韓国が中国に露骨なすり寄りを見せているーー。

その象徴的なシーンが9月3日、中国・北京であった「抗日戦争勝利70周年式典」。韓国の同盟国であるアメリカ、日本など多くの国々が参加を見合わせる中、朴槿恵(クネ)大統領は中国の習近平国家主席と並び、軍事パレードを行なう人民軍兵士に大きな拍手を送ったのだ。

この軍事パレードを現地で取材したフォトジャーナリストの柿谷哲也氏が語る。

「韓国内のメディアも朴大統領が参加を検討している段階では慎重論が多かったようですが、いざ行くと決まってからは歓迎ムードが支配的でした。しかも、韓国からは朴大統領に加え、一部では彼女の後継候補とも目される潘基文(バンギムン)国連事務総長も参加。率直に言って、中国の『属国』になったのか…と思えるような光景でした」

そんな中国すり寄りの大きな原因となっているのが韓国経済の過度な対中依存だ。2013年度の対中国貿易額は輸出入合わせて約2289億ドル。これは同じ年の対アメリカ(約1035億ドル)、対日本(約946億ドル)の合計をも上回る。

日米が様子見をしている中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)へも早々と参加を表明した事実が物語るように韓国は今、経済面で急速に中国に取り込まれつつあるのだ。

こうなると、経済面だけでなく安全保障=軍事面でも中国へのすり寄りが始まってもおかしくない。前出の柿谷氏が続ける。

「近年、中国軍は韓国軍との合同演習の機会を探って、お互いの訓練の視察や将校レベルの会議が相次いで行なわれました。そしてこの秋には、両国が海賊対策で派遣している艦艇がアデン湾で合同訓練を行なうことになっています」

では、こうした状況が中国にはどんなメリットをもたらすのか? 中国にとって黄海は東シナ海、太平洋の出入り口となる重要な海域だ。しかし、黄海には韓国海軍が配備され、中国の軍事活動を牽制していた。

しかし、その韓国が中国にすり寄れば、状況が一変する。

最悪の仮想敵は『中韓連合軍』

中韓の政情に詳しいジャーナリストの古是三春(ふるぜみつはる)氏がこう警告する。

「もしここで中国軍がフリーに行動できるようになると、米軍基地を抱える沖縄や九州の海・空自衛隊基地に対して大きな軍事的アドバンテージになる。今後、中韓間で安保上の協力関係が結ばれた場合、中国はまず、黄海での軍艦および公船の行動完全自由化を要求すると予想されます」

またその影響は対北朝鮮にも及び、朝鮮半島が中国のコントロール下に置かれるという。こうなると、在韓米軍を展開するアメリカも黙ってはいられない。戦後の東アジアでは米軍が常に軍事的プレゼンスを利かせ、安定を確保するための線引きの役割を担ってきた。それが崩れた時に起きたのが朝鮮戦争やインドシナ戦争、ベトナム戦争だった。

「そうした歴史を踏まえれば、今後アメリカが『米軍の存在が半島の混乱を招き、それが自国の国益に反する』と判断した時には躊躇(ちゅうちょ)なく韓国を中国の手に委ね、撤退するでしょう。もちろん、各国の相互経済依存に鑑みれば断行などということはあり得ませんが、軍事的な意味では、日本列島が対中国、対ロシアの最前線となる『新冷戦』の時代が到来することになります」(前出・古是氏)

韓国から米軍が撤退し、黄海を中国軍が自由に行き来する状況になれば、当然、中国と尖閣問題を抱える日本にも激震が走る。米陸軍将校として、米韓合同軍事演習に参加した経験のある飯柴智亮(いいしばともあき)氏が言う。

「最悪を想定した場合の仮想敵は『中韓連合軍』になるわけです。自衛隊は陸上戦力よりも海・空を集中的に増強する必要に迫られるでしょう」

凄まじい軍拡を進める中国に対し、その際に必要な日本の防衛予算は今の3倍、約15兆円にも膨らみかねないというが…。

東アジアの軍事バランスをも崩しかねない露骨な韓国の中国すり寄り…「朴政権の外交判断は非常に危うい」と前出の古是氏も危惧する。

発売中の『週刊プレイボーイ』43号では、さらにこの“危ういすり寄り”について徹底リポートしているのでお読みいただきたい。

●週刊プレイボーイ43号(10月13日発売)「韓国が中国の“属国”のなる日」より