売上減に歯止めがかからない…(写真はイメージで、本文とは直接関連していません)

“マック離れ”が止まらないーー。

先日発表された5月の既存店売上高は、22.2%減少(前年同月比)。昨年7月に中国の提携工場で期限切れ鶏肉を使用していた問題が発覚して以降、2ケタ台の減収は11カ月連続で過去ワースト記録を更新中だ。

4月以降、サラ・カサノバ社長兼CEOは数々の再建プランを打ち出してはいる。東京・西新宿の本社ビルの社員100人を希望退職させたり、『スマイル0円』を復活させたり、ヘルシーブームに乗っかって『ベジタブルチキンバーガー』を発売したり…。だが、業績回復の兆しはまったく見えない。

創業社長・藤田田氏の時代に導入されていた「地区本部制」も復活させた。東日本、西日本、中日本の3エリアに区分けし、人事、財務といった機能を権限移譲させ、地域に根差した店舗運営を行なおうとするものだが、現場からはこんな不満の声が…。

「権限移譲っていうけど、決裁権限は本部が持ったまま。その本部には最近、財務部門に取引先銀行の人間が入り、現場から店舗運営の改善案を出しても『採算が合わない』と突き返されてばかり。これじゃあ、マックは何も変わりませんよ」(フランチャイズオーナーA氏)

では今、マックに何が必要なのか? 外食ジャーナリストの中村芳平氏は言う。

「藤田田さんのような強力なリーダーシップを持った経営者です」

やはりカサノバさんじゃ、ダメってこと?

「彼女は今年1月に異物混入問題が発覚した際には記者会見にも出席せず、マスコミ、消費者、ネットユーザーから大ひんしゅくを買いました。また記者会見の時、英語でしか話さずコミュニケーションが一方的になりがちです。株主からは『カサノバじゃ、マズい』との声も挙がっています」

今さらな話ではあるが…実際、そこでマック内部でも水面下でカサノバ社長の後任探しが進められているという。

「この10年ほどの間でマクドナルドを退社し、他の外食チェーンに転職した元幹部を呼び戻そうとする動きがあります」(前出・中村氏)

“壊し屋”時代に放逐された有力OBが各社で大物に!

その背景にあるのは“壊し屋”の異名を持つ前CEO・原田泳幸時代の経営改革だ。在任中(2004年2月~2015年3月)、らつ腕をふるって脱・藤田路線を突っ走り、藤田時代の生え抜き幹部を一掃、外部人材の登用に力を注いだ。その過程で「原田氏と意見が対立し、会社を去った幹部は何人もいる」と中村氏は話す。

そんなマックの元幹部ともなれば引く手あまたで、各企業に散っているというが…。マクドナルドOBで外食コンサルタントの王利彰氏がこう話す。

「他の外食チェーンに好待遇で迎え入れられ、社長職に就いて業績を伸ばし続けている元幹部も少なくありません。彼らの多くは藤田時代の生え抜きで80年代~90年代のマックの繁栄期を支えた人材。それだけに現場にも精通しFCオーナーからの信頼も厚い。マックは経営陣に現場を知る人材がほとんどいなくなってしまった今、この苦境を脱するには〝藤田派幹部〟を呼び戻すしかないと考えているのです」

そこでマック本社から呼び戻しのラブコールがかかっていそうな人物として、名前が挙がっているのが次のような人たちだ。

バーガーキング・ジャパンの村尾泰幸社長、モスダイニングの友成勇樹会長、フレッシュネスの紫関修社長、コメダの臼井興胤社長、すき家本部の興津龍太郎社長…」(マクドナルド株主B氏)

錚々(そうそう)たる面々だが、その中でも次期社長候補の有力候補と目されているのがバーガーキングの村尾氏

「彼はアルバイトからの叩き上げで店長経験もあり、全社横断的な戦略立案や財務、FC展開も手がけました。31年間勤務し、原田前CEOと対立して12年3月に退社。シダックス取締役を経て、昨年2月にバーガーキング社長に就任すると店舗数を現在の100店舗近くまで伸ばし、200店舗まで増やそうとしています。マックの現場経験が豊富で経営手腕にも定評がある。あとは、モスダイニングの友成さんを推す声もありますが」(マクドナルド株主・B氏)

しかし未だ社長どころか役員交代の一報すら届かないが…機密事項なのだろうか?

「いえ、それがマックは断られてしまっているようで…。村尾氏もその他の元幹部も『今のマックには戻りたくない』と拒否していると思われます」(マクドナルド株主・B氏)

やはり火中の栗を拾う貧乏くじは引きたくないというワケか? 前出の王利彰氏がこう話す。

「原田前CEOは在任中に幹部だけでなく約300人もの社員をリストラしましたから、今のマックに現場を知る有能な“兵隊”はほとんど残っていません。業績を以前の状態まで回復させるには10年はかかる。経営者にとってはリスクが大き過ぎます」

中村氏(前出)も続ける。

「それでも彼らを呼び戻そうとすれば、年俸5年で30億円以上、非上場化、アメリカ本部からの権限移譲など破格の条件を出さなければ無理でしょう。今こそ藤田田さんのような不世出の起業家が必要なのに皮肉なことです」

古巣への復帰に“ノー”を突きつける元幹部たち。崖っぷちのマックに救世主は現れるのか…?

(取材・文/興山英雄)