国立文化宮殿の前でグアテマラの人たちの国歌斉唱に包まれて

「もっとキューバにいたかった!」と後ろ髪を引かれながら、いよいよ旅は中米ディープエリアへ。メキシコの南にある、大陸続きの7ヵ国を目指します。

“海に挟まれた浮かれた南国”というイメージだったけど、実は世界殺人率ランキング上位に入る、かなりヤバいエリア。調べるほど怖い話がいっぱいでヒヨりまくりです。でも、「そこに陸があるから」ーーとにかく命あるまま突破することを目標に駆け抜けよう!

メキシコからバスに乗り、深夜のイミグレでは出国税をワイロの要求かと警戒心全開で、向かった国は「ベリーズ」。ついつい、「Berryz工房」を思い浮かべてしまうけど、国土の65%を熱帯雨林に覆われた四国ほどの面積の小国です。

寝ぼけ眼(まなこ)のまま深夜バスが到着したのは、ガイドブックで「治安悪化地域」と示された場所。長距離バスの発着地というのはどうしてこう治安の悪いところなんだろうか。「こんなとこで降ろさないでくれよぅ。マジで……」

ベリーズシティーのバスターミナル。鉄格子に囲まれたバス停に降りると、まるで刑務所入りした新人のように視線を浴びる

さすが「世界殺人報告」で堂々3位の実績を持つだけあって、肌を突き刺すようなピリピリ感。天気は土砂降りで陰気くさく、「タクシー、タクシー」と客引きの声。もはや私には「あべしー、あべしー」と『北斗の拳』に出てくる断末魔の叫びに聞こえた。

タクシーというのは厄介(やっかい)。危険な場所での移動はタクシーに乗ったほうが良い場合もあれば、ボッタクリやタクシー強盗に遭う最悪のケースもあるので、なかなか私は好きになれない。意を決して、危険地区は傘で顔を隠しながら徒歩で突破することに!

治安悪化地区を抜けると、この色からは想像できないがカリブ海の島々へつながる河口がある

カリブ海へ臨む川にかかるスイング橋。屋根に書かれているのはベリーズビールのブランド「BELIKIN」

そんなベリーズにも、「ブルーホール」という神秘的な見どころがある。それはカリブ海のベリーズ珊瑚礁保護区の巨大な陥没穴。直径313m、深さ120mもあり、周辺の海に比べてそこだけひときわ深い青をたたえている。

まるで異世界へと続く入り口のようで、恐ろしくも感じる。“ブルーハンター”を自称するマリーシャとしてはかなり気になっていた場所だったけど、上から見るにはたった数分のために高額のセスナをチャーターしなければいけない。陥没穴はメキシコのセノーテでたっぷり堪能したので、今回は“絵ハガキで我慢”と売店に寄ったついでに、ちゃっかりベリーズビールを味わっておいた。

絵ハガキでブルーホールを堪能します

覚悟を決め、グアテマラシティーに1泊

というわけで、まずは1ヵ国を文字通り“通り過ぎた”私は、「グアテマラ」に南下。

グアテマラといえば、2011年には隣国からの麻薬カルテル組織の侵入で国家非常事態宣言を出された国。「世界殺人報告」では5位となっている。旅人は危険都市・グアテマラシティーを避け、治安の良い小さな町へ向かうのが一般的だ。

しかし、気付けばキューバから飛行機でメキシコに戻り、長距離バスでベリーズを過ぎグアテマラまでと4ヵ国移動している間、一度も宿に泊まっていない。ろくに寝てないし肩はバキバキ。炎天下と緊張の冷や汗、突然の雨と湿気でベタベタだった体はとにかくシャワーを浴びたがっていた。

結局、グアテマラシティーに一泊する覚悟を決め、安宿を目指す。またしても「治安悪化地区」と地図に示された道を通るしかない。

日中は明るい雰囲気のグアテマラシティーだけど、スリやひったくり、路線バスごと狙った車上強盗なども多発しているから気が抜けない

宿の中では「こんなところに旅人が隠れていたのか!」というように、西洋人系バックパッカーたちが宴を開いていた。「やるかい?」とマリファナを勧められたが、私はニッコリ笑顔でお断りして街に出ることにした。

大通りには意外や意外、お店がいっぱいあるじゃないの~! 若者も女性も子供もいっぱい歩いてるし、思ったより雰囲気は明るい!

どんなに治安の悪い国でも子供の笑顔には救われる! かわいいスパイダーマンたちよ、ありがとう!

緊張の糸が切れたのか「ぐうぅぅ~」と腹が鳴る。屋台のタコスは、メキシコより油や汁がダクダクの皮で包まれたものだった。私は敵か味方かわからないローカルの人たちの間にちょこんと座り、ジュルっとつゆだくタコスを食べた。

グアテマラの通過はケツァール。タコスは3つで10ケツ(約130円)とお安い

現地人に混ざって自信がついたのか、やっと人を観察し、カメラを出せるようになった。グアテマラ人は小柄な人が多く、若者はオシャレを楽しんでいたり、路上ではダンスや歌のパフォーマンスも見られる。

ショーが始まると少々照れながら踊りだし、まさかのカンナムスタイルの曲が! この曲はブラジルでもインドでもミャンマーでも世界中で流れていた。恐るべしカンナムスタイル、エヴリホェア。

スリやひったくりに合わないようコソコソと撮影をしてる私に優しい笑顔をくれたグアテマラギャルズ。やっぱ女のコは笑顔が大事

子供も美女もマスクもデモる

そんな賑わう街中に突如現れたのは、おもしろメガネやマスクの仮装をしたり、グアテマラの国旗を掲げている人々。

スペイン語が全くわからないので、英語が話せそうな学生に「なんのパレード? フェスティバル?」とワクワクしながら尋ねると、「わが国の政治に対して言わなければいけないことがあるの。公務員の賃金が安かったり○×△※□・・・! とにかく私たち国民が立ち上がらないと!」。おっと、デモでしたか。

仮装やユニークなメッセージボードで抗議するデモ隊

他にも人々が掲げていた声明を翻訳してみると、「正直な政治を」「あなたの投票で彼を罰します」など、どうやらここ何ヵ月かでの汚職事件により閣僚らが相次いで辞任し、世論は現大統領の辞任も求めているという状況のよう。

大人はもちろん、若者から子供まで国民みんながデモに参加していて、いつの間にか私もその中に紛れ込んでいた。

子供もデモる

一般的に反政府デモ時は危ないから避けるようにといわれるが、私はその光景に思わず見とれてしまった。国旗がたなびき空には風船が舞い上がり、ブブゼラが鳴り響く国立文化宮殿前。まるでサッカーの開幕式のような、どこか爽快感すら感じる雰囲気だ。

美人もデモる

マスクもデモる

これといって危険なこともなく、自国に対し意見を主張するグアテマラ国民と接するのは、観光よりも面白い体験だった。全員が国歌斉唱しだした時には、なぜか私もその歌を知っているような気持ちで少しだけ鼻から音を出してみた。

「この国民のパワーで、グアテマラが治安の良い国に変化してくれたらうれしいな…」

…と他国を心配する前に、私ももっと自国の政治に関心を寄せないといけないのだけれども、旅人はただただ昨今の円安ドル高に断末魔の叫びをあげるだけだった…。

「安倍氏(あべし)~!!」

 

【This week’s BLUE】ブルーホールを撮影できず、ベリーズで唯一撮れたブルーはドラッグストアでした……。

●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログ、Twitter【marysha98】もチェック!