グラビアもこなし人気団体『スターダム』で「総監督」の顔を持つ紫雷イオ

空中殺法を自在に駆使し“天空の逸女”と呼ばれる女子プロレスラー・紫雷イオ

25歳にしてキャリアは9年と長く、所属する人気団体『スターダム』では個性の塊である女子プロレスラーたちをまとめる「総監督」の顔も持つ。

一方で、グラビアもこなす愛らしい笑顔からは考えられない老成した発言も飛び出す彼女に直撃したインタビュー後編!(前編「女でプロレスラーって面倒臭さ二重苦ですよ(笑)

選手として乗りに乗っていた22歳の時、まさかの「麻薬密輸容疑」で逮捕! 後に無罪は証明されたものの、もちろん選手生命の危機…。しかし不屈の女子プロレスラーとしてドン底から這い上がったその言葉には、恨み節は一切なかった…!

-あの事件はなんだったんでしょうか?

イオ なんだったんですかね。私は右も左もわからず…なぜ自分が留置所にいるのかと。

-留置所に!?イオ はい、入れられました。「勾留」がかからなければ3日以内に出られるんですけど、かかったら最低10日は。で、私やってないから「やってない」と否定していたら期間を延ばされて22日いました。これが「不起訴」で留置所にいられるMAXらしいです(笑)。

-ムダに詳しくなっちゃってますね(苦笑)。

イオ メキシコから帰国した時、税関で「一緒ですか」と聞かれて、グループとして何人かと行っていたのでグループは一緒ですよって答えたら捕まっちゃったんです。それが報道されてしまって、悪いニュースで自分の名前と他のプロレスラー、スターダムの名前が出てしまったことに申し訳ない気持ちでした。

留置所にいる間は一切の連絡手段がないので、家族とも連絡取れないし手紙もダメだし、なんのニュースも入ってこなくて、孤独で。弁護士ももちろん初対面ですし、ひたすらもう…「認めたら出られるよ」とか言われたりして(笑)。

-TVドラマで見たことありますよ! それで冤罪が生まれるってやつじゃないですか。 

イオ 起訴されたら3ヵ月、4ヵ月と、法廷に出るまで拘置所にいなきゃいけない可能性もあるってことで「執行猶予で出られるから認めますか?」って弁護士にも言われたんですけど(笑)。

完全に犯罪者のレッテル貼られて

-究極の選択ですね…。

イオ そっちのほうが手っ取り早いからっていう人もいるんですって。でも私の場合は報道もされたしプロレスラーだし、絶対やってないし。復帰したかったんで認めなかったんですよ。そしたらまぁギリギリまで入れられたんですけど(笑)。

中にいる間は、絶対やってないからとにかく気を強く持とう、絶対戦ってやるんだって、復帰することをモチベーションに頑張ってたんですけど。出てきた時ですね、打ちのめされたのは。家に帰れた時に世間の反応というか事の大きさを思い知って。完全に犯罪者のレッテル貼られてて、あぁコレ、もうムリだって。

ホントにその当時は…(苦笑)。食事も喉を通らないし、人と会うのもムリ、練習しながら涙が出てきちゃったりとか…。辛いというより恥ずかしかったです。でもそれでプロレス辞めてたら一生語りたくないことだったと思うんですよ。諦めずに続けてこられたから今こうして笑って言える。

-普段、プロレスを観ない人でも知ったニュースでしたね。

イオ そうですね。いまだに言われます。あぁ、あの逮捕されたコでしょって。絶対にやってないのにという悔しさと、なんでわかってもらえないのっていうやるせなさと。でももう開き直りじゃないですけど、名前が出ちゃったんだったら、もうプロとしてそこから有名になるしかないって!

-おお、不屈!

イオ そんな「やったんじゃないの?」という声がある中で、スターダムのロッシー小川社長が「いや、やってないでしょ。復帰させるよ」と言ってくれたのが、私がスターダムを命をかけて守ろうって決めた決定的な理由です。

辞めなきゃいけないと思った時、こんなに辞めたくない、こんなにプロレスを好きだったんだって気付かされて。だったら命かけて受け身を取り続けなきゃいけないし、応援してくれるお客さんのために、脚が折れようと腕がなくなろうとプロレス続けたいなって思ったんですよね。

今あるプロレスへの愛とスターダムを守っていくぞっていう気持ちは、やっぱりこの件がなければ語れないし、こんなに強くはなれなかった。変わりましたね。留置所の時計を見つめてたのが、今はリング上から超満員のお客さんを見ている。畳の目の数を数えてたのが、今はベルトの防衛回数を数えてますからね。

棚橋さんにも後ろ暗い過去が…

-畳の目(笑)。

イオ マジで畳の目を数えてましたからね(笑)。完全に頭ちょっとおかしかったと思います(笑)。もう絶望的すぎて。

-それが今の面倒見の良さに繋がっているのもあります?

イオ ありますね。後輩たちが壁にぶち当たってる時、ドン底を見てからここまで来られた私が言えば、何割増しかで響くと思うんですよ(笑)。あと、新日の棚橋(弘至)さんと対談した時に、棚橋さんにも後ろ暗い過去があるということで…。

-そうですよね(笑)。

イオ 「どんなに後ろ暗い過去があっても、頑張っていれば見ててくれる人はいる」っていう言葉をいただいて、ホントその通りだなって。悪いことがあっても、そこから周りの評価を良くするのも悪くするのも自分次第なので。気持ちをいかに強く持つかで世界は変えられるなって思いました。

あと、今までは自分がしっかりしなきゃと自分のことばかり考えてたんですけど、やっぱり総監督になったので団体のことを考えなきゃいけない、そしてゆくゆくは女子プロレス界自体のことも考えなきゃいけないと思うし。

-その女子プロレス界で、スターダムってどうあるべきだと思います?

