだよとも言われたのね。犬との夫婦関係っていうのもなんだけど、かわいい犬とずーっと喋っちゃって、ねえ?

だからそうならないようにね、ひとりでいいんだ!って。犬飼っても、いなくなること考えると誰かに預けなきゃいけないし。かわいそうじゃない? そういう意味で、どんどん人に迷惑をかけないようにして生きていきたいと思ってるの。

ブログのタイトルも「ひとり上手」ですし(笑)。実は、僕がひとりっ子で、ピーさんはお姉さんがいらっしゃるそうですが、すごく近い感じが…。

ピーター ひとりっ子みたいなもんですよ。だって結局、父と母が離婚してるし、中学の時は寮に最初入ったりとか。で、16で家出してるから…もう、核家族じゃないですけど、母は料理屋やってたし、だからあんまり家族団らんで、おはようっていって朝ご飯一緒にとかっていうのがないんですね、今まで。

―逆にそれで今、大勢で集まったり、みんなの寮母役になって、わいわいやる場をつくって?

ピーター でも長くいるのは苦手ですね。お正月に挨拶行った後でも、ふわっとどっか行きたいタイプ。

―それも似てるかもです。僕も後輩を呼んだり、面倒見がいいほうとは言われるんですけど。大勢でいると、今度はひとりの時間が欲しくなって。

ピーター 飽きるし、ほっとしたいよね。だから私、パチンコ屋さん好きなの。あんなに大っきい音してるのに、その空間ですごいひとりになれるんですよ。打ってると、フッと音がなくなって面白いなって。こんなにガヤガヤうるさいところで、みんな孤独にひとりで打ってるのも面白いですよね。

―パチンコとはまた意外な。別にギャンブル性とかでもなく?

ピーター うん。ひとりで考え事したい時とか、その世界が逆に集中できたりするんですよね。家だと私、台本読んだりしても全然入っていかないのは、やることいっぱいあるでしょ、ひとり暮らしって。ほら、例えば掃除しなきゃいけないとか、ご飯作ろうとか集中しないんです。なんにも入ってこなくて、余計なことが頭の中で渦巻いてるんですよ。

これでまた他人と同棲なんかかしちゃったら全然仕事になんないよね。その人のことやってあげようと、お世話好きだから…。だから旅行も基本ひとりなんです。隣に誰かいたら、なんか食べる?とか、すぐやってあげたくなっちゃう体質なんで。ひとりのほうが楽。

―と、今回もお話が盛り上がってまだお時間いただけるそうなので、次週の後編に突入させていただきます!

●この後編は次週、6月14日(日)12時に配信予定!

●ピーター(池畑慎之介)1952年生まれ、大阪府出身。俳優、歌手、タレントとして活動。1969年ATG映画「薔薇の葬列」でデビュー。同年「夜と朝のあいだに」で日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞。1985年公開の黒澤明監督作品「乱」に出演以後、池畑慎之介(本名)の名前で役者としても地位を確立する。以来ふたつの名前を使い分け、舞台、TV、映画、ディナーショー、タレントと特異な才能を各方面で発揮し活躍を続ける。デビュー46年目の今年1月、TBS木曜ドラマ劇場「美しき罠~残花繚乱~」では書道家役を演じた

(撮影/塔下智士)