コーナーに立てかけられたのはなんと、ガラス板!! 衝撃とともに粉々に砕け、選手の背中の肉は容赦なくえぐり取られた

蛍光灯、画鋲、カミソリ、ガラスが飛び散るリングに今、「プ女子」ならぬ「デスプ女子」も急増中だという。一体、その凄惨(せいさん)な現場で何が起きているのか!? 記者がリポートする。

「キチ○イ! キチ○イ! キチ○イ! キチ○イ!」

満員の会場が、割れんばかりの不適切なコールで揺れていた。東京・後楽園ホールで行なわれた、プロレス団体「FREEDOMS」の興行。リング上では血まみれの男がニヤリと笑うと、男気(おとこぎ)を鼓舞するかのようにリング上にバラまかれた画鋲(がびょう)の海に自らダイブ!!

観客から「痛い!」「うおぉぉぉ」という戸惑いの悲鳴が響く中、男は体中に刺さった画鋲を魚の鱗(うろこ)みたいにキラキラと光らせながら立ち上がると、またニヤリと笑った。

次の瞬間、会場に「ボンッ!」という、すさまじい破砕音が響いた。見れば、束になった蛍光灯が男の脳天を直撃。その額はパックリ切れ、見る見る大量の血が流れる――。

日常生活では一切役に立たない蛍光灯の使用法!

目の前に繰り広げられる、この世のものとは思えない狂気の世界。だが、観客たちは皆熱狂し、拳(こぶし)を突き上げ、男たちに歓声を送る。

記者も、これまでの人生で経験したことのない衝動に突き動かされ、気づけば声をからしながら「キチ○イ!」コールを連呼していた。この理解不能の世界、これこそが「デスマッチ」だ。

流れる血に誇りを持つ選手たち。それが彼らの生き様なのだ

「プ女子」ならぬ「デスプ女子」の姿も!

世は空前のプロレスブーム。その中心は棚橋弘至(ひろし)、オカダ・カズチカなどのスター選手を擁するメジャー団体、新日本プロレスだ。だが、このブームの波は激しいデスマッチを繰り広げるインディー団体にも及び、昨今、会場には「プ女子」ならぬ「デスプ女子」の姿も増えているという。

そんなデスマッチシーンで今、カリスマ的な人気を博している選手がいる。葛西純、41歳ーー。

6m以上もある会場のバルコニーからのボディプレスや、割った蛍光灯で自身の体を切り裂くパフォーマンスは他の追随を許さず、俳優の染谷将太・菊地凛子夫妻をはじめ、世界中に熱狂的なファンを持つ業界きってのカリスマだ。同時に彼が所属するわずか10名の小さな団体「FREEDOMS」も今、注目を集めている。一体、何がファンの心を揺さぶるのか?

自らもデスマッチのリングに上がるFREEDOMS佐々木貴代表は言う。

「血みどろになって戦って、普通の人が見れば『バカなことをやっている』で終わりでしょう。でもそこに『これが俺の生き方だ』と胸を張れる生きざまがある。デスマッチは生きざまであり覚悟です。そこにお客さんは熱狂し、涙を流してくれる。僕らの試合を見てもらって何も心に残らないということは絶対にないと胸を張れますね」

今やメジャー団体のレスラーたちも一目置く、彼らのデスマッチを見ずしてプロレスを語るなかれ!

『週刊プレイボーイ』43号では、“デスマッチのカリスマ”葛西純と「FREEDOMS」の選手兼代表・佐々木貴による禁断の「デス対談」を掲載!

選手たち自らが手作りしているノコギリボード。このボードに背中から叩きつけられた日には…

(取材・文/村瀬秀信 撮影/八木虎造 下城英悟)