10年ぶりに新型が発売されたマツダ・ロードスター

10年ぶりにマツダ・ロードスターの新型が発売された。今回はついに正真正銘の量産型だ。

結論からいえば、量産型ロードスターは3月の事前試乗会の時より明らかに完成度が高まっていた。

新型のエンジンは全車1.5リッターでタイヤも全車共通。グレードや変速機によって、サスペンションの味つけをビミョーに変えているだけだが、マニア観点でいうと、ここが好みのはっきり分かれる分水嶺となる。

硬派な走りを求めるマニアには「MTのSスペシャルパッケージ」。新型ロードスターは全体に柔らかい乗り心地が身上であるもののMTのスペシャルパッケージはどちらかというと引き締まり系で、水平姿勢のキープ力が強い。エンジンが控えめなので「どこでもドリドリ!」とはいかないが、うまく運転すれば、程よくおケツを出したコーナリングもやりやすい。

対して、最も安価でメチャ軽い(1トン切りの990kg!)「」グレードやオートマ車はさらに柔らかく、現代のスポーツカーとしては左右に傾くロールも明らかに大きめ。最近のクルマのハイグリップ水平コーナリングしか知らない世代には「なんだコレ!?」だろうが、初代ユーノス・ロードスター(当時の車名)をリアルタイムで知るオッサン世代は、あまりの懐かしさに号泣必至である。

そんな初代ユーノス当時に若手として活躍したエンジニアたちがベテランのリーダーとなって開発した新型ロードスターは、細かい部分のノウハウ蓄積とこだわりがスゴい。ドア上端からちょうどいい具合に肩が飛び出るボディの低さもそうだし、運転の邪魔にならないカップホルダーひとつにも「なるほど!」とヒザを打ちたくなる。

タイトなのに窮屈でないドラポジも絶品だ。そしてステアリング、ペダル、シフトレバーのすべてが、あってほしい場所にピタリと鎮座している。さらに4本のタイヤも寸分の狂いなく乗り手が直感的にイメージできる位置にある。こうしたマツダのいうところの「人馬一体」への追求は本物。

1.5リッターエンジンではよほどの乱暴をしないと危ないことにはならないが、少しばかりタイヤが滑ってしまったところで、クルマが自分の手の内にある感覚が貫かれているので、まるで怖くない。

あらためて世界一の「スポーツカー天国」に

ロードスターといえば、今回の新型で4代目となる。1989年にデビューした初代ユーノス・ロードスターからの世界累計販売台数は今年3月末時点で95万台超。これまでのペースを考えると、来年か再来年には100万台を達成する可能性が高い。

ロードスターは2000年に生産累計53万1890台に達した時点で「史上最も多く生産された2人乗り小型オープンスポーツカー」としてギネスに認定されている! 世界にはロードスターのライバルたり得るクルマは存在しないので、以後はロードスターが1台増えるごとに世界記録が更新され続けている(実際には節目ごとにマツダ自ら記録更新を申請しているので、現在の公式ギネス記録は11年の累計90万台)。

そんな“世界の至宝”を擁する日本は、あらためて世界一の「スポーツカー天国」を名乗っていい!

(取材・文/佐野弘宗 撮影/池之平昌信)