自民党で安倍首相以上に存在感を増している議員がいる。“自民党の裏番長”ともいわれる二階俊博自民党総務会長だ。

実際、先の自民総裁選不戦勝でも大きな存在感を示したとされる(参照記事→「自民総裁選不戦勝を陰で操った裏ボス・二階総務会長の凄味とは…」)。

その存在感は日本を超え、中国にまで及んでいる。実際に今年5月、二階氏が訪中した際、習近平国家主席は歓迎レセプションに顔を出し、満面の笑みで30分近く二階氏と会話した。

2014年11月に安倍首相が訪中して首脳会談を行なった時、習主席が露骨に不機嫌な顔をしていたのとは大違い…。一体、この差は何か? 政治ジャーナリストの有馬晴海(はるみ)氏が言う。

「誰もが『この待遇の差はなんだ』と思ったでしょう。だから、私も二階さん本人に聞いたんです。『二階さんと安倍さんはどこが違うのか』と。そしたら、『いやいや、安倍首相と私はどこも違わない。スタンスも一緒です』と返ってきた。自分を大きく見せるとか、おごり高ぶる素振りはみじんも見せない。これが二階さんの本質です。

習主席は安倍首相を冷遇し、二階さんを厚遇した。この事実に政治家としての安倍首相は内心傷ついているはず。そんな時、二階さんは『安倍さんと私は一緒』と言って首相を立てた。政界は地獄耳です。このやりとりはすぐに首相に伝わります。そして二階さんを尊敬し、彼を味方につけるべきだ、敵に回したら怖いと思ったでしょう。

二階さんはひとつひとつの言葉を吟味して発言します。だからひと言が重いし、政治的影響力も持つ。まさに“自民党の長老”と呼べる人です」

党内からも悪い評判がほとんど聞こえてこない二階氏。だが、彼の政治姿勢に対しては厳しい評価をする人もいる。ジャーナリストの横田一(はじめ)氏は言う。

「二階さんは典型的な公共事業バラマキ型の政治家です。地元・和歌山で民主党政権時代に凍結されていた阪和自動車道4車線化事業も復活させましたし、今は南海トラフ地震の防災対策を掲げて防潮堤の整備に力を入れています。彼はとても古くさい土建族議員の生き残りだと思いますね」

二階氏は典型的バラマキ型政治家

政府は8月14日、今後10年の国づくりの指針となる「国土形成計画」を閣議決定した。

その内容は、人口減と高齢化が進む中、医療、福祉、商業などの機能を地方中核都市に集中させ、地方を活性化しようとする「選択と集中」戦略だ。しかし二階氏はこの計画に「国土の均衡ある発展」というフレーズをねじ込んでしまう。

この件を古賀茂明氏は本誌連載『古賀政経塾!!』で次のように解説する。

「この文言は“選択と集中”とは正反対。『均衡ある発展』とは国土整備に当たり、インフラなどの公共事業を全国一律にバラまくことを意味する(略)。二階総務会長は国交省の方針をひっくり返す形で、このフレーズを押し込んでみせた」(本誌36号

二階氏のバラマキへのこだわりは、ここまで強い。建設業界、土木業界をバックとした集金力により、自民党内で盤石の地位を築いたのだ。その裏ボスが日中関係でも存在感を増し、今後の政界でますます影響力を強める存在として見逃せないわけだ。

週刊プレイボーイ』39・40合併号では、さらに二階氏の実力や素顔を徹底紹介。そちらもお読みください!

(取材・文/畠山理仁)

週刊プレイボーイ39・40合併号(9月14日発売)「安倍政権の裏ボス『二階俊博』大研究」より