1ユーロワッフルがグっとくるラブリーベルギー♪ 甘い香りのお気に入り国!

敵が現れた!!!!! ドゥタx8、ターンターンターンタララララ~♪

『ドラクエ』の敵が現れた時のあの曲を想像してみてほしいです。ええ、本当に(特にドラクエ3がオススメです)。まさか、私の前にあの有名な「旅人の宿敵」が現れるとは…。

パリを後にし到着したベルギーの首都・ブリュッセルの第一印象は「なんてラブリーな街なんでしょ!」。

街の中心グランプラスには、美しくライトアップされた市庁舎や王の家がドーン! ピエール・マルコリーニやゴディバなど名だたるベルギーチョコのお店からは鼻血が出そうな甘い匂いがプーン! たったの1ユーロのベルギーワッフルは、女子を虜(とりこ)にするサクフワ音が口元から体の中に響き渡る。

左がゴシックフランボワイヤン様式の市庁舎。右は王の家

サクフワのベルギーワッフルは結構なビッグサイズ。プレーンはたったの1ユーロ

全長30cmとあまりにも小さく、“世界三大がっかり”と言われる小便小僧ジュリアン君も、これまでスケールのデカイ見所ばかり見てきた私にとっては逆に新鮮。

パリのような派手さはないけど、気の利いたレストラン、かわいい雑貨屋、安くてキレイなホステル。衣・食・住そろって、ああ、この街大好き! と、ご満悦で就寝した。

1619年生まれのブリュッセルの最長老市民・小便小僧。私よりチビなところに好感が持てます(笑)

街中にはパブがいっぱい! 夜遅くまで人があふれてる

ところが…。

ぎゃあああああ!!!!!!!!

目が覚めると、私は体中、赤いブツブツに犯されていた!

これは今日、突然始まったことではなかった。実はパリ到着2日目から、手首から腕にかけての小さな発疹に気づいていたけれど、それが悪化していたのだ。

旅を始めてからは自分が意識するよりも体は疲労に正直で、チリでは咳喘息、一時帰国時には帯状疱疹、ジャマイカでは蕁麻疹(じんましん)に襲われ、そりゃあ、ひと筋縄ではいきませんでした。

「でも、そのパターンは知っている」

と、数日で治るだろうな~とパリを過ごしていたんですよ、ええ。ところがどっこい、これがパリの大土産だったとは思いもよりませんでした。この先、グロいので閲覧注意です。

閲覧注意な悲劇がマリーシャを襲う!

これは…。信じたくなかったが、いや、実は少し想像していたが「ベッドバグ」だ! 日本語で言うと、「南京虫」ってやつ! 旅人の間で超有名なコイツは、“宿の敵”と書いてまさに「旅人の宿敵」なんです。

インドやアジアなどで頻繁(ひんぱん)に発生し、一度やられたら痒(かゆ)みで眠れない夜が続き、治るまで数週間から半年以上要する。睡眠不足と見た目のエグさからはメンタルもやられ、プチ鬱(うつ)も引き起こす超やっかいなやつなのだ。

手首だけだった発疹が、気づけば腕や足、首、ついには顔にまで上り始めているではないか。皮膚はブヨブヨにただれ、水ぶくれになっている部分は今にも破裂しそうにグジグジしていた。

まるでヨーロッパを縦横する長距離バスの発着地点マークのような赤い発疹(これ比較的マシな時

鼻の穴をこのタイミングで大公開? 右と左、微妙に形が違うんだね、とか言ってる場合か! 首見てね、首

「悔しいいいいい!! タイの100円宿でもインドの半分外みたいな200円の宿でもやられなかったのに。なんでパリで!!!!」

3000円ほどのパリの宿はスペースこそ狭かったものの、シーツはパリっと新しく、毎日念入りな掃除も入る風通しの良い部屋だったのに…。

は……! でも、思い出した。 そういえば、小さな茶色い虫を2、3度見かけたんだった。オバケと虫が嫌いな私だけど、旅慣れしてたせいか、ゴマくらいの虫には余裕のデコピンで「えーい」と弾き飛ばして気にもとめていなかった(心のどこかで、「パリだし大丈夫」という謎のパリマジックにかかっていたのかもしれない)。

