6月1日、「改正道路交通法」の施行により、警察による危険自転車の撲滅が始まった。そのすったもんだの中、飛び出したのが「自転車免許制」の議論だ。

産経新聞のオピニオンサイト『iRONNA(いろんな)』では、6月1日より自転車の免許制について読者アンケートを行なっている。

「自転車の免許制導入についてどう思いますか?」

この質問に対して、「導入すべき」951票、「導入すべきではない」293票、「どちらでもない」40票(6月18日現在)と、賛成が70%を超えた。

いくら罰則を厳しくしてもルールを守らない自転車は多く、危険運転により死亡事故も起きている。それならば、自転車も車のように免許制にして交通ルールの順守と歩行者に配慮した運転マナーを徹底させよう、というわけだ。では自転車免許制が今後、日本で導入されることはあり得るのか?

「自転車行政を知る人々の間では、『自転車免許制』は議論が尽くされた、すでに“終わった話”です。世界のどこを見ても自転車に免許制を導入している国なんてないのに、なぜ日本ではいまだにこの話が持ち上がるのか。それは日本において交通教育が成り立っていないからです」(自転車に関する多数の著作で知られるTVプロデューサー・疋田智[ひきたさとし]氏)

つまり、免許制を騒ぐ前に自転車教育の徹底を求めるべき、ということだ。

「他にも試験の年齢制限を何歳にすればいいのか? 試験の内容も、原付よりも比較的に危険性の低い自転車の免許ですから原付免許の簡単な試験よりさらに容易にしなければならない。でも、そんな試験を経た免許になんの意味があるのか?など、考えればキリがないほど問題が出てきます」(同)

また、免許制を導入するとなれば新たな制度をつくるために行政法人をつくったりと、やたらと税金が使われることになる。

「そんなことをする前に、なすべき有効手段は山ほどある。例えば、車道の左端に矢印マークを描く。人は矢印に逆らうのには抵抗感がありますし誰でも理解できます。実際、京都では路上にナビラインを引いたことで車道の左側通行がかなり守られるようになりました」(同)

とりあえず、免許制の導入は現時点では「あり得ない」と言っていいようだ。

(取材・文/頓所直人)