イオ やっぱりトップじゃないとダメでしょうね。最先端じゃなきゃいけないと思ってます。

-最先端とはつまり?

イオ まあ、端的にいえば一番面白くなきゃダメってことです。センセーショナルというか。そこに魅力を感じて私も来ましたし。スターダムのリングに上がったら新人でも一気にスターなんですよ。キレイなコスチュームでバーンと出てきてデビュー戦からインパクト出して行くぞっていうのは、旗揚げからの伝統というか。

WWEも出たいですよ、ホント

-お客さんの見方も他の団体とは違いますか?

イオ 全然違います。お客さんと、お客さんが私たちに向けてくれる表情。勝敗や試合内容を楽しむだけじゃなく、すごく感情移入して応援してくれてる。

-ビジュアルがいい選手が多いのもありますよね。

イオ ビジュアルも大事です。でもそれより、やっぱり個性。個性を潰すリングじゃなくて活かすリングであること。上下関係が厳しいのはスゴくいいことですけど、先輩相手に萎縮していいパフォーマンスができないのって、お客さんは喜ばないじゃないですか。

-自分ではそういう経験があるんですか?

イオ 何度もあります。だからこそ私は相手の技を全力で受ける。全力で受けすぎて、たまに負けるという欠点はあるんですけど(笑)。やっぱりお客さんに楽しんでほしいから。

-なるほど。では、ひとりの女子プロレスラーとして夢はありますか?

イオ 世界進出(笑)。ふふ。スーパースターになりたい。

-何年計画で?

イオ ああ、それは結構長い目で。今はスターダムを離れるわけにはいかないので。後輩たちを育てて、ここはもう大丈夫だなと思ったら、自分が世界に羽ばたきたいという思いはあります。WWEも出たいですよ、ホント。でも私、まだ時間は全然あるんで。あとは日本で地上波放送! そのふたつかな。

-今、女子プロレスは放送してないですもんね。

イオ ないない。やっぱり今、新日本プロレスのひとり勝ちで、バラエティでもプロレスラーといえば新日本の選手じゃないですか。

-バラエティも進出したい?

イオ もう出られるところはなんでも出たいですね(笑)。女子プロレスを、スターダムを有名にしたい。だからグラビアもやりますし。

手ブラ超えた“ベルトヌード”も?!

-グラビアも結構際どいことやってますよね!

イオ 手ブラ超えちゃって(笑)、セミヌードっていうか…ベルトで隠す“ベルトヌード”ですから! プレイボーイさんからのオファーも待ってます!(笑) やっぱり今はマイナーなので、できること、使える武器、切れるカードは全部切って、カルチャーとしてもっと有名にしたいですね。

-そのためには女子プロレス界がどうあるべきだと?

イオ 大前提としてまずは面白くなきゃいけない。つまんないものにお金は払いませんから。あと将来性があるものであってほしいですね。今、アイドル大戦国時代じゃないですけど、若いコが見て憧れるじゃないですか。女子プロレスも若いコの目に触れるようになって、尚かつ華やかで憧れられるようなものであってほしい。そしたら未来永劫、繁栄するじゃないですか。

まぁ、やっていることがすごいアレでね(笑)、汗とか鼻血とか流しながら必死こいて殴り合って。大きい声出して髪の毛引っ張ったり…。男はいいんですよ。女がそんなことして「みっともない」って思う声もわかります。

-そこは男のプロレスとは違うところですよね。

イオ 女なのに、傷物になるかもしれない。そういうリスクもあります。でも私達はそれを超えた感動を味わっているという部分をみんなに知ってもらいたいです。

-味わっている?

イオ そう。練習も辛いし、試合は痛い。でも勝った時にそれだけ嬉しい。お客さんに感動を与えているかもしれないけれど、私達も味わっているんです。それだけ素晴らしいものなんだよっていうのが、もっとたくさんの人に伝わればいいなと思います。

-これからがますます楽しみです! ロングインタビューでありがとうございました!

(取材・文・撮影/明知真理子)

●紫雷イオ(しらい・いお)1990年5月8日生まれ 出身地非公開 2007年、16歳でデビューし25歳にしてキャリアは9年目。類まれな身 体能力で空中殺法を自在に操り、キャッチフレーズは『天空の逸女』。2011年8月からレギュラー参戦する『スターダム』では『ワールド・オブ・スターダ ム王座』を10度防衛したほか5大王座グランドスラムなど数々の記録を打ち立て、名実ともにエースとして活躍中。

・『STARDOM Appeal The Heart2015~心の叫び~』11月3日(祝)大阪市平野区民ホール 13:00、11月8日(日)新木場1stRING 12:00・『第5回GODDESSES OF STARDOM~タッグリーグ戦~優勝戦』11月15日(日)後楽園ホール 12:00、11月23日(祝)博多スターレーン 17:30ほか最新情報は公式サイトにて。 http://wwr-stardom.com/