今年は初主演ドラマも放映され、女優として波に乗る早見あかり

昨年のNHK連続テレビ小説『マッサン』出演以来、様々な作品に抜擢され、注目の若手女優として名を上げる早見あかり

来月2日には、3月に公開された映画『忘れないと誓ったぼくがいた』(監督:堀江慶)がDVD化される。周囲の人々にわずか数時間で忘れられてしまう、あずさ(早見)と「絶対忘れない」と誓うタカシ(村上虹郎)の奇妙で切ないラブストーリーだ。

そんな作品に挑戦した彼女が、ももいろクローバー(現在はももいろクローバーZ)時代を振り返りつつ、女優としての覚悟を語った。

―今回の映画はかなり特殊な設定でしたね。

早見 そうなんですよ。私の読解力がないというのもあるんですけれど、失礼な話、脚本を読んだ時、1回目では意味がわからなかったんですよ(苦笑)。2度目で理解できたんですけど、実際にはあり得ない話でも、もし自分がその立場になってしまったらと考えたらすごく怖かったです。

―そうするとやはり演技も難しかったんですか?

早見 あんまり堅苦しく考えることはしないようにしましたね。考えすぎて作り込んで演じようとすると、言われたことにすぐ対応できる自信がないので、ワザとあまり作り込まないで現場に入りました。それにあずさはいつでも結局タカシのことが大好きで、タカシに忘れられちゃうと悲しいというのが共通しているので、変わった役でしたけど役作りという面では大変だったとは思わなかったですね。

―バックグランドは特殊でも、お互い大好きですごくピュアなふたりというのは変わらないですもんね。

早見 そうなんです。でも監督の中のあずさ像がすごく“カワイイ”女のコだったみたいで、揉(も)めることはありましたね。

―どんなやり取りだったんですか?

早見 プレゼントを貰う場面で監督には「すごく可愛らしく喜べ」と言われたんですよ。あずさって喜ぶ時に声が1、2オクターブ上がって「わぁ~嬉しい!ありがとう!!」って言うカワイイ女のコなんだと思うんですよ。でも私自身、“カワイイ”女のコではないですから。

それが本当に辛くて「そんな喜び方はしません」って言ったり、「絶対やらない」とかずっと言ってたんですけれど。結局やらされて…。ただ、それでも足りなかったらしく、後でアフレコで付け加えたりして、そのこだわりというのは本当にスゴイなって思いました。

監督に「絶対やらない!」と反発するも…

―なるほど。でも早見さん自身はキャピキャピした感じはないと。それは普段もですか?

早見 はい!

―即答ですね(笑)。

早見 喜んでいても嬉しそうに見えないって言われるんです。表情に出してはいるんですけれど「ヤバい! めっちゃ嬉しい! ヤバいヤバい!!」ってヘラヘラしているんで友達とかにもよくそう言われます(笑)。でもそこは誰に対しても変わらないって感じですね。

―なるほど(笑)。じゃあ撮影中は結構、厳しく指示されたり?

早見 いえ、本当に細かくというのはそこくらいでしたね。あとは「時間をすごく使っていい」って言われていました。上手く見えるとかではなく、本当に心の底から何かを思った瞬間からセリフを出すように「嘘で芝居をしないでくれ」と言われました。

―そういう意味ではやりやすかったんですね。

早見 そうですね。ほとんどセリフのないデートシーンも多かったんですけど、タカシ役の虹郎とは雰囲気や性格がお互い似ている気がしていて、それもすごくやりやすかったですね。本当にこんなことやるのかなとは思った部分もありましたけど、割と楽しんでやっていました(笑)。

―撮影は去年の8月頃と伺っているんですけど、この時期、他の作品もあって忙しかったんでは?

早見 うーんっと…何やっていたんだろう、私。ごめんなさい、あまり覚えてないんですよ。というか、カメラの前に立ったら役に入るタイプだから覚えてないのかもしれないですけど、基本的にいろんなことに関して何も覚えていないんです。

―えっ!?

