90cmオーバーが! 釣り上げたのはどっちだ!?

週プレ釣り部とスポーツ報知釣り記者T氏の太刀魚釣り対決もいよいよ終盤! 数では一歩リードする週プレ釣り部だが、その決着は!?

***T氏の初魚信(アタリ)からしばらく経ち、かくして対戦は最終ラウンドを迎えた。

ここまで、ファーストヒットは編集記者に持っていかれるわ、日本海仕込みのヒットルアーは出し損ねるわ、コンスタントに発生するオマツリで時間をロスるわで、釣り記者たる本来の実力はまったく影を潜めている。

現段階で私が5匹釣り、T氏も2匹に数を伸ばした。ただし、今回は3匹のサイズ勝負。私もT氏もサイズではほとんど差はない。特大サイズを釣られてしまえば負けてしまうため、まだまだ気は抜けない。

ここらで起死回生のドラゴン級を上げなければこの企画が沈んでしまう…。そう思った私は、これまでの経験と予測のもと、考えていた案を使うことに。

それはエサ釣りのルアー使用だ。太刀魚は光に反応しているとよく言われる。今回使っているエサの生サバも白い方を針掛けし、銀色の部分が動いて光がチラつくようにしている。この習性を利用し、より目立つようにオモリをルアーに変えた。

隣を見るとT氏が真剣な表情でリールを巻いている。これはきたなっ! ようやく水面に見えたのか、何やら「タモッ、タモッ」と叫ぶ。

大型かっ! 水面を覗いてみると、かなりデカイっ! 今までのサイズとひと目で違いがわかる大型が見えた。慎重にタモを出し、無事タモに収まった。

「いやぁ~、やられたぁ~! これは大きいですね、今日イチですねっ!」

言葉と顔では称賛を表しているが、内心では「これはヤバいなっ!」と焦心に駆られる。T氏のリミットメイクは確定された。私の推測では、T氏が今釣った大型は確実に私の釣った大型より大きい。ということは、他の2尾の長さで私が上回らないと負けが決まってしまう。

T氏は残り時間をよそに、その太刀魚を見ているが、その顔は、ほっとして愁眉(しゅうび)が開いたような穏やかな顔つきだ。大仏様の顔だ。その後もT氏はさらに数を伸ばしてきた。さっきのような大型はこないがレギュラーサイズを連発。

わずか8cmの差で…

太刀魚からしっかりエサが見えるようにルアーを使用したが…

一方の私といえば、秘策が通じず、焦りが濃くなってくる。そうこうしているうちに潮が速くなってしまい、着底確認もままならない。何回かやって当たらないので、またエサ釣りに戻すような悪循環が続いた。なんとか2尾を追加したがストップフィッシュ。

さぁ、勝敗はどっち!

<結果発表> スポーツ報知:89cm・85cm・84cm 計258cm 週プレ釣り部:83cm・88cm・79cm 計250cm

……わずか8cmといえど、軍配はT氏に上がった。

「いや~負けてしまうとは…。看板とか賭けてなくてよかったですね」

編集K氏はとんちんかんな安心をしているが、そういう問題ではない。言い訳ではあるが、釣り対戦という初めての試みに過去の自分を振り返ると、いつも周りを気にして釣っていたのかと思う。自分が釣れないと、つい周りを見てしまう。試練を受け入れないというか、集中できない自分がいた。釣りを終えた時、一体、自分は何をしたのか、これが思い出せない。

以下の文は著名な釣り作家の「小田淳」という人が書いた著書『釣術秘聞』(叢文社)からの抜粋である。

“真の釣り師としての方向付けは、無心の中にあって釣りを習得し、時候の判断を適格に知り、勘の冴えを磨くことにある。冷静に、客観的に体得し、自然の中にあって釣技が上達していくものでなくては、本物として完成されないもの。自然の流れの動向を知り、わが身をその中に抵抗なく置くことを知る。時候を見ることに長けている魚たちは、本能的に自然が動くままに身を委ねる術を心得ている。”

“釣りの奥義とは、かくあるものと表現し難いものだ”

次回はもっともっと、無我の境地になって、心底楽しみたいと思った。

この日の釣果。数はまずまずだったが…残念!