他とはひと味違うフェスを仕掛ける主催者たちに今ドキなフェスの魅力、そしてかける想いを語ってもらった!

夏が近付き、全国各地で音楽フェスが開催されるこの時期。数年前までは、“フェス”と言えば、ロックバンド主体のものが多かったが、最近はアイドルに芸人、プロレスラーまでもが参加する個性的なフェスが登場!

そこで、他とはひと味違うフェスを仕掛ける主催者たちを直撃。今ドキなフェスの魅力、そしてかける想いを語ってもらった!

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まず、ひとり目にご登場いただくのは、2012年から毎年開催されている「YATSUI FESTIVAL!」(通称「やついフェス」)の主催者、エレキコミックのやついいちろうん。

芸人、DJとして活躍するやついさん主催の「やついフェス」は、渋谷の10ものライヴハウスを舞台にあらゆるジャンルのエンターテイナーが集う大規模フェスだ。4回目となる今年は6月20日(土)、21日(日)の初の2days開催ということで出演者も過去最大規模の260組!

お笑いもロックもアイドルも楽しめるフェスとして、過去3公演は全てチケット完売と大好評。今年はやついさんプロデュースの“アイドル”が発表されるとのウワサが…。

やつい そうですね。本当にマジでイカれた3人組を仕込んでいる最中です。

―イカれた3人組!? それは気になる!

やつい じゃあ、ちょっとだけお話すると、メンバーは歌舞伎の格好をしてロックをやってるカブキロックスのボーカル・氏神一番さんと芸人のコウメ大夫さん、『コロコロコミック』でマンガを描いてる漫画家のピョコタン先生っていう、おじさん3人を組ませようと思ってるんですよ。

―氏神さんとコウメ大夫さんって個性派すぎなアブない感じ…顔が白塗りだし(笑)。ピョコタン先生もニコ生で出版社の不満をぶちまけるという“やらかし”をして話題に。そんな3人が“アイドル”?

やつい いや、男3人組といえば、少年隊、シブがき隊とアイドルじゃないですか? だから、この3人もアイドルで(笑)。

●やついいちろう 1974年生まれ。エレキコミックのボケ担当。DJとしても活躍。アルバム『トロピカルアワー!!』好評発売中

往年のアイドルも登場!!

■「YATSUI FESTIVAL! 2015」 6月20日、21日にTSUTAYA O-EASTなど渋谷10会場で開催。出演者等、最新情報は公式サイトをチェック! ※チケットは予定枚数を終了しているが、追加発売の可能性もあるのでHPを参照 【問合せ先】TSUTAYA O-EAST TEL:03-5458-4681

―いやいや、アイドルって言えばいいってもんじゃないでしょ!?(笑) でも、よりによって、なぜその3人に?

やつい 全員カッコイイわけでもないし、若くもないし、挙動不審だし。何話してるか意味わからない。「何やらせたら面白いだろう?」って考えた時にその3人とは真逆の“アイドル”が面白いと思って。まあ、僕が悪ノリで勝手に組ませたんで、元々全然交流もないし、今は打ち合せしてても全く混じり合わない感じです(笑)。でも、こんなアイドルは誰も見たことないと思うんでメディアは放っておかないんじゃないですかね(笑)。

―確かに、異色すぎではあります! 一方で、松本伊代さん、早見優さんという往年のアイドルも登場するとか。

やつい いろんなフェスがありますけど、往年のアイドルが出てるフェスなんてないですからね。それに、僕はあの当時のアイドルの曲が好きなんですよ。特定の誰かにハマったことはあんまりないんですけど、『はいからさんが通る』の南野陽子さんが好きとか、浅香唯さんの『C-girl』がよかったとか、『なんてったってアイドル』のキョンキョンは可愛かったな~とか。瞬間瞬間で好きなんです。そのタイミングのはじけてる可愛さが好きっていう。

―なるほど。“瞬間”というと、フェスも“瞬間の集合体”ですよね。

やつい その日、その瞬間にしか見れないことが起きますからね。実は今回、やついフェスで歌合戦イベントをやろうと思ってるんです。いとうせいこうさんとか、蛭子能収さんとかみんながごちゃ混ぜになってる感じをやろうかなって。フェスに出ていらっしゃる方達にパフォーマンスをやってもらって、そこでしかできないことをやりたいと。それこそフェスならではというか。

ちなみに、歌合戦のトリには“ラスボス”と言われる大御所演歌歌手の方も出演予定ですよ。紅白出場経験のある、いつもとんでもない衣装の…。

―えっ! まさか、あの小林幸子さん…!?

