最近、街のあちこちで見かけるようになった緑の看板「業務スーパー」

円安などの影響で食材や日用品の値上げが続く今、家計の強い味方になるのが「業務スーパー」だ。業務用スーパーではなく、店名がそのままズバリの「業務スーパー」である。

最近、街のあちこちで見かけるようになったこのお店。店内には一斗缶に入ったサラダ油や1kgのコンニャクなど、思わず笑ってしまうほど安くて巨大な食材が所狭しと並べられている。

この業務スーパーの正体について、節約アドバイザーの矢野きくのさんに聞いてみた。自身も10年以上前から利用し「すべての食材を試しました」というツワモノだ。

「業務スーパーは、兵庫県に本社を置く神戸物産という会社が展開している業務用の食材を扱うスーパーです。その名の通り、飲食業者が仕入れに利用するような安くて量が多い食材が豊富にそろっています。

焼くだけ、揚げるだけ、レンジでチンするだけなどの“半調理商品”も多いので、料理があまり得意でない男性にもオススメですね。個人的には大根おろしやあめ色タマネギ(ともに500g)などをよく買います。あの量を作る手間と時間、食材費を考えるとそれだけでもかなりお得ですからね。

業者用のお店だから利用できないと思って素通りしてしまう人も多いみたいですが、誰でも利用できますし、私も時々ですが、まとめ買いに行ってますよ」

矢野さんによると、業務スーパーが誕生したのは今から15年ほど前のこと。当初は関西方面を中心に展開していたが、今では北海道から沖縄まで約700の店舗が全国にある。ここ4、5年で急速に店舗が増え、それと同時に一般的に知れ渡ったのではないかというのが矢野さんの実感だ。

「やっぱり日本中で節約志向が高まったせいかもしれないですね。人気の秘密はもちろん安さにあります。神戸物産によれば、仕入れ・流通・販売の過程を効率化して、普通のスーパーの半分程度の経費で店舗を運営できるようにしているそうですよ。食材も大量に購入して、一度に調理することで経費を削減しているのだと思います」

徹底的にムダを省く。これが一番の安さの秘訣だろう。

「また、店内に入ると一見してわかりますが、お金のかかっていなそうなシンプルなパッケージの商品が多い。それらも段ボールに入れたまま積み上げられ、そのまま売られています。陳列の手間が減れば人件費も減らせますから。いろいろなところで工夫してますよね」

業務スーパーを利用するデメリットはないのか?

確かに、普通のスーパーに比べると店員の数は明らかに少ない。ちなみに業務用食材を扱うスーパーといえば「肉のハナマサ」なども有名だが「基本的にコストカットの方法はどこもそんなに変わりません」と矢野さん。

ただし、自社農場だけでなく、なんと漁船まで持ち、2千点近くのプライベートブランド(PB)商品を展開しているのは、業務スーパーならではの特長だという。

「それに、これはPB商品ではありませんが、冷凍野菜の種類が豊富なのも業務スーパーならではですね。これだけの品ぞろえはちょっと他では見ないです」

消費者庁によれば、日本の食品廃棄物の排出量は年間ひとり当たり約130kg。せっかく買った野菜などを使い切れずに腐らせてしまい、捨てた経験は誰でも一度はあるはず。

「でも、冷凍食材なら腐らせてしまうリスクはグンと減りますよね。安いものを買うのも節約ですけど、買ったものを上手に使い切るのも節約なんですよ。ですから、安いからといって量が多いものを買うことは私はオススメしません。特に、ひとり暮らしならなおさら。

その点、冷凍保存できるものと小分けされているものは便利です。傷みにくく調味料などの風味も落ちませんので」

うまく利用すれば、かなりの節約につながりそうだが、逆にデメリットはないのだろうか。商品のパッケージに表記された「原産国」を見ると、何かと問題が起きる中国産も割と多いのだが…。

「確かにそうですね。気になる人もいると思います。ただ、10年以上利用してますが、少なくとも私は今のところ何かの被害に遭ったとかそういう経験はないんですよ。もちろん、だから安心してくださいとは言い切れないんですが…。そこは個人で判断してもらうしかないですよね」

パッケージには原産国などが必ず表記されている。気になる人はチェックして購入するほうがよいだろう。

発売中の『週刊プレイボーイ』29号では、さらに「業務スーパー」商品での節約ライフを実践、そちらもお読みいただきたい!

(取材・文/井出尚志[リーゼント])

■週刊プレイボーイ29号(7月6日発売)「ここまでできる!?『業務スーパー』で食費1ヵ月5000円生活をやってみた!」より