マンガ『デスノート』の見どころといえば、夜神月(以下、ライト)とLの心理戦。ふたりの駆け引きには、実は恋愛にも応用できるテクニックがたくさんある。

そこで今回は7月5日からの連続ドラマ化を受け、恋愛に使える『デスノート』の読み方を心理術の専門家であるメンタリストのDaigoが指南する。

まずDaigoが注目するのは、Lのこんな言動だ。大学の入学式での初対面時、Lはライトにいきなり「私はLです」と正体を明かして動揺を誘う。これが恋愛でも使えるのだという。

「彼女が彼氏の浮気を見破る時によく使う手ですよね。女性は『ねぇ、最近なんか楽しそうだね。いいことでもあったの?』なんてふと聞いてきたりするでしょ。何もやましいことがない男性にとってはこのセリフは“曖昧(あいまい)な質問”なんですが、浮気などの心当たりのある男性からすると『どうしてバレたんだ!?』と“具体的な質問”に感じるもの。一瞬でも挙動不審な姿を見せたら最後(笑)」

もちろん女性の口説き方も『デスノート』から学ぶことができる。

「物語後半、大学時代にライトを好きだった美女、高田清美が有名女子アナとなって再び登場しますよね。清美のような“高根の花”タイプの女性は口説いても振り向いてくれないイメージが強い。ですが、それゆえになかなか男性からアタックしてもらえず恋愛経験が乏しいため意外と異性に不慣れ。なので、オトすのはさほど難しくないんです」

しかし、清美はプライドも高そうだが…。

「ライトが清美を利用しようと再接近を試みるシーンでは、電話で彼女の自尊心をうまくくすぐることでスルッと心の中に入っていきましたよね。実はプライドが高い女性は、他人に知られたくない弱い部分を隠すために強気に出ているパターンが多いので、そこを突けば案外簡単にオチるものなんですよ。

例えば『私は仕事をバリバリやってます』というアピールが激しい人は、得てして社内での自分の評価に不満があるもの。そんな女性には『そのへんの男よりも断然仕事ができるのに、君の上司は見る目ないよね』なんて言ってあげればOK」

つまり、「この人だけは私をわかってくれてる」と思わせることが重要なのだ。

ライトは心理戦においての反面教師?

「余談ですが、清美のように恋愛相手に全能性を求める人は婚期が遅れがちですね(苦笑)。ライトに長年、片思いしていることからもわかるように、おそらく結婚相手に妥協できないタイプ。でも相手に完璧さを求めておきながら、自分がその人に見合う人間なのかどうかを客観的に見られないので、恋愛も結婚もなかなかうまくいかないんです」

一方、ライトは自分自身に全能性を求めすぎな気も。

「そうですね。ライトは完璧主義者ゆえに最後の最後で敗北しましたからね。そもそも当初の目標は“新世界をつくる”ことだったのに、いつの間にかその手段のひとつだったはずの“Lを倒す”ことが彼の目標になっていましたよね。…いきなりですが、“議論で絶対に負けない方法”、わかりますか?」

思いっきり理論武装するとか?

「いいえ、違います。それは“議論をしないこと”です。周りの人間と敵対して勝ち進んでいく人物は一見優秀なように見えます。が、勝ち続けることは難しいし敗北してしまうこともある。でも周りの人間を敵にせず、むしろ仲間にしたらどうですか? 戦う必要がないので負けることもない。

ですから相手を論破して完膚なきまで叩き潰すよりも、相手が騙されていることに気づかないほど完璧に味方のフリができる人物こそ心理戦における究極の勝者といえるでしょうね」

しかし、ライトも物語中盤からキラ対策の捜査本部に加わりLと共闘していた。

「ライトはLたちの味方のフリをしていましたが、結局あれはLを陥れようとするための手段でしかありませんでした。それにLには最初から疑われ続けていましたので、実質味方のフリもできていなかった」

確かにLには勝つことはできたが、最終的にライトはLの後継者であるニアたちに敗れた。

「極論、ライトはLやニアなんて無視して放っておいて、こっそり粛々と計画を進めていれば、“新世界をつくる”こともできたのではと思います。けれど、神である自分がひとりの人間(L)ごときに負けてはならないと思ってしまった。これがライトの最大のミスでしょうね」

まさか天才的な頭脳を持ったライトが、実は心理戦においての反面教師だったとは…。『デスノート』は奥が深い!

(取材・文/昌谷大介、武松佑季[A4studio])