中国西部から西へ進んで中央アジア、南アジア、中東を経由し、ヨーロッパまでつながる巨大な「シルクロード経済ベルト」を現代に再興したい中国。

逆に、西はアフリカから東へ進んで中東、南アジア、中央アジア、そして中国・新疆(しんきょう)ウイグル自治区まで延びるカリフ制イスラム国家の建国を野望とするイスラム国(以下、IS)。ユーラシア大陸の真ん中で、両者がいよいよぶつかる可能性が出てきた―。

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今もISは本拠地のシリア、イラクで支配地域拡大を目指して戦闘を繰り返し、昨年11月以降は各地に〝支部〟をつくっている。国際ジャーナリストの河合洋一郎氏が解説する。

「ISは巨大なイスラム国家建国という目的を達成すべく、斬新なアイデアを考案しました。ISのカリフ・イブラヒム(最高指導者のバグダディ)に忠誠を誓い、かつ一定の条件を満たすサラフィー・ジハード組織の活動領域を『県』として認めることにしたのです。その背景には、ISを破門したアルカイダとの苛烈な主導権争い、縄張り争いがあります」

今のところ、県の認定を受けているのはエジプト、リビア、イエメン、ホラーサーン、コーカサス(チェチェン共和国などが含まれるロシアの北コーカサス地方)など8つ。中でも現在、状況が激変しつつあるのがアフガニスタン(以下、アフガン)、パキスタン、中央アジア、新疆ウイグル自治区の一部などを含む「ホラーサーン県」だ。

この地域のイスラム過激派のボス的存在で、アルカイダを庇護(ひご)していたタリバンの最高指導者オマル師が2年前に死亡していたことが判明したのだ。ここ数ヵ月、対IS戦で優位に立っていたタリバンだが、急転直下、崩壊の危機に瀕(ひん)しているとの見方もある

「オマル師の死を知らず、過去2年間、彼の名前で出された〝ニセの命令〟に従ってきた中堅幹部以下のメンバーの怒りは大きい。新しくトップに就任したマンスールは懸命に団結を訴えていますが、オマル師の息子や弟はすでに反旗を翻(ひるがえ)しています。タリバンの求心力がガタ落ちしたのは確実で、裏切られたと感じているメンバーの多くがISに移籍すると予測する専門家も少なくありません

またアルカイダを含め、オマル師に忠誠を誓っていたほかの組織にとっても影響は大きい。すでに今年4月には、アフガンをベースに活動するIMU(ウズベキスタン・イスラム運動)の中の一派が、10年以上も公の場に姿を見せないオマル師へのバイア(忠誠の誓い)を破棄し、ISへ鞍替(くらが)えしましたが、オマル師の死亡が正式発表されたことで、こうした動きは加速するでしょう」(河合氏)

つまり、この地域でISが一気に勢力を拡大する下地が整いつつあるわけだ

中国は近年、シルクロード経済ベルトの通り道となるこの地域の政情を安定させるべく、タリバンとアフガン政府の和平交渉を強力にプッシュしてきた。ここにきてのISの躍進は大きすぎる痛手だ。

そこで、ウイグルがISと繋がり、ますます軋轢(あつれき)を生じている中国との一触即発な現状、それゆえ中国人がISの標的とされようとしている危機に対して日本はどうあるべきか…発売中の『週刊プレイボーイ』34・35合併号で詳説しているのでお読みいただきたい。

(取材・文/小峯隆生 協力/世良光弘)

■週刊プレイボーイ34・35合併号(8月10日発売)「『イスラム国』東へ勢力拡大で中国が戦々恐々!」より