早見 頭の容量が少ないのかな。記憶を上書きしていくタイプなんです。でも以前、お世話になった李(闘士男)監督に「前日に何していたか覚えていないんです」なんて話をしていたら「早見、お前はそれでいいんだぞ、そのまま頑張れ~」って言われて、それからこれでいいんだなって思うようにしてます (笑)。

芸能界入りは有名人に会いたくて?

―女優さんってセリフ覚えるから記憶力いいと思ってたんですけど、意外ですね。ももクロを卒業されて転身されたわけですけど、なぜ女優に?

早見 目指したきっかけは正直フワフワしていて、最初はスカウトしていただいて事務所の名刺にすごい有名な人の名前がたくさん並んでいて。「もしかしたら会えるんじゃないか」くらいの気持ちで入ったんです。でも「どうして事務所に入ったんですか? 何志望ですか?」って聞かれるじゃないですか。

―はい、聞きますね。

早見 その時に「有名人に会えるから」ってなかなか言えないわけですよ(笑)。なので「女優志望です」って。でもそれがだんだん仕事も増え、ももクロをやりつつお芝居の仕事もやらせていただいた時に「私はアイドルという道ではなくてお芝居をやりたいな」ってすごく強く思いました。そこで女優として生きるためにアイドルは辞めようと。

それが最初のターニングポイントでその後、学生生活と両立していたんですけど、高3で大学進学を辞めたのが第2のターニングポイントですね。その時に「女優という仕事1本で、本気でこれでしか生きていけない」と思い始めたんです。

―今、立て続けに様々な作品に出て、いろいろな人に出会っているわけですけど、目標というか、この人はすごいなという女優さんはいるんですか?

早見 私は私だし誰かの二番煎じになってしまうのは違うと思うので、目標とは違うんですけど、実際に会ったなかで泉ピン子さんは1番印象に残っていますね。他の方もそうですけど、あの年齢まで第一線を張ってきている人達はやっぱりすごいなって思います。

―確かに次々といろんな人が出てくる中で、その席を長年守っていますもんね。

早見 それに「人と比べても意味ないじゃん」ってずっと思っているんですよ。同世代の女優さんも多いですけど、その人ならではの魅力だったり、その人がそう演じているから素敵な作品になったりするわけですし。私は私でフワフワ頑張っていたいです!

“元ももクロ”を気にしたらやっていけない

―フワフワって柔らかくていいですね(笑)。

早見 そう! フワフワ(笑)。この仕事は根詰めてやると辞めたくなってくるんですよ。嫌いになっちゃうんです。好きなのになんで嫌いにならなければいけないのって思うので、いろんなことを気にしないで周りはみんな味方だと思っています(笑)。

―なるほど。多くの記事や番組で今でも「元ももクロ」って書かれるじゃないですか? じゃあそれも特に気になってないですか。

早見 あっ、それめちゃめちゃ聞かれるんです! でも「事実だから」というだけですね。私の人生の中ですごく大事なところだったので、あれがなかったら今の私は生きていないと思うし、私が辞めなかったら今のももクロもいないと思うし。あれは私達6人のすごく大事な事柄であって、それを気にしていたら芸能界なんてやっていけないと思います(笑)。

それから「『あかりん』っていうのはアイドルの時のあだ名だからこれからは早見あかりさんって呼びますね」っていってくれるファンの方もいらっしゃるんですけれど、「ももクロに入る前から『あかりん』って呼ばれてたんだけどなぁ」って思ったりもします(笑)。もちろん気に掛けていただけるのは嬉しいですよ!

―“元ももクロ”あっての早見あかりということですね。今も十分に活躍されていますけれども、では最後に今後の目標をお願いします。

早見 お芝居はもちろんですが、いつかいろんなことをマルチに活動していていけたらいいなと思いますね。何よりも女性として強そう、同性から見てカッコよくなるのが目標です。その時は男性の皆さんにもカッコいいと言っていただけると嬉しいです!

■『忘れないと誓ったぼくがいた』9月2日よりブルーレイ&DVD発売、18日よりレンタル開始(発売元:日活 販売元:ハピネット)(C)2006平山瑞穂/新潮社 (C)2015「忘れないと誓ったぼくがいた」製作委員会(取材・文/週プレNEWS編集部 撮影/五十嵐和博)