10月にスタートしたマイナンバー制度。関連業務の対応に追われるコールセンター、郵便局、自治体は修羅場と化している

10月からスタートしたマイナンバー制度。だが、個人を識別する12桁の番号を知らせる通知カードが一向に届かないーー。

そんな中、今、パニック状態にあるのが、国が設置したマイナンバーコールセンターである。 その理由は、実際に電話を掛けてみるとわかるだろう。

最初に『ナビダイヤルにおつなぎします。20秒ごとに、およそ10円でご利用頂けます』との音声ガイダンスが流れ、問い合わせた人は通話料を取られるのか…と認識させられる。

続けて、『音声ガイダンスに沿ってご希望の番号を押してください』と言われ、1~4番までダラダラと説明された後、ようやく番号をプッシュ。これで担当者に繋がるかと思いきや、『順番におつなぎしますのでしばらくお待ちください』とアナウンスされて保留音に切り替わり、さらに待たされトゥルルル、トゥルルル。ふ~、やっと繋がったか!と思ったら…

ただいま回線が大変混み合っております。改めてお掛け直しいただくか、このままお待ちください

ここまでの通話時間は約2分、掛かった通話料はおよそ60円。結局、イライラと通話料だけが積み重なり、電話を切るハメになるのだ。その結果、マイナンバーコールセンターには苦情が殺到! コールセンターの担当者がこう明かす。

「お問い合わせで最も多いのは『自宅に不在で通知カードを受け取れなかった場合はどうなりますか?』との内容ですが、『なぜ、通話料が有料なんですか?』『通話料が高すぎる!』との問い合わせも相当数届いており、お叱りを受ける機会も多数ございまして…」

マイナンバー制度は国の制度であり、公共サービスの一種。そう考えると、通話料がかかることに疑問を持つ人が多いのも当然だが、なぜ、有料にしたのか? そんな質問に対して、コールセンターの担当者は決まってこう答える。

「コールセンターに電話をしてこられない国民の方も数多くおられます。平等性の観点から、お問い合わせいただくお客様には通話料をご負担いただくことになっております」

う~ん、平等性の意味がよくわからん。そんな曖昧(あいまい)な回答がさらに国民の怒りを買うという悪循環に陥り、コールセンターはパニックに陥っているというわけ。所管する内閣官房・社会保障制度改革室の担当者がこう話す。

「国が設置した電話相談窓口には労働、税金、年金、食の安全に関するものなど多数ございますが、通話料は基本的に有料(多くの場合が20秒・10円)なんですね。そこに足並みを揃える形で有料にさせていただいたのですが、まさかこんなにご指摘を受ける形になるとは…」

コールセンターが設置されたのは昨年10月だが、殺到する国民からの苦情が政府の耳に入ったのだろう。菅義偉官房長官が先日(10月23日)の記者会見で「マイナンバー制度については、政府として国民の皆さまにお願いする立場であり…コールセンターの通話料の無料化について事務方に検討を指示している」と発言する事態にまで発展した。

前出の内閣府担当者がこう話す。

「現在、コールセンター業務の受託業者と無料化に向けた話し合いを進めていますが、元々、有料であることを前提に4年契約を結んだ委託事業ですので、通話料を無料にするためには追加予算が必要です。コールセンター業務の年度予算は4億円ほど。どれくらい必要になるのか…無料化の期日はまだ決まっておりません」

10月からバッタバタのマイナンバーコールセンター。だが、それは関わった人たちを混乱に陥れる“マイナンバー地獄”の幕開けに過ぎない。

今後は通知カードの発送業務が本格化する郵便局、受取人不在などの理由で通知カードが大量返送される自治体が修羅場と化し、さらに、国民にもその余波が…。

■そのパニックの詳細な実態を発売中の『週刊プレイボーイ』No.45で大特集。そちらもお読みいただきたい!

(取材・文 興山英雄)