桜島や箱根山は相変わらず活発な火山活動を見せる中、注目すべきは箱根山周辺の群発地震だ

5月29日に鹿児島県・口永良部島が大噴火した。そして翌30日には小笠原西方沖でマグニチュード8.1、最大震度5強の地震が発生。

桜島や箱根山は相変わらず活発な火山活動を見せるなど日本列島が揺れまくっている。この影響で特に注目すべきは、箱根山周辺の群発地震だ。

4月末から始まった箱根群発地震は観測史上に例のない頻度で継続し、総計5千回を超えようとしている。その震源は西方向へ広がりつつあり、箱根外輪山の西側でも大規模な山崩れの危険性が高まっている――そう、火山研究者で小説家の石黒耀(あきら)氏は警告する。

さらに水蒸気暴噴が強まるばかりの大涌谷について、口永良部島噴火の前日に箱根各地を取材したジャーナリストの有賀訓(さとし)氏によると、

「約1ヵ月前と比べて大涌谷の噴気量は数十倍あるいは100倍以上に上昇しています。東側約1.5kmの森林で2年前から始まった蒸気と火山性ガスの噴出も確実に強まっていて、今や立ち枯れた樹木の本数は数えきれません。

もうひとつ注意を向けるべきは“芦ノ湖の減水”が止まらないことです。5月半ばには台風6号による降雨でいったん湖水量は増えましたが、日々の水位変化を調べると、4月末から現在にかけての減水幅は約30cmになります。

そこで芦ノ湖の水位調整を担当する神奈川県西土木事務所にも問い合わせたのですが、今年に入って2ヵ所の水門からの人工放水はしていないことがわかりました」

つまり、芦ノ湖の増・減水は基本的に天候任せだが、箱根火山活動の強まりと歩調を合わせて起きており、噴気が強まって1ヵ月で約30cm、1日約1cmもの水位低下は過去に例のない異常現象なのだ。

ちなみに芦ノ湖の面積は約700万立法メートルなので、1cmの減水量は7万トンに当たる。

太平洋の底で何かが起こっている

「この失われた大量の湖水はどこへ消えたのか? 箱根カルデラ内の地質構造では地下水と温泉水は西から東へ流れるので、芦ノ湖の水はマグマで巨大天然ボイラーと化した東側の大涌谷へ移動して、轟音を上げて蒸気化し続けているのではないでしょうか」(前出・有賀氏)

箱根火山に限らず、日本列島の火山活動の強まりは4年前の「東日本大震災」を境に目立ってきた。火山噴火の前兆となるマグマや高温地下水の大規模流動を示す「低周波地震」、山体膨張などの気になる現象は北海道・樽前山、秋田駒ヶ岳、岩手山、蔵王山、吾妻山、草津白根山、浅間山、富士山、大島三原山、焼岳など実に多くの火山で同時進行している。

そして、昨年9月には御嶽山で実際に水蒸気爆発が起きて61人が犠牲になった。また、2013年11月に小笠原諸島で始まった西之島新島のストロンボリ式噴火も一向に衰えを見せず、最近では西側約10kmの海底でも新しい噴火が始まったようだ。

さらにいえば、この1、2ヵ月間に火山活動が強まったのは日本列島だけではない。

太平洋地域全体に視線を向けると、南米チリのカルブコ火山(4月22日)、エクアドル領ガラパゴス諸島のウォルフ火山(5月25日)でも噴煙が1万メートルに達する巨大噴火が起きた。また近年、アリューシャン列島とアラスカでも大型活火山の活動が高まり続けている。

他にも、今年に入って北太平洋ハワイ島キラウェア火山のマグマ噴出量が急増した。そして3月30日と5月5日にはパプアニューギニアでマグニチュード7.6と7.5の地震が起き、アリューシャン列島では火山噴火だけでなく大地震の発生回数も明らかに増加傾向にあるのだ。

太平洋の底で何かが起こっているのは間違いない。しかし、それが何であるのか…。その結論は不明なまま、不穏な火山活動は続いている。