清宮幸太郎(早稲田実業)とオコエ瑠偉(るい・関東一高)、ふたりの強打者の活躍がクローズアップされた今夏の甲子園。

開催中のU18W杯でも注目が集まっているが、ではプロ各球団のスカウトたちの目に、投手の評価はどう映っていたのか?

まずは前評判通り、優勝投手となって“高校No.1左腕”の呼び声も高い東海大相模(神奈川)の小笠原慎之介

初戦で9回途中から登板し、スカウトのスピードガンで自己最速の152キロをマーク。甲子園では2005年の辻内崇伸(元巨人)、09年の菊池雄星(西武)に次ぐ150キロ左腕とあって、スカウト陣の鼻息は荒い。セ・リーグ某球団スカウトはこう言う。

「(ドラフト)1位は間違いないし、競合だってある。やはり左で150キロを出せるのは魅力ですよ。粗削りな部分はありますが、ベストなボールだけで判断すれば、プロで速球派として鳴らしている左投手よりいい真っすぐを投げます」

この小笠原とは対照的に、同じ東海大相模のもうひとりのドラフト候補・吉田凌の評判はいまひとつ。昨夏の神奈川予選決勝で大会記録の20奪三振をマークした右腕だが、今大会ではバラつきが激しかった。

初戦は9回途中1失点と好投したが、準々決勝では4回途中3失点でKO。続く準決勝では7回1失点と粘ったものの、プロの評価ではチームメイトの小笠原に大きく水をあけられている。パ・リーグ某球団スカウトも複雑な表情を浮かべる。

「見たまんまです…としか言いようがないですねぇ」

ただ、それでもプロ志望届を提出すれば指名はあるという見方が強い。

1回戦惜敗もスカウト陣が色めき立った!

今年春のセンバツで福井県勢初の全国制覇を果たした敦賀気比・平沼翔太の評価も揺れている。本人も「本調子ではなかった」と語ったように、2回戦で花巻東に8点を献上し、早々と甲子園を去ってしまった。平沼の取材を続けたスポーツライターが言う。

「彼は敗戦後、『一番上(プロ)でやりたい。自分を磨いて、いいピッチャーになって、この場所に戻ってきたいです』と話していました。でも平沼はチームの4番を打つほどバッティングがいいので、投手より野手として指名されるかもしれません」

初戦で自己最速の146キロをマークし、チームを決勝進出へと導いた仙台育英・佐藤世那(せな)もスカウト評は微妙なライン。前出の東北地区担当記者はこう言う。

「明治神宮大会で優勝した昨年秋が評価のピークで、その後は右肘を故障するなど『伸び悩んでいるね』というスカウトの声を耳にしますし、すでに指名リストから外している球団もあるようです。本人はプロ一本に絞っているみたいですが…」

有力選手が評価を落とす一方、スカウト陣を色めき立たせたのが、白樺学園(北北海道)の背番号「10」、中野祐一郎だ。同校は1回戦で惜敗したが、この試合を取材した記者が語る。

「白樺学園vs下関商(山口)は第4試合だったので、通常ならスカウト陣は試合の途中で帰ってしまうものなんです。でも6回から登板した中野のボールを見たスカウトたちは『こんないいピッチャー、見ないで帰れるか!』と言って残っていました」

前出のパ・リーグ某球団スカウトは中野をこう評する。

「真っすぐは140キロに満たないけど、ボールの回転がすごくいい。プロに行ったら面白いと思いますよ」

今年のドラフト会議は日本シリーズ直前の10月22日に開催される予定。誰がどこに行くのか、今から楽しみだ。

(取材・文/田口元義)

■週刊プレイボーイ36号(8月24日発売)「『甲子園の怪物たち』プロスカウトの赤マル急上昇リスト」より