10月をメドに国政新党を立ち上げる――。橋下徹大阪市長の発言に政界が大騒ぎとなった。しかも、離党表明の際に「維新の党を割るようなことはしない」と断言した翌日のこと。一体、橋下市長の狙いはなんなのか?

まず考えられたのが、11月22日に行なわれる大阪府知事と市長のダブル選挙で、再び大阪都構想の是非を問うための話題作りだ。実際、橋下発言によって、注目度の低かった枚方市長選の関心が一気に高まり、大苦戦していた維新候補が2000票差で逆転勝利を収めた。

すでに「政界を引退する」と公言している橋下市長だが、その影響力は衰えるどころか、ますます高まっているようにさえ感じられる。では、この次に動き出すのは?

「まずは11月22日の大阪府知事、市長のダブル選挙に勝つこと」と指摘するのは、ジャーナリストの川村晃司氏だ。

「このダブル選挙に最強の候補を立て、何がなんでも勝利する。もし負けるようなことがあれば、橋下市長も大阪維新の会もそこで終わりかねません。そのため、松井府知事が大阪市長選に出馬することもあり得ます。そして空席になった府知事選には知名度の高い候補を擁立する。私自身はないと思っていますが、橋下市長と交友が深いニュースキャスターの辛坊治郎氏を担ぎ出そうという動きも一部にはあるようです」

ただ、ダブル選の勝利は序の口。橋下市長はさらなる野望を抱いているはずと、川村氏は言う。

「それは自公と大阪維新の会3党による連立政権づくりです。今回の離党、新党設立の動きの後ろに官邸がいるのは間違いありません。戦後70年談話をきっかけに安倍政権の支持率は再び上がりました。『安倍批判は底を打った』というのが官邸の判断です。そこに維新の党を割って出た橋下さんの新党が加われば安定勢力となり、安保法制を仕上げるだけでなく、憲法改正もできると安倍首相は考えているのです。

“壊し屋”の異名もある橋下さんですが、そんな官邸の意向をよくわかっているから、新党は第2自民党的な存在として歩むのが得策と、今は思い定めているのでしょう」(川村氏)

橋下市長の言葉は信用ならない

その後、安保関連法案を強行採決、再び政権への支持率は下がっている。逆に橋下&新党を取り込むニーズは増しているかも…。

元経済産業省官僚の古賀茂明氏もこう同意する。

「橋下さんの離党以前から、維新の党内では関西系と、松野代表や江田氏、非関西系間の対立がありました。いずれは分裂することになると、橋下さんも覚悟していたはずです。その意味で、今回の離党は橋下さんにとっては予定通りの行動でしょう。

長期政権を狙う安倍内閣はいずれ改造人事に着手します。来年夏の参院選に合わせて、女性幹事長を誕生させるなど人気取りの改造を行なうかもしれません。その時、安倍自民との連携をさらに深めるため、橋下さんが民間人として入閣するということもあり得る。その際は総務大臣あたりでしょう」

「民間人として入閣」ならば、「政界引退」とは矛盾していないことになるのだろうか。いずれにせよ、橋下市長の言葉は信用ならないということは今回の騒動でもはっきりした。目的が達成できればそれでいいと腹をくくっているのかもしれない。しかし長い目で見たら、政治家としてマイナスだと思われるのだが…。

(取材・文/本誌ニュース班&ボールルーム)