今回はふたりのターニングポイントとなった90年代中盤、阪神大震災での深イイ話!

90年代中盤、低予算を逆手に取ったハメ撮りでカン松さんがブレイクする一方、バク山さんは社会情勢を反映したAVを撮り始め注目されるようになっていた。

―単体女優の本番プレイがAV業界を席巻していた頃、山下さんは「社会派AV」とも評される作品を撮られてますよね。阪神・淡路大震災の直後の神戸で撮影した『18歳 中退してから...』は、各方面で物議を醸しました。

山下 ...いやぁ(苦笑)。社会派なんてつもりは一切なくて。まじめな話になりますけど、俺が撮るか撮らないかの基準はいつだって「人」なんですよ。『18歳...』を撮ったのだって、何度か仕事をしてる男優が被災したからなんで。震災直後、ごく当たり前に「彼は今どうしてるんだろう?」って興味が湧いて。

―被災地にAVを撮りに行くなんて不謹慎だ、という声も上がりましたが...。

山下 けど、それで自分の考え方や姿勢を変えることはなかったですね。俺はシチュエーションじゃなくて人間を撮りたいだけなんで。

松尾 どんな作品だったっけ。

山下 えーっとね、俺が訪ねた男優は当時20代前半かな。物腰が柔らかくていいやつなんだけど、男優として立派かっていったら全然ダメで、真正包茎で挿入もうまくない。

松尾 不器用な男でね(笑)。

山下 セックスしてたら皮が切れて血だらけになるような人です(笑)。そんな彼が母親とふたりで暮らしてる家が地震で潰(つぶ)れて。避難所で母親が「倒壊した街から空襲と同じにおいがした」って話をしてくれて、俺はそれにうなずきながら息子を外に引っ張り出して、女優とセックスさせた(笑)。

松尾 山ちゃんはそいつがどんなセックスすんのかってことに興味があんだもんね。

山下 まあ、その時も挿入はへたでしたけど、ちゃんと射精はできましたよ(笑)。

松尾 いつも通りのセックスをしてたわけね(笑)。

山下 その後、瓦礫(がれき)の上を歩きながら男優の実家に女優と俺と3人で向かったんです。実家は全部燃えちゃってたから、敷地が見下ろせる高台に上ったんですよ。そしたら男優の家の敷地に不自然にゴミがたくさん投げ捨てられてて。要するに、近所のイジメを受けてる家庭だったんだけど、結局そういう悪意って震災関係なく、常にあるなって。

震災から一週間後のテレクラへ

―そういう意味でも人間の本質みたいなものを切り取る作品になったわけですね。

山下 こっちとしては知ってる男優のセックスを撮りに行っただけなんだけどね。

松尾 実は、僕も同時期に被災地に行ってるんですよ。ライフワークじゃないけど、テレクラを回りました。神戸はテレクラも壊滅状態だったけど、お隣の加古川は無事で。

山下 営業してたんだ?

松尾 震災からまだ1週間なのにさ、加古川のテレクラはものすごい電話が鳴ってたの。早取り制の店で、他の客はみんなどんどんアポ取って外に出てくんだけど、俺だけ全然ダメで。どうにかその日の晩にひとり捕まえて、一発ハメ撮りしましたけど(笑)。

山下 ヤッたんだ(苦笑)。

松尾 三宮のピンサロに勤めてた21歳。実家と折り合いが悪くて、ピンサロの寮に住んでた。けど店が被災しちゃったから、10万円を退職金で渡されて、寮を追い出されたと。で、どこにも居場所なくて、テレクラに来たって感じ。

山下 そのコ、震災当日は店でチ〇コしゃぶってたの?

松尾 いや、店終わって客とラブホテルへ行って被災したんだって。ただね、客の男が既婚者で車がラブホの駐車場でぶっ潰れちゃったと。

山下 運悪いねぇ(笑)。

松尾 で、客の男は被災の状況や彼女の心配とか一切しないで、ずっと「嫁になんて言えばいいんだよ」ってビビりまくりだったんだって(笑)。

山下 とんだ二次災害だ(笑)。

松尾 まあ、生きてれば性欲は湧いてくるし金も欲しくなる。セックスの現場っていやでもそういう生身の人間を映し出すんです。だから面白い。

●この続きは『週刊プレイボーイNo.43』でお読みいただけます。さらなるAVトークが全開! こちらの連載は毎週本誌に掲載中です。

※この対談のバックナンバーはこちら!

(構成/黒羽幸宏 撮影/髙橋定敬 取材協力/ハマジム h.m.p V&Rプランニング)

●カンパニー松尾 1965年生まれ、愛知県出身。87年に童貞のままV&Rへ入社し、翌年に監督デビュー。代表作は『私を女優にして下さい』シリーズ。『劇場版テレクラキャノンボール2013』『劇場版 BiSキャノンボール2014』が社会現象的大ヒット

●バクシーシ山下 1967年生まれ、岡山県出身。大学在学中にAV業界へ。90年に各方面で物議を醸した『女犯』で監督デビュー。以降、社会派AV監督として熱い支持を受ける。『ボディコン労働者階級』ほか代表作多数。著書に『セックス障害者たち』(幻冬舎)など

イベント開催決定!! 週刊プレイボーイ連動企画『なぜAV女優は憧れの職業になったのか?』 「カンパニー松尾×バクシーシ山下 公開ナマトーク VOL.2」

【日程】 2015年10月26日(月曜日) 【時間】 開場18:30/開演19:30 【会場】 阿佐ヶ谷ロフトA 【出演】 カンパニー松尾、バクシーシ山下ほか、ゲストあり! 【料金】 前売2500円/当日3000円(共に飲食代別)

【問い合わせ】 阿佐ヶ谷ロフトA (03-5929-3445)

【イベント内容】 週刊プレイボーイで好評連載中『カンパニー松尾とバクシーシ山下のAV史講義1981-2016』の内容に沿い、その当時のAVをカンパニー松尾とバクシーシ山下がナマプレビューする大好評トークイベント第2弾!!

今回はオタクやギャル、テレクラ、エンコー、風俗など、時代の流行を取り込んだ企画もの全盛期である90年代中盤から00年代前半までを松尾&山下両監督が腕をふるったh.m.p作品群を中心に振り返ります。