父娘で国後島、色丹島のビザなし交流を報告。娘の鋭いツッコミに父もタジタジ

鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」

前編(「新国立競技場とほぼ同額! 2310億円をウクライナにバラまく安倍政権は壊れている」)に続き、今回のテーマは安倍政権の末期症状ぶりを検証。このまま日本外交はどんどんヤバい方向へ進むのか?

■伊勢志摩サミットに隠された外務省の野望

佐藤 ところで、来年の伊勢志摩サミットに安倍政権はロシアのプーチン大統領を呼ぼうとしています。

日本の外務省はそのサミットをG7とはひと言も言ってない。これはロシアを含めたG8になる含みを持たせているわけです。しかし、対ロ制裁を解除してロシアを招くような戦略、そのためにアメリカを説得するとか、そういう準備をしているようにはとても見えない。

さらに、安倍首相はウクライナ訪問の時に、ポロシェンコ大統領に「ロシアへの制裁を維持しつつ、ロシアが分離派(ウクライナの親ロシア分離主義勢力)に対して建設的な役割を果たすよう、対話と圧力で接する」と言っています。

対話と圧力で接するというのは、ロシアを北朝鮮と同じ扱いにしているということなんですけどね。

とにかく、日本の未来は今ひとりの外務官僚の力量にかかっています。次期外務次官候補の杉山晋輔外務審議官です。

私は以前、『月刊現代』に「外務省犯罪白書」という連載を持っていました。杉山さんはその中で結構頑張って活躍されていた方で(笑)。今、この連載の出版準備を進めてるんですが、杉山さんが事務次官になったらお祝いとして、その時の原稿に加筆して、出版しようかと。

真っ黒い表紙にして、タイトルは『外務省犯罪黒書』。帯には「杉山さん、頑張ってください。鈴木宗男」とつけましょうか(笑)。

この本を読むと、外務省の外交がなぜうまくいかないのかがわかります。結局、「外交は人」なんだということを、この本で明らかにしたいと思ってます。

漁業に対する取り締まりでロシアがわかる

■父娘による北方領土ビザなし交流レポート(鈴木貴子議員、会場到着)

鈴木 最初に申しましたが、私と鈴木貴子代議士は、7月23日から27日まで、ビザなし交流で国後島と色丹島に行ってきました。

7月17日に千島列島東側で操業していた「第10邦晃丸」が拿捕(だほ)されたので、24日に貴子代議士と共に、国後島沖に停泊中の漁船の中で乗組員と船長さんに面会しました。

佐藤 今までの基準に比べると、ロシア当局の対応はちょっと厳しい気がしますね。

鈴木 乗組員の方々も、ウクライナ情勢など日ロ関係の厳しさがあっての拿捕ではないか、と言っていました。

佐藤 漁業に対する取り締まりが厳しくなる時は、北方領土へのスタンスも厳しくなりますからね。だから日本の漁業に対して、どういう態度を取るかでロシアの北方領土に対する姿勢が大体わかります。

貴子 今回、私は色丹島を父と車で移動したんですが、23歳のドライバーが「ディーゼル発電所、病院の診療所として使われているプレハブ、これらは宗男さんが尽力して造られたもので、島内で宗男さんを知らない人はいない。北方四島で一番有名な日本の政治家は鈴木宗男だ」と語っていました。

ビザなし交流は今年24年目で、23歳の彼は当時の話をもちろん知らない。その彼が鈴木宗男を知っているということは、代々語り継がれる仕事を鈴木宗男はしてきたんだなと、あらためて実感いたしました。

政治家としては評価に値する本物ですが…父親としては、家庭で政治の100分の1でもいいから、心を向けてくれたらよかったのに…と、そんなことも思ったビザなし交流でありました。

鈴木 (苦笑)

(取材・文/小峯隆生 撮影/五十嵐和博)

■「東京大地塾」とは?毎月1回、衆議院第二議員会館の会議室を使って行なわれる新党大地主催の国政・国際情勢などの分析・講演会。鈴木・佐藤両氏の鋭い解説が無料で聞けるとあって、毎回100人ほどの人が集まる大盛況ぶりを見せる。詳しくは新党大地のホームページへ

●鈴木宗男(すずき・むねお)1948年生まれ、北海道出身。新党大地代表。2002年に国策捜査で逮捕・起訴、2010年に収監される。現在は2017年4月公民権停止満了後の立候補、議員復活に向け、全国行脚中!

●佐藤優(さとう・まさる)1960年生まれ、東京都出身。外務省時代に鈴木宗男氏と知り合い、鈴木氏同様、国策捜査で逮捕・起訴される。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として活躍