内閣府が６月２２日に発表した『少子化社会対策白書』。
若者の恋愛離れやセックス離れが指摘されている中、ここに盛り込まれた「意識調査」の結果は、その流れを裏づける衝撃の最新データの数々だった。
まず、恋人が欲しいかーー。独身で現在恋人もいない２０代、３０代男女（全国約２６００人の有効回答のうち７６１人）の３７．６％が「欲しくない」と回答。これを２０代男性に限定すると「欲しくない」の割合は３９．７％とさらに上昇する。
加えて、「恋人が欲しくない」と答えた人の理由の上位には「恋愛が面倒」が４６．２％、「自分の趣味に力を入れたい」が４５．１％と“草食”どころか“絶食”ぶりを裏付けた。若者研究家、若者マーケッターとして「マイルドヤンキー」「さとり世代」などの言葉を生み出した原田曜平さんはこう分析する。
「草食男子や絶食男子が増えている理由として、現在がとても恋愛のしにくい時代になっているという背景があると思います。今の若者は高校生ぐらいの時からフェイスブックやツイッターといったＳＮＳで誰かとつながっている世代。それゆえに自分が所属するコミュニティの情報は筒抜けで『ＡくんがＢちゃんにコクったんだって』とか『ＣちゃんってＤくんの元カノらしいよ』とか『Ｅくんっていろんな女を口説きまくってるらしいじゃん』なんて話がすぐに広まってしまう。
“ＳＮＳ村社会”とでもいう状況で、仮に興味はあっても、そこに至るまでのプロセスが非常に面倒くさくなってしまっているんです」
確かに、そんな相互監視の中だと失敗は許されない空気感かもしれない。かつて、童貞を捨てるまではトライ＆エラーの繰り返しだったが…。
「まず前提に“カッコいい口説き方をしないといけない”、“セックスもスマートでなくてはいけない”という強迫観念みたいなものを抱いてしまっているんでしょう。実は昔も今も、根本的に恋愛やセックスに興味のある割合はそんなに変わっていないように思うんです。
要するに肉食系男子の素養を持った男性の割合が、そこまで極端に減っているわけではないと。ただ、ハードルが上がってしまったために“セックスへの情熱”よりも“過程の面倒くささ”が勝ってしまい、結果、能動的なアクションをしない男性が急増しているのではと分析しています」（原田氏）
今の若者の本来のパーソナリティというより、環境の変化のほうが大きい可能性が“絶食化”の背景にはあるようだ。
彼女がいるメリットを見出せない？
そこで２０代前半の絶食男子に接触を試みて、彼らの声に耳を傾けてみることに…。現役童貞であるユウジさん（仮名、以下同。２１歳・大学４年生）は「性欲はある」とした上で、次のように語ってくれた。
「でもセックスするために頑張ろうって気持ちはほとんどないです。僕、前は彼女がいたこともあったし、他にも何人かイイ感じになりそうなコもいたんですよ。けど、性欲が面倒くささに勝てないというか。あと、ぶっちゃけると童貞でいるのもいいかな？って思ってて。肩書として〝２１歳・童貞〟ってインパクトがあるから、女のコもいる飲み会とかで話のネタになるんですよ（笑）」
かつての世間的イメージは、童貞は恥ずべき存在であり、ましてや女子の前で公言できるようなことではなかったはず。いつの間にそんな市民権が与えられたのか…。 先日ヤラハタ（童貞のまま成人）を迎えたタツヤさん（２０歳・専門学校生）も堂々と「童貞はネタになる」と豪語。
「周りの友達は経験済みのヤツばっかりだから、むしろ童貞はレアキャラとしてポジションが確立できる（笑）。高校の頃は焦ってた時期もあったけど、今は焦りも劣等感もないかな。実は高２の時、僕の友達で二股疑惑が浮上したヤツがいて、その彼はクラス内でハブられちゃって。それを目の当たりにしたから、女にガッツくことに対して怖さみたいなものもあるかも」
続いては、社会人でありながら童貞を貫くシンジさん（２３歳・ＩＴ企業勤務）。
「そりゃエッチはしたいですけど、ただしたいわけじゃなくて。自分には自分なりの恋愛観、セックス観があるんで、それを崩したくない。彼女や恋愛に対しての理想が高いのかなという自覚もあるけど、是が非でもヤリたいってわけじゃないんですよね。童貞捨てるなら、黒髪で清楚系の彼女とふたりで旅行に行って、その夜、旅館の部屋で…っていうのがベストかなぁ」
女子か！ なんだ、そのロマンチックな初エッチ願望！ 童貞が〝百害あって一利なし〟という価値観だった時代は、一日でも早く童貞を捨てるために、妥協に妥協を重ねて童貞を捧げた男たちがごまんといたのだぞ！ 一方、以前、彼女がいてエッチ経験済みというタクさん（２４歳・フリーター）からは、非童貞ならではの主張が。
「彼女がいることのメリットを見出せないんですよ。だって付き合ったところで、やることっていったらふたりでどこか出かけるか、セックスするかだけじゃないですか（苦笑）。どこかに出かけるなら男友達と行ったほうが楽しいし、性欲がたまったなら風俗行けばいい話。恋愛しろだとかセックスはいいものだとか言ってくる先輩もいるけど、自分の価値観を押しつけてきてダサいなぁって思う。僕は彼女もエッチもない生活で十分充実してるから」
絶食男子たちの意見に共通しているのは〝多少はセックスに興味あるけど労力に対するコスパが悪い〟といったところか。それでいいも悪いも個人の話と割り切ってしまえばそれまでだが…うーん。
（取材・文／昌谷大介［Ａ４ｓｔｕｄｉｏ］）