2018年ロシアW杯アジア2次予選を戦っている日本代表。

今回のカンボジア、アフガニスタンとの2連戦に招集されたメンバーを見て感じたのは、ハリルホジッチ監督には想像以上に余裕がないんだなということ。

メンバー発表会見の席では「3年後のW杯(本大会)を見据えている」と話していたけど、23人のメンバーの顔ぶれにフレッシュさはなく、3年後を考えて選んだというよりも目先の勝利にこだわったように見える。

相手はグループ最下位を争うだろう2ヵ国。極端なことを言えば、欧州組をひとりも呼ばなくても勝てるくらいの実力差がある。今回、リオデジャネイロ五輪世代から選ばれたのは遠藤(湘南)ひとりだけど、それこそ3年後に向けて選手間の競争意識を煽(あお)るためにも、僕はもう少し若手を招集するのかなと予想していた。

確かに、6月の初戦のシンガポール戦にまさかの引き分け。最終予選進出にはもう1敗も許されない状況だ。しかも8月の東アジア杯でも1勝もできなかった。2次予選最大のライバルであるシリアとの対戦(10月8日)を前に、ハリルホジッチ監督は自信と勢いを取り戻すことを最優先に考えたのかもしれない。でも、それなら「3年後…」なんてミエを張らずに、素直にそう言えばいい。

それ以外でも、今回は選手の選考基準がわかりにくかった。

DFの米倉(G大阪)の招集理由は「東アジア杯で見せてくれたパフォーマンスによって選んだ」「いいプレーをすれば代表に入れるという(国内組への)メッセージだ」というもの。だったら、なぜ東アジア杯で2得点のMF武藤雄(浦和)を外し、同大会でパッとしなかったFW永井(名古屋)を選んだのか。

ここのところ代表でもJリーグでも結果を出せていない宇佐美(G大阪)についても「今、疲労がある」「数ヵ月すればかなりよくなる」と言うくらいなら無理して呼ぶ必要はなかったんじゃないか。

GK川島の落選は当然

また、FWの選考でも大久保(川崎・33歳)と豊田(鳥栖・30歳)のふたりについて、年齢を理由に選ばなかったという趣旨の発言をしながら、29歳の興梠(浦和)を選んでいる。

プレッシャーのかかる状況を迎え、ハリルホジッチ監督にも多少の迷いやブレが生じているのかもしれない。でも、最終予選はもっと大変。2次予選の段階からそんな精神状態で大丈夫なのかと不安になってしまった。

なお、GK川島(9月2日時点でフリー)の落選について。この判断は当然だ。10年南アフリカW杯以来、ずっと代表の正GKだっただけに一部では「サプライズ」という報道もあったけど、やはりサッカー選手はプレーしてなんぼ。所属チームのない選手を代表に選ぶべきじゃない。

もちろん、実力的には問題ない。GKというポジションの特殊性を考えれば、これまでのベルギーでの成績は立派。また、代表でも「ポカをする」といわれることもあるけど、彼に救われた試合もある。所属チームが決まって、試合勘が戻りさえすれば、当然、ハリルホジッチ監督の選択肢に入るはず。

今、一番心配なのは、このままチームが決まらずにズルズルと時間だけが過ぎてしまうこと。彼は欧州にこだわっているようだけど、今後はJリーグ復帰も視野に入れるべきじゃないかな。喜ぶファンも多いと思うしね。

(構成/渡辺達也)