中国・天津で発生した大爆発事故に日本人は驚いたが、実は現地ではあらゆる爆発が日常茶飯事。有毒物質だらけの化学工場に加え、国家プロジェクトの宇宙ロケットでさえも、爆発事故を起こしている。

すでに今年だけで大規模な工場爆発は4回起こっている。4月には福建省ショウ州市の工場で50km離れた先でも揺れを感じるほどの爆発。次いで8月12日の「天津大爆発」。

そして、これがようやく鎮火するところだった22日、山東省シ博(しはく)市の化学工場で周囲1km圏内のガラス窓が割れるほどの大爆発が。続いて同じく山東省東営市の化学工場でも爆発事故で13人が死亡と発表された。

それにしても、なぜ中国ではここまで爆発事故が頻発するのか? 現地の事情に詳しいジャーナリストの程健軍(チェン・ジェンジュン)氏が解説する。

「巨大工場など莫大な利益を生む施設は、中国では必ずといっていいほど汚職の温床となっております。建設の許可、操業の認可、住民運動の制圧…など、そのすべてに『小虎(シャオフー)』と呼ばれる汚職官僚が関与して私腹を肥やし、さらなる経済権益を求めていく。

そんな状況では建設業者や運営業者も『小虎に倣(なら)え』と汚職、中抜きが横行します。結果、当初はどんなに安全で慎重なプロジェクトであっても工事は手抜きとなり、あるべき設備が省略され、部品・材料も粗悪品に替えられます」

こうした悪習を考えると、もはやすべての工場が危険なのかもしれない。

「そして操業開始後も従業員のくわえたばこやポイ捨てなど基本的な火気安全管理さえ徹底されない。そもそも中国人は爆竹遊びが大好きですし、火に対する危機感が薄いですからね。そんな状況でひたすら増産を続けるわけですから事故が起こらないほうが不思議です。

また、そもそも中国の街では身近な所で小規模な爆発事故が頻発しています。人口規模に下水道インフラが追いついておらず、マンホールの下には常に人糞由来のメタンガスが充満しているため、しばしばポイ捨てたばこの火などがこれに引火。マンホールのフタが吹き飛ぶような爆発事故が起きるわけです。もう人民も慣れっこなので、爆発に対して鈍感になっていますね」

中国のロケットはもう二度と現地で見たくない

そんな爆発大国・中国でも、とりわけ有名(?)な事故が19年前に起きている。

1996年2月14日、中国は国の威信をかけて各国プレスを四川省の西昌(せいしょう)衛生発射センターに招待し、新型ロケット「長征3号B型1号機」の打ち上げに臨んだ。ところが、ロケットは打ち上げ直後に機体が傾いてコントロールを失い、発射からわずか22秒後に近くの村めがけて落下してしまったのだ。

当時、現地で事故を目撃したアメリカ人宇宙開発技術者はこう語る。

「あの時は、夜空が真昼のように明るくなるほどの大事故だった。国営メディアの新華社は死亡者6人、負傷者57人と発表したが、実際には打ち上げを見物していた数百人の村人が建物ごと消えてなくなったんだよ…」

現在、中国では各地で18もの人工衛星プロジェクトが同時進行しており、これに民間の商業打ち上げも加えれば、毎週のようにロケットが打ち上げられている。

「中国のロケットは燃料に猛毒の四酸化二窒素と、猛烈に引火しやすい非対称ジメチルヒドラジンを使用している。正直、もう二度と現地で見る気にならないよ」(アメリカ人技術者)

ちなみに、中国ではロケット打ち上げどころじゃない「近未来技術」の研究も進んでいるという。世界では欧州合同原子核研究所(CERN)が先行して研究を進め、日本でも1兆円の巨大プロジェクトが計画審議中の大型ハドロン衝突型加速器による高エネルギー物理実験だ。

「理論上は人工的にブラックホールをつくり出せるとさえいわれるこの分野の研究は、慢性的なエネルギー不足に悩む中国にとって、まさに“ドリームプロジェクト”。現在、北京の中国科学院高能物理研究所(IHEP)が中心となって世界最大の超大型円形加速器『CEPC』の建設を計画しています。ちなみに建設費は欧米や日本の予算の約半分、35億ドル(約4340億円)という激安価格です」(前出・程氏)

この巨大加速器に関しては、ヨーロッパでは「制御不能な極小ブラックホールの生成によって大爆発とともに地球そのものが消滅する可能性すらある」という理由から、フランス高等裁判所と欧州裁判所に実験の中止を求める訴訟が起こされている。

それを工場の爆発事故が頻発する中国が進めるとは…不安は尽きない。

(取材・文/近兼拓史)

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