サッカー界を揺るがしているFIFA汚職事件。6月2日のブラッター会長による辞意表明で騒動は峠を越したかに見えたが、各国の司法当局やマスコミは追及の手を緩めておらず、新たな疑惑が次々と表面化している。

そこへビッグニュース。2002年の日韓W杯に関連して、日本も不明朗な金を支払っていたというのだ。

このニュースを報じたのはスペインの大手スポーツ紙『AS(アス)』。普段はレアル・マドリード関連の記事占有率が高く、スポーツ紙としては同国2番目の発行部数を誇る。

同紙によると、日本サッカー協会の長沼健・元会長(故人)が00年、日韓W杯招致における南米票取りまとめへの謝礼として南米サッカー連盟に150万ドル(約1億8千万円)を支払ったという。

だが、この報道に対して日本サッカー協会はすぐさま内部調査を行ない、「あり得ない」「送金記録もない」と完全否定。やはり、誤報か?

今回、『AS』紙は、南米サッカー連盟に15年間勤めたパラグアイ人X氏の独占インタビューを3日間にわたって掲載した。スペイン在住のジャーナリスト、山本孔一氏がこう語る。

「X氏のインタビューは、南米サッカー界の幹部たちがいかにして金銭を個人の懐に入れてきたか、その手口を詳しく述べたもの。その一例として日本の件が取り上げられたのですが、初日に掲載された記事の一段落だけという小さい扱いでした」

疑問が残るX氏の証言

とはいえ、X氏はその“証拠”を『AS』紙に提出し、公開もされている。日本から振り込まれた金を当時の南米サッカー連盟会長でFIFAの理事も務めたニコラス・レオス氏(今回の一連のFIFA汚職事件でパラグアイ当局が逮捕済み)ら3人の口座に送るように指示した、銀行宛ての重要書類である。

「X氏のインタビューはウェブでも公開されており、彼が『ナガヌマから送金があった』と語っているのは確かです。ただ、“証拠”の書類には長沼さんや日本サッカー協会の名前はなく、『東京-日本』と記されているだけ。誰が送金したのかはわからない。しかも、日韓W杯の開催決定は1996年で4年も前の話。謝礼にしては遅すぎるなど大きな疑問が残ります。X氏が勘違いをしている可能性も考えられます」(山本氏)

すべては、X氏の証言の信憑(しんぴょう)性次第ということか。

ちなみに、このX氏、南米サッカー連盟とケンカ別れした後、ナンバーのない車に追跡されたり、自宅の外壁に実弾を撃ち込まれたりするなどの嫌がらせを受け、家族とスペインに脱出したという…。

なお、X氏の母国パラグアイの大手紙『ABC』電子版は、日本からの“送金”について別の見方をしている。1999年にパラグアイで開催された南米選手権に日本代表が南北アメリカ以外のチームとして史上初めて招待されているのだが、その金は一種の大会参加料で、日本のスポンサーや代理店が関係しているのではないかというのだ。

真相は闇の中だが、今のサッカー界、どんなスキャンダルが飛び出しても不思議じゃないのは確かだ。