やつい そうなんです。今回も含め、毎回いろいろなジャンルの人に出ていただいてますけど、あえてバラバラにしてるわけじゃなくて、僕の“好き”なものを集めた結果、ジャンルレスになってるだけなんです。

そもそも、人間の好みってジャンルレスじゃないですか? お笑いが好きな人も音楽は聴くし。そういう見たいもの、聴きたいものを全部集めて10会場で同時にライヴをやってもらう。お客さんとしては「あのバンドが見たかったのにもう埋まってる…」なんてこともあるかもしれないけど、別の会場で新しく好きになれるものが見つかるかもしれないし。

そういう“見つける楽しさ”も味わってもらえたらなって。まあ、「やついフェス」は「この人がフェスに出てるのなんて見たことない!」って思うような出演者を集めてるので組み合わせの面白さも楽しんでもらいたいですよね。

―あらゆる“エンタメ”が詰まった「やついフェス」。グッと心が動かされる瞬間が無数にあるなんて、かなり贅沢!

青森県のどでかいスキー場を舞台“夏の魔物”

ふたり目は、青森県のどでかいスキー場を舞台に「AOMORI ROCK FESTIVAL」、通称“夏の魔物”を主催する成田大致さん。

2006年、18歳のロック少年だった成田さんが立ち上げた「夏の魔物」は、今年で記念すべき10回目を迎える。2011年の6回目までは青森の劇場を使ったロックバンド主体のフェスだったが、2012年からはスキー場にステージとプロレスリングを併設させ、アイドルやプロレスラーまでが激しいパフォーマンスを繰り広げるという、とんでもないフェスに発展!

成田 実は最初からこういうことをやりたかったんです。ただ、昔はワンステージだったし、時代的にもまだ早いかなと…。2012年になってからは、もっとめちゃくちゃなことをしても大丈夫だなって思ったんですよ。やついさんが「やついフェス」を始めたのも同じ頃だったと思います。

―この時期から、でんぱ組.inc、BiS、アリス十番などアイドルを呼び始めてますよね。これには何か意味があったんですか?

成田 ジャンルの垣根を越えた夢のようなラインナップを一同に集める場を作りたい、と単純に思ってその年に振り切ったんですよ。格闘技のPRIDEのような“熱気”がある空間を作りたくて。

―そう思うようになったきっかけが何か…?

成田 やっぱり、ももクロですかね。ライヴで煽りVを流したり、舞台演出を入れたり、異ジャンルなんですけどPRIDEとアガる感覚が似てると思ったんですよ。楽曲もエッジが効いてるし、高揚感があって。ちょうど、ロックバンドに対して物足りなさを感じてた時だったんで「今、“熱”があるのはアイドルだ」って。

●成田大致 1986年生まれ。2006年、19歳の時に「AOMORI ROCK FESTIVAL~夏の魔物~」を主催し、注目を集める。2013年からはオーディションでメンバーを集めたエンタメ集団「夏の魔物」を発足

エンタメ界の天下一武道会!

■「AOMORI ROCK FESTIVAL’15~夏の魔物~」 9月12日に青森県東津軽郡平内町夜越山スキー場にて開催。出演者等、最新情報は公式サイトをチェック!

―ロック、プロレス、アイドル…と成田さんをアツくさせるものを集めたのが「夏の魔物」なんですね。

成田 俺のフェスは各ジャンルの面白い人達を集めて、前田日明さんのように「ごちゃごちゃ言わんと誰が一番面白いか、本気でライヴして決めたらええんや!」ってノリで。セットリストも新曲をたくさん入れてくるようなプロモーション用のものじゃなくて、代表曲をちゃんと入れて出し惜しみしないものにしてほしいと願ってますね。

変に他のジャンルに合わせるんじゃなくて、自分のジャンルを背負って必殺技を出しまくって“赤ゲージ”ギリギリになるまで戦ってくれ!って思ってます。

―まさに、エンタメ界の天下一武道会! これまでの「夏の魔物」でその想いが実現できたことはあるんですか?

