ガンプラが好きすぎて自らがガンプラになってしまったラーメンズの片桐さん

1980年のガンプラブームでその魅力にドハマりして以来、これまで実にMG(マスターグレード)シリーズを中心に300体以上ものガンプラを制作してきたという生粋(きっすい)のガンプラモデラー、片桐仁さん。そんな彼が語る、ガンプラのお楽しみ方とは?

片桐 そうですか、ガンプラ35周年ですか。ということは、僕は人生の大半をガンプラとともに歩んできたってことですね。最近だと今年4月発売のジ・オリジン版「HG 1/144 シャア専用ザクII」を買いましたけど、やっぱり僕はMGシリーズへの愛情というか、執着が余りあるんですよ。MGのガンダムは、もちろんVer.3.0まで全部作ってますからね。

―「MG 1/100 RX-78-2ガンダム」が発売されたのが1995年7月。ちょうど20年前です。

片桐 95年はMG革命でしたね。当時の僕は大学生でしたけど、そりゃあもう衝撃でしたよ。インナーフレームまであるって何事かと。だって外装パーツをつけた完成品では、その内部の構造なんてほとんど見えやしないんですから。

バンダイさんは見えないところにとてつもない情熱を費やしてるんですよ。おかげでパーツの数もめちゃくちゃ増えましたし、制作にかかる時間も何倍にも延びましたからね。

―それまでのガンプラは“子供が楽しめるおもちゃ”感覚でしたけど、MGシリーズは間違いなく大人仕様!

片桐 絶対にそう。いや、大人だってよっぽど好きじゃなかったら投げ出しますよ。特にMGのザクIIの動力パイプ部分、あれは面倒くさかった。ちっちゃな輪っかをひとつひとつ通していくっていうね。

だからMGシリーズはある種の踏み絵になったんじゃないかな。生粋のガンプラモデラーになるかならないかは、MGシリーズを楽しんで作れるかどうかが分かれ目だと思いますよ。

―そうかもしれません。片桐さんは宇宙世紀もの(初代ガンダムと世界観を同じくするシリーズ)以外のガンダム作品はどうですか?

片桐 もちろん手を出してます(笑)。例えば『機動戦士ガンダム00(ダブルオー)』は、三つ巴(どもえ)の勢力それぞれに別のメカニカルデザイナーを立てただけあって、各勢力のモビルスーツに個性があってすごくよかった。主役機の「MG 1/100 GN-001 ガンダムエクシア」は劇中に登場した半壊してマントをつけたバージョンも再現できたんで、組み上げてからウェザリング(汚し塗装)しましたよ。

バンダイさんのオ●ニーとしか思えない(笑)

片桐さんのオリジナル愛機。ネガポジ反転でトリコロールカラーになるネガティブガンダム(左)、片桐フェイス搭載のジンダム(右)

―MGシリーズといえば、バンダイのいきすぎたこだわりもたびたび話題に。

片桐 MGを評する時によくいわれる「リアルに再現しました!」とかいう表現自体が、そもそもおかしいんですけどね(笑)。だって現実には実在しないモビルスーツやらテクノロジーに対して、リアルにって…。

―5月30日に発売された「MG 1/100 百式 Ver.2.0」もなかなかのこだわりようで話題でした。

片桐 あ~、確かに。「百式が可変MSとして開発されていたという可変機構の名残を、内部フレームの変形機構で表現」ってアレでしょ。アニメでは描かれてなかった裏設定に準じて、膝が変形するっぽくカクってなるっていう。…それいる!? そのこだわり、いる!?って心の中で叫びました。いや~、もうバンダイイズムには感服ですわ。

―ちなみに最近は、そんなMGシリーズの技術を1/144スケールに落とし込んだR G(リアルグレード)シリーズも人気です!

片桐 RGはヤバいですよ~。1/100サイズのMGのようなインナーフレームを1/144サイズで組み込むなんて、もうバンダイさんの技術自慢でしかないでしょ(笑)。作業をする人間の指に対してパーツが細かい細かい。やりすぎですよ、もうバンダイさんのオ●ニーとしか思えないですよ、RGは(笑)。

―MGやRGシリーズは正直、小学生ぐらいの子供が作るには難度が高いですよね。

片桐 けど、その分、HG(ハイグレード)シリーズはすごく作りやすくなってるから子供もハマりやすいと思います。ニッパー一本あればそこそこのものが作れるし、素組みなら何時間か集中してやればできちゃうし。

うちの息子は今、小5なんですけど、HGはガツガツ作ってますよ。中学生になったらMGにも挑戦するんじゃないかな。うちには、買ったけど作ってないMGが結構箱のまま置いてあるんで。あ、でも「MG 1/100 MS-06FS ガルマ・ザビ専用 ザクII」あたりはいつか自分で作りたいから、息子には手をつけないようにって言っとかなきゃな。

ビルドファイターズは推奨派

―最近はガンプラを題材にしたアニメ『ガンダムビルドファイターズ』シリーズが子供を中心に人気ですが、片桐さん的にどうですか?

片桐 僕は推奨派ですね。あのむちゃくちゃな振り切ったMSデザインはいいですよ。熊とアッガイをミックスしたベアッガイは有名ですけど、ZZガンダムをベースにしたガンダムトライオン3ってのが出てきた時はとうとうやっちゃった!!って思いましたから(笑)。

だって胸部にライオンの顔がドーンッ!ですからね。うわー、とうとうアニメ本体がこれをやっちゃったか、と。

―あれ? 推奨派なんですよね?

片桐 いや、誤解しないでほしいんですけど、ホントに期待してるんですよ。そもそもロボットアニメのメカって、ガンダムトライオン3みたいにトンデモだけど子供心をくすぐるものだったじゃないですか?

ガンダムシリーズはアニメの設定自体がミリタリー好きとかSF好きの大人から見てもおかしくないか、みたいな感じで妙に綿密で、そういう方向にいきすぎてたと思うんです。その方向性も悪くないですけど、やっぱり小さい子の入り口は、設定がどうこうの前に単純に見た目がカッコいいかどうかが大事だと思うんで。

―ガンプラでも玄人ファンほど公式の設定などに準じて、いかにディテールを作り込めるかにこだわる人が多いかもしれません。

片桐 そのベクトルの熱量も好きですけどね。でも、もっとはっちゃけてもいいよね、とも思うんです。僕、ムック(『ラーメンズ・片桐仁のガンプラ戦士ジンダム』)で“キメラガンプラ”作ったんですよ。要するに、いろんなMSのパーツを勝手にドッキングさせてくアレです。

胴体にアッグを使って、ジムの足を逆向きにつけて、フリーダムガンダムのウイングとガンダムXXのサテライトキャノンを羽に見立てて、あと他にもゴチャゴチャつけて…で、『モンスターハンター』に出てくる飛竜種(ひりゅうしゅ)モンスターっぽいの作ったんです。まぁアホな遊び方ですけど(笑)。

―でも、それぐらい自由にガチャガチャ遊べることこそが、ガンプラの懐の深さの証拠ですもんね。ありがとうございました!

片桐仁1973年生まれ、41歳。ガンプラ歴35年の芸人。『ラーメンズ・片桐仁のガンプラ戦士ジンダム』(光文社)というムックを出版するほどガンプラ愛は深い! 今夏、片桐仁不条理アート粘土作品展『ギリ展』開催予定!

(取材・文/昌谷大介、牛嶋健【A4studio】 撮影/下城英悟)

■週刊プレイボーイ28号(6月29日発売)「ガンプラ35周年大特集」より(本誌では、最新ガンプラセレクションからバージョンアップの系譜ほか大特集!)