頻尿や残尿感、疼痛など「慢性前立腺炎」に悩む男性が増えている?頻尿や残尿感、疼痛など「慢性前立腺炎」に悩む男性が増えている?

■慢性前立腺炎に悩む男性が増えてるってホント!?

どーも、人妻ライターのYです。

結婚生活1年ちょいーー。先日、何やら夫がナゾの行動をとり始めまして...。出かける前にコソコソとパンツを履き替えていたり、夜中に何度も起きて、スマホ片手にトイレに入っていたりと、もう怪しすぎ。

まさか浮気でもしているのかと、思い切って問い詰めたところ、実はトイレが近い(頻尿)、排尿時に疼痛(排尿痛)、出し切った感じがしない(残尿感)...などの症状に悩まされているとのこと。つーか、それであんな紛らわしい行動をするなよ(苦笑)。

早速、泌尿器科を受診させると、「慢性前立腺炎」との診断が。...慢性前立腺炎って何?

夫が診てもらった医師によると、同じ症状を訴える人は増えているらしい。これで悩んでいる男性がそんなにいるの?

てわけで、調べてみると、症状はまちまちだが、頻尿、残尿感、排尿痛、会陰部痛を訴える人が多く、妻が洗濯の際に膿(うみ)や血液が付着した夫のパンツを発見して気付くこともあるとか。いやー、そういえば最近、夫のパンツをまじまじと見てなかったわ(遠い目)。

そこで反省しつつ、愛する夫と増加する「慢性前立腺炎」予備軍のため、前立腺の全てを学ぼうと聖路加国際病院泌尿器科副医長の遠藤文康医師にお話を伺った。

「まず、前立腺の場所から説明しますね。前立腺は膀胱のすぐ下、尿道を取り巻くように位置しています。健康な前立腺はクルミ大の大きさで、約15~20グラムほどです。尿と精液の"切替機"をイメージしていただくとわかりやすいでしょう。男性の『排尿と生殖』を司(つかさど)る前立腺はとても大切な臓器ですよ」

 前立腺は膀胱のすぐ下、尿道を取り巻くように位置。健康な前立腺はクルミ大の大きさで約15~20グラムほど 前立腺は膀胱のすぐ下、尿道を取り巻くように位置。健康な前立腺はクルミ大の大きさで約15~20グラムほど

その前立腺の3大疾患が前立腺がん、前立腺肥大症、前立腺炎の3つだとか。遠藤医師によると、近年急増している前立腺がんは50代以上で発症する人が多く、初期は自覚症状がほとんどないが、生死に関わる悪性の腫瘍。

そして、前立腺の病気の中で症状を訴える人がもっとも多いのが、前立腺肥大症。前立腺がんとは異なる良性で、加齢に伴う老化現象であると考えられているそう。高齢者の病気という印象を持つ人も多いようだが、早い人では40代後半から前立腺の細胞が異常増殖し、頻尿などの排尿トラブルに悩まされることもあるという。

20~30代が発症する前立腺炎

一方、それらに比べてあまり知られていない前立腺炎は、比較的若い年代、20~30代が発症する前立腺の炎症。

「ひとくちに前立腺炎といっても、急性のものと慢性のものがあります。1999年のアメリカの国立衛生研究所(NIH)による分類では、4つのカテゴリーに分けられます」(遠藤医師)

■<前立腺炎の種類> NIHによる前立腺症候群分類(1999年) 【カテゴリーⅠ】:急性細菌性前立腺炎 【カテゴリーⅡ】:慢性細菌性前立腺炎 【カテゴリーⅢ】:慢性骨盤内疼痛症候群/前立腺関連疼痛症候群(慢性非細菌性前立腺炎) A:炎症性 B:非炎症性 【カテゴリーⅣ】:無症候性炎症性前立腺炎

「このうち、急性細菌性前立腺炎(カテゴリーⅠ)は38.5度以上の高熱を発し、歩けないほどの猛烈な尿道痛や会陰部痛が特徴で入院治療が必要な救急レベル。また悪化すると敗血症や精子の機能を損なう可能性もあります。

一方、急性に比べて症状が軽い慢性細菌性前立腺炎(カテゴリーⅡ)と慢性骨盤内疼痛症候群/前立腺関連疼痛症候群(カテゴリーⅢ)を合わせて慢性前立腺炎と呼びます。睾丸痛、会陰部痛、鼠径(そけい)部痛の初期症状の他、しばらくすると骨盤のあたりなど前立腺とは無関係に見える場所に違和感や痛みが出る場合もありますが、病気そのものはそこまで心配する必要はありません。特に治療をしなくても3~6ヵ月ほどで自然に軽快することが多いとされています」(遠藤医師)

ほっ。夫が診断された慢性前立腺炎は放置しても治癒するものらしい。また男性不妊の要因になったり他の病気を併発したりすることもないのだとか。ちょっと安心。

でも頻尿や残尿感、疼痛などの症状を訴える人は増えているとかいう話も聞いたんだけど、どうなんでしょうか?

「現代人に『増えている』というよりは、症状を訴える人が顕在化してきたと言ったほうが適切かもしれません。というのも、慢性前立腺炎の症状を訴える人は昔からいたのですが、泌尿器医サイドではこの症状が病気だという認識がありませんでした。最近になってからこのような症状が確かに存在するという認識が広まり、患者さんの訴えを受け止めて、疾患として治療していこうという方針が一般的になったのです」(遠藤医師)

深刻ではないため、昔は医師から「気のせいでしょ」というひと言で片づけられがちで、病院を転々とし"ドクター・ショッピング"状態になる人も少なくなかったのだとか。ちなみに現在も決定的な治療法は確立しておらず、対症療法がメインだという。

前立腺マッサージは医療行為?

■衝撃の新事実 前立腺マッサージは医療行為だった!

自然治癒するのならよしだが、やはり耐えられないという場合、診察と同時になんと「前立腺マッサージ」を行なう場合もあるとか。それってちょっとエッチな響きも...一般的な直腸診とは違うんでしょうか?

「直腸診は触れるだけの触診ですが、前立腺マッサージは医療行為なんですよ。前立腺液を採取して、細菌と白血球の数を調べるために肛門から指を挿入し、前立腺の外側から内側へグリグリとまんべんなく圧迫、前立腺液を尿道に向かって絞り出すようにします」(遠藤医師)

前立腺マッサージってれっきとした医療行為だったんですね! ちなみに、前立腺の病気と聞くと、夜の方はどうなるのか?というのが気になるところ。ネット上では、前立腺の鬱血を解消するために「射精やセックス回数を増やした方が良い」なんて情報も見かけたが、真偽のほどは!?

「確かに、射精すれば前立腺の中の液が排出されますから多少は効果があるのでは...という説もありますが、教科書には射精回数を増やせという記述はありません。射精時に痛みが走る患者さんもいますから無理に増やさなくても良いのではないでしょうか」(遠藤医師)

そんな慢性前立腺炎の原因ははっきりと特定できていないという一方、患者にはシステムエンジニア、タクシー運転手など長時間座ったままで仕事をする人が多いことから骨盤内の血流が滞って前立腺が鬱血し、それが発症の背景にあるのではとも考えられている。

そのため医師側では、血行不良の要因となる冷えや過度の飲酒や喫煙を避け、座り仕事が続く際には適度に体を動かすことを指導している。

生活環境や習慣を改善することで、全快とまでもはいかなくても気になる症状が軽快する場合も多いという。生活パターンを変えて、半年以上経過しても症状の改善が見られない場合は一度、泌尿器科の門を叩いてみてはいかがだろうか。

(取材/文 山口幸映)