アイツだ……アイツが私の身体に大事な赤い血と引き換えに毒を注入していったんだ。おびただしい数の虫が、寝ている私の体を這いずり回ったと想像しただけでホラー、オカルト…オバケより怖い。

そしてカユイカユイカユイ!!! でも掻いちゃダメ!!! 掻いたら跡が残って消えなくなるから。

ブツブツの周りも皮膚がただれてブヨブヨっとしてます。しょぼん。この時はもう気が弱くなって心は泣いています。プチ鬱

ラブリーベルギーでまさか病院送りとは…。宿の受付に電話を貸してくれと頼むと、「私、“もしもし”ってチャイナの言葉好きよ。ナイスワード!」だって。なけなしの気力で「ジャパンだよ!」とツッこみ、日本語の通じる病院を見つけるも、遠いのですぐ近くの大学病院に行くことに。

念のため、ブリュッセルの公用語であるフランス語が話せるルームメイトのイタリア人・アドリアーノに、通訳代わりについてきてもらった(後でお礼にごちそうする予定が、いつのまにかチェックアウトしていた幻の旅人でした)。

マリーシャの殺意「死ね死ね死ね」!

大きくてキレイな大学病院前にて。処方箋や診察証明書をいただく

足やお尻も少しやられてたので、服を脱ぐことを考え、水着を着て、予測できる範囲の単語や伝えたいワードは調べてメモし、万全の状態で病院へ向かった。受付で初めに50ユーロを払い、そこに初診料や診察料が含まれているようだった。

診察後、足りなければ追加の支払い、おつりがあれば返してくれる。ベルギーの病院事情はとても良く、すぐに問診をしてくれ、先生も優しく英語のできる看護師さんもいて、薬もよく効いた。

体中のブツブツを先生にチェックしてもらう。先生はフランス語で看護婦さんが英語で通訳。真剣に聞きとろうとする私

ステロイドクリームはやめてほしいと頼んだところ、飲み薬がステロイド。短期集中で治すのに少量は仕方ないとのこと

念のため、「もちろんお酒はダメですよね! 例えばベルギービールとか…」と聞くと、「アッハッハ! 1杯、2杯をビビってんの? そんな量、全然余裕よ!」

さすがビールのお国。病は気からなのか、診察を受けたらすっかり元気にプチ鬱から抜け出し、種類豊富なベルギービアをゴクリッ!

ベルギービアが私を癒してくれた

しかし、まだ仕事が残っている。ベッドバグがついてきていないか、疑わしき全ての所持品に熱消毒が必要なのだ。私はバックパックを含む全荷物を60℃以上で30分のところ、90℃の熱湯でとっちめてやった。生地の伸び縮みや静電気なんて気にしてる場合じゃない。ニットもビキニも洗濯不可能のものも全部、さらに80℃の乾燥機で、消毒、殺傷、殺菌、始末!!

80℃の乾燥機でカラフルに踊る私のビキニ

これほど何かに対して「死ね死ね!」と殺意を持ったのは久しぶりかもしれない。これまで旅中に起きたアルゼンチンの強盗、ジンベイザメ見物での船酔い、大量の蚊で眠れない夜、何が一番ツラかったろうか。現状ではこれが一番だ。顔がブツブツのボコボコになったら本格的に嫁行きが危うい。

改めて「私、体張ってんな~」と思う出来事だったけれど、ここがベルギーで良かった。ラブリーベルギーだからこそ、気も紛れ笑顔で旅を続けられたのかもしれない。

しかし、回復に向かっていた症状も、薬が切れると、しつこいカユミが少し復活し、いまだ点々も残っている。そんな私の今の気分は、檻の中でヤンキー座りでやさぐれるベルギーの小便少女といったところか…?

小便小僧よりもインパクトのある小便少女。檻に入れられてるところが、余計にワルそうな感じ

【This week’s BLUE】ベルギー生まれの青い肌した小さな妖精スマーフ。他にもタンタンなど有名マンガを輩出するベルギー。ブリュッセルにはマンガ博物館もあるんです

●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背 負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログhttp://ameblo.jp/marysha/、Twitter【marysha98】もチェック