成田 まだ完全に実現できたことはないんですけど、理想に近いものができたのは2013年ですね。ジャンル同士が本気でぶつかり合うのが見たくて、ロックバンドのTOMOVSKY、アイドルのBiS、プロレスの大仁田厚さんをトリプルヘッドライナーにしたんですよ。あの年は本当にすごかったっす。

―では、これからも成田さんは理想を追い求める、と。ちなみに、ぶっちゃけフェスの収益はどうなんですか?

成田 毎回赤字ですよ(笑)。もう、10年間ずっと血を垂れ流しながらやってる感じです。毎回ブッキングも自分ひとりでやっているし、楽しいけど大変なことばっかです。

―それでも、やり続ける理由とは?

成田 やっぱり、まだ実現してない“カード”があるからですかね。本番見てると、「もっとこうしたい」っていう欲がドンドン出てくるんですよ。ロックとプロレスとアイドルがクロスオーバーして、想像を超える“夢の共演”が見てみたいんです!

―今年の「夏の魔物」は9月12日(土)開催。各界の“魔物”が見たいヤツは、青森に集うべし!

電撃ネットワークのギュウゾウさんが立ち上げたフェス

そして最後は、パフォーマンス集団・電撃ネットワークのギュウゾウさんだ。過激なパフォーマンスで知られるグループの中でも、サソリを口に入れたり、布団圧縮袋の中で自ら圧縮されちゃったりと、体を張った芸で魅せる彼が今年2月、アイドルフェス「ギュウ農フェス」を立ち上げた!

―まずは経緯から教えてください!

ギュウゾウ 僕は栃木県出身なので、栃木を盛り上げる“町おこし”的な何かをやりたかったんですよ。それで、これまで栃木で開催されたイベントを調べたら1千人規模のものはほとんどロックやヒップホップ、レゲエのイベントだったんです。

僕はそういうジャンルが好きな人って、学生時代に“声が大きかった”人だと思うの。自分の意見をハッキリ言える人達の場所なんじゃないかなと…。でも、フェスをやるなら“声が小さい人も集まれる場所”にしなきゃいけないって。そういう意味で“アイドル”のフェスが一番良いと思ったんです。僕がアイドルのライヴに行く中で、すごく「間口が広い」って感じてたので。

―良い意味で「足を運ぶのにハードルが低い」と?

ギュウゾウ そうですね。栃木みたいな田舎のイベントは子供や年寄りもひょっこりのぞきにくるから(笑)。それにアイドルは応援しながら自分自身も充実させられるんですよね。僕は、お客さん側からの発信っていう意味でオタ芸はすごく良い文化だと思ってるの。オタ芸まで行かなくても、サイリウム振るのもお客さんのパフォーマンスだしね。アイドルのライヴはお客さんが発散できる場所なんですよ。

―2月に渋谷のライヴハウスで開催された初回の「ギュウ農フェス」は満員札止め! でも場所は栃木じゃなかったんですね?

ギュウゾウ フェス主催者としてはまだまだ力不足のところもあるから、力をつける意味で東京でやろうって決断したんです。でも場所は渋谷だけど、栃木の名物のレモン牛乳を配ったり、宇都宮の餃子のポスターを貼りまくったり、栃木の企業にスポンサーについてもらったり…会場内では栃木を推しまくりましたよ。

ちなみに、電撃ネットワークのライヴのスポンサーはTENGAさんだったけど、さすがに栃木とは遠いのでご遠慮いたしました(笑)。

●ギュウゾウ 1964年生まれ。過激パフォーマンス集団「電撃ネットワーク」のメンバー。芸能活動の傍ら、栃木県の農場「ギュウゾウ農場」の経営も手掛ける

農業もライヴもなんでもありの“ごった煮感”

■ギュウ農フェスVOL.2、VOL.3 6月14日、6月28日に羽田空港国際線ターミナル内TIAT SKYホールにて開催。出演者等、最新情報は公式サイトをチェック!

―確かに、レモン牛乳とTENGAのポスターが並んでたらヤバい(笑)。では、過激なパフォーマーで知られるギュウゾウさんのフェスですから、出演者に「こんなパフォーマンスを!」と注文しちゃったりも?

ギュウゾウ 過激なネタをやってくれるアイドルさんがいるといいなぁ(笑)。基本、アイドルさんには好きにやってくださいと伝えています。イベントの将来的な構想としてはいろいろあって、僕自身、栃木県内で「ギュウゾウ農場」という会員制農場を主宰しているので、そこの野菜を会場で売ったり、宇都宮の餃子の屋台を出したり。栃木特有のものをもっと押し出していきたいですね。あと、稲刈り後の田んぼにステージ組んでフェスをやりたい。新米のおにぎりを食べながら(笑)。

「ギュウ農フェス」って名前を付けてるぐらいなので、農業もライヴもなんでもありの“ごった煮感”を出していきたいです。まあ、まだ走り出したばっかだから、どうなるかわからないけどね(笑)。

―そんなギュウ農フェスの第2回、第3回が6月14日(日)、28日(日)と間近に迫ってます! その見どころは…?

ギュウゾウ 今回も僕が大好きな今キテるアイドルをお呼びしてます。特に6月28日の会では、元ホワイトベリーの前田由紀ちゃんとかGO?BANG’Sにも出てもらうんですよ。2組とも誰もが知ってる曲を持つ実力派女性アーティスト。そのステージをヲタクのお客さんにはもちろん、若いアイドルのコ達に見せたい。

このふたりは、若いうちに大活躍して、年を重ね、今も素晴らしくお客さんを魅了してる。アイドルさんたちにも、こういう存在になってほしいじゃないですか。やっぱり、若いアイドルのコって多かれ少なかれ将来の不安を抱えてると思うんです。そんなコ達に、このふたりのステージを見て何かを感じてほしい。

―確かに、アイドルで後々まで生き残るのって相当大変ですもんね。

ギュウゾウ 僕の経験でも、超一流のアーティストと仕事をして「こんなすごいのか…」とか「俺はこの世界でやっていけるのか…」と悩んだこともあった。でも、夢を大きく描いて、現実をしっかり把握しないといけないからね。その中で「この人達には勝てないけど、俺はこういうところで勝負できるぞ」って考えられるようになったし。いろんなアーティストが集まるフェスだからこそ出演者が何かを得る場にしたいんです。当日は、リハーサルや楽屋でも出演者の皆さんに楽しんでほしいです。

―ギュウ農フェスには、ギュウゾウさんの温かさが流れてる気がします!

ギュウゾウ 僕は、面白いことに対して躊躇(ちゅうちょ)しないタイプなので、自分が一番楽しんでますもん(笑)。当日は、ステージ上にサソリ持って現れるかもしれないですよ~(笑)。ちなみに、ウチのフェスはおやつが出るってのもウリです。今回は栃木県のソウルフード「岩下の新生姜」! 栃木とアイドルに愛情のある方は大歓迎です!

―栃木とアイドルへの愛が詰まった「ギュウ農フェス」。レモン牛乳片手に、アイドルの姿を目に焼き付けろ!

(取材・文・撮影/岡本温子(short cut) 撮影・まみやけい)

●やついいちろう1974年生まれ。エレキコミックのボケ担当。DJとしても活躍。アルバム『トロピカルアワー!!』好評発売中。■「YATSUI FESTIVAL! 2015」6月20日、21日に、TSUTAYA O-EASTなど渋谷10会場で開催。出演者等、最新情報は公式サイトをチェック! ※チケットは予定枚数を終了しているが、追加発売の可能性もあるのでHPを参照。【問合せ先】TSUTAYA O-EAST TEL:03-5458-4681

●成田大致1986年生まれ。2006年、19歳の時に「AOMORI ROCK FESTIVAL~夏の魔物~」を主催し、注目を集める。2013年からはオーディションでメンバーを集めたエンタメ集団「夏の魔物」を発足。■「AOMORI ROCK FESTIVAL’15~夏の魔物~」9月12日に、青森県東津軽郡平内町夜越山スキー場にて開催。出演者等、最新情報は公式サイトをチェック!

●ギュウゾウ1964年生まれ。過激パフォーマンス集団「電撃ネットワーク」のメンバー。芸能活動の傍ら、栃木県の農場「ギュウゾウ農場」の経営も手掛ける。■ギュウ農フェスVOL.2、VOL.36月14日、6月28日に羽田空港国際線ターミナル内TIAT SKYホールにて開催。出演者等、最新情報は公式サイトをチェック!