すでに世界中で大ヒット、作品中のこのポーズを動物園の飼育員たちがパロって動画UPする現象まで!(C)Universal Pictures and Amblin Entertainment

長崎市の長崎半島西海岸にある白亜紀後期の三ツ瀬層(約8100万年前)から、国内初となるティラノサウルス科の大型種の歯の化石が見つかった。体長は推定10m以上。「日本に大型のティラノサウルスはいない」という定説を覆した“大発見”だ。

そこで6月に新書『ティラノサウルスはすごい』を上梓(じょうし)した、サイエンスライターの土屋健氏に話を伺ったところ(前編記事⇒「長崎で大型種の化石発見! T・レックスよりも新種の可能性?」)、ついに公開となったあの大人気シリーズ映画にまで話が及びーー。

* * *

―8月5日には『ジュラシック・ワールド』が日本で公開されますが、このシリーズに出ているのはT・レックスですか?

「ええ。ある意味、ティラノサウルス像に大きな影響を与えた作品です。当時のT・レックスに対する認識が映画を見たらわかる」

―というと?

「例えば、『ジュラシック・パーク』の1作目(1993年)の中で、T・レックスを前にしたグラント博士が女の子に『動くな。動くと襲ってくる』というシーンがあるんですが、今の学説からすると正しい描写ではないんです」

―緊迫したあの場面が!

「最新の研究によると、『ティラノサウルスは非常に嗅覚が発達していた』という説が有力になっています。だから、普通に食べられますよ(笑)。 私は最新作のパンフレット制作に関わっているのですが、今作では嗅覚の良さを表しているシーンが出てきます」

―早く観たくなってきました! でも『ジュラシック』シリーズって、ティラノサウルスの描かれ方が回を追うごとにカッコ悪くなってません?

「はい(笑)。それも作品ごとの製作当時の研究を反映しているのかもしれません。1作目の頃はティラノサウルスの研究ってまだあまり進んでいなかったんですよ。発見されている標本が少なくて。

ティラノサウルス研究において劇的な変化があったのは、『スー』と呼ばれる化石が世に出てきてから。スーは全身の73%という世界一の保存率を誇る化石で、90年に発見され、研究機関に収まったのが97年。これを機に、飛躍的に論文が増えました」

―なるほど。

「でも、2、3作目が公開されたのって97年、2001年だから、まだ今ひとつ研究の成果が反映されていないんですよ。

例えば、3作目では“腐肉食者”として描かれていますが、現在では腐肉食者というよりは“狩人”と見られています。

私は仕事柄すでに最新作を観てきましたが、今作ではT・レックスの遺伝子をベースにつくられた“ハイブリッド恐竜”が物語の中核を担います。ここにどのようなT・レックス研究が反映されているのか。先ほどの嗅覚の話を意識して見てください(笑)。T・レックスもしっかり登場しますので、お楽しみに!」

―おお! ティラノ好きには朗報というわけで。期待が高まります!

土屋健(つちや・けん)サイエンスライター。オフィス ジオパレオント代表。金沢大学大学院修了。修士(理学)。科学雑誌『Newton』の記者編集者を経て 現職。『ティラノサウルスはすごい』(監修・小林快次 著・土屋健 文春新書)はアマゾン書籍ランキング「恐竜」部門で第1位獲得(7月23 日現在)