もはや国民病ともいえる水虫。発症すれば、指の股はただれ、水ぶくれができ、そして猛烈なかゆみとニオイに襲われる……。

しかし、こうした症状があるからといって、必ずしも水虫とは限らないのだという。

『水虫は1ヶ月で治せる!』(現代書林)の著者で、水虫治療のプロフェッショナル・仲弥(なかわたる)先生が説明する。

「実は、症状も見た目も水虫そっくりな『ニセ水虫』と呼べる疾患があるんです」

それを理解するためには、水虫のメカニズムを知る必要がある。先生が続ける。

「水虫は『白癬(はくせん)菌』という真菌が皮膚の内部に侵入して繁殖することで起こります。白癬菌はカビの一種なので、温かく湿ったところが大好き。だから汗をかきやすい人は体質的にかかりやすい。

水虫は、大きく4種類に分かれます。まず足の指の股に発生し、皮が剥がれる『趾間(しかん)型』。そして、小さい水ぶくれが足指の付け根や土踏まずにできる『小水疱(しょうすいほう)型』。どちらも痒みやにおいを伴う“急性水虫”です。

そして、カカト周辺の皮が厚く硬くなる『角質増殖型』と、爪が濁った黄色もしくは白色に変色する『爪水虫』は“慢性水虫”とされ、こちらはにおいも痒みもありません」

ここで問題になるのがニセ水虫だ。

「実は、水虫と思って皮膚科に来る人の多くが『異汗性(いかんせい)湿疹』を水虫と勘違いしているんですよ。

異汗性湿疹は、水虫と同じく汗をかきやすい人に多く見られる疾患です。足指の間や足裏に1、2mm程度の小さな水ぶくれができ、強い痒みが発生、かきむしると水ぶくれが破れ、その部分がただれる。その後、乾燥によって皮膚がボロボロになります。見た目や痒みとにおいを伴うところが趾間型の水虫とよく似ていますが、菌が原因ではないので、ほかの人にうつることはありません」

医者でも判断できないものが?

他にも“ニセ爪水虫”ともいうべき、こんなものが…。

「『爪甲剥離(そうこうはくり)症』といって、加齢によって爪に十分な栄養が行き届かなくなったり、運動中のアクシデントなどによって爪が皮膚から剥がれてしまう症状があり、こちらも見た目が爪水虫そっくりなんです」

では、水虫とニセ水虫はどうやって見分ければいいのか?

「見た目では判断できません。私でも無理。患部の角質を取って、顕微鏡で白癬菌がいるかどうか調べる必要があります。なぜ私が『ニセ水虫』の話をしているかというと、水虫の“正体”を見誤ると非常に怖いんですよ。

例えば、異汗性湿疹なのに水虫だと勘違いして、水虫用の薬を患部に塗ると傷口がグジョグジョになり、症状が悪化。異汗性湿疹には炎症を抑える薬であるステロイドを処方しなければいけません。逆に、医者に異汗性湿疹と診断されたけど、実は水虫だったというパターンもあります。水虫にステロイドを塗ると免疫力が落ち、菌が増える。つまり、水虫を活性化させてしまうわけです」

つまり、症状の正確な把握をしないと、治療が悪化の原因になってしまうのだ。先生も説明するように、これを素人が判断するのは無理。水虫のような症状が出たら、市販薬で治療を始めずに、早めに病院に行って飲み薬を服用するなど正しい処方をおすすめする。

(取材・文/頓所直人)