我慢のレースを続けていたマクラーレン・ホンダのアロンソも、ついに堪忍袋の緒が切れた!

いよいよ今月27日に鈴鹿サーキット(三重県)で決勝レースが開催されるF1日本GP。

だが、7年ぶりにF1復帰した名門マクラーレン・ホンダが絶不調! 本来なら大きな盛り上がりが期待されるところだが…一体、何が起きているのか? 

開幕前テストから何度も強気な発言を繰り返してきたホンダだが、肝心の結果といえば、初戦から依然として下位チームの域を出ない…。前編(「F1日本GPも惨敗必至!マクラーレン・ホンダの過信」)で指摘した通り、不調の原因が実力、準備不足にあるとすれば残念だが、それで済まないのがホンダ製パワーユニット(エンジンと運動・熱エネルギー回生のモーターを組み合わせたハイブリッドエンジン。以下、PU)を現在最強のメルセデスからホンダに変更したマクラーレンだ。

後半戦が始まる前までは、事実上のスポンサーでもあるホンダから巨額の資金提供を受けていることもあり、直接的なホンダ批判をしてこなかった。

しかし、一向に改善しないホンダのPU開発と、前編で取り上げた根拠のない発言を繰り返す新井康久F1プロジェクト総責任者の態度に堪忍袋の緒が切れたのか、イタリアGPで行なわれたチームの記者会見では、アロンソがホンダのPUについて「直線だけで3秒も遅い」と発言。

海外のジャーナリストからも新井氏に対して「ホンダとしてドライバーに謝罪する気はないのか?」「不振の責任を取って辞任する気はないのか?」など、厳しい質問の集中砲火が浴びせられた。

この状況を本誌F1解説委員としてもおなじみの元F1ドライバー、タキ・イノウエ氏が次のように語る。

「あの会見の翌日には、イギリスの一部メディアに『マクラーレン、新井氏の解任をホンダに要求』といった記事が掲載されるなど、ここにきて一気にホンダへの風当たりが強まっています。これはいわゆる『新聞辞令』ですね。マクラーレン側がメディアを使って意図的にホンダにプレッシャーをかけているのです」

分配金とスポンサーの問題も…

さらにイノウエ氏はこう続ける。

「新井さんはこれまでも楽観的な見通しや意味不明のコメント、一切の責任を認めない強気な態度で周囲を呆然とさせてきました。中でもベルギーGPで大見栄を切って投入した改良型エンジンがスカってしまったのに『我々のエンジンはルノーより25馬力上回っている』なんて言いだしたのはマズかったですね。

おそらくアレで、マクラーレン代表のロン・デニスもブチ切れたんだと思います。なぜならルノーに対して25馬力も勝っているのに、そのルノーのPUを搭載したレッドブルやトロ・ロッソに歯が立たないというのなら、それはマクラーレンの車体がタコだといっているのと同じことですからね…(汗)」

さらにイノウエ氏は、分配金とスポンサーの問題もマクラーレン側を激怒させている理由だと推測する。

ホンダの糞(くそ)PUでふたりのチャンピオンドライバーのシーズンをドブに捨て、このままのランキングで終わることになれば、成績などに応じて各チームに支払われる分配金が激減してしまうでしょう。

金額によってはチーム運営に大きく関わってきます。その上、この成績不振では新規スポンサーの獲得もままなりません。大損失は確実だというのに、無責任でトンチンカンな発言を繰り返す新井氏をこれ以上放置できないと考えたに違いありません」

もちろん、仮に新井氏の更迭が実現したとしても、それでいきなりホンダが強くなるわけではない。今年の鈴鹿でマクラーレン・ホンダの名にふさわしい活躍を望むのは難しそうだが、ここはひとつ、この苦境をバネに来シーズン以降に向けた、いい流れができることを期待するしかない。

ちなみに、日本GPに関しては浜島氏、イノウエ氏ともに「ハミルトン、ロズベルグのメルセデス勢が圧倒的に優位」との予想だが、浜島氏は「スタートで何か起きれば、レースが面白くなる可能性もあります。注目はフェラーリのベッテルとレッドブルのリカルドですね」と語る。

イノウエ氏は、「ここにきてフェラーリが大きく進化している」と跳ね馬に期待しつつ「伏兵はロータス」との見方を示す。まずはオープニングラップ、スタート直後の1コーナーに注目である!

(取材・文/川